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迎撃作戦

こんにちは。パソコンで執筆中、完成間近でキーボードのエスケープキーを押して全ての苦労を水の泡にしたうp主です。

俺はガリアンに例のガルトウルフという魔物について詳しく教えてもらう。



ガルトウルフはトサカのみたいな角を生やし、鋭い牙を持つ迷宮の森の生態系の頂点に君臨する魔物で、音の変化に敏感だそうだ。ガリアン曰く何者かが森を荒らす様な行いをしたため、その元を絶つために人里まで降りる事があるらしい。そして人里に降りて来たときには、そこの村や町の人々を無差別に襲うと言うのだ。それに一般的なイメージの(ウルフ)とは比べ物にならない程の巨体を誇っており、大きさと相まって打倒は困難を極めるそうだ。



俺は自分が迷宮の森を戦車のエンジン音を轟かせた事を思い出し、猛烈な冷や汗をかく。この騒ぎの原因は俺じゃないか? そしてガリアンは止めを差すように農夫から報告があったという、新種の魔物が原因ではないかと言ってきた。犯人、俺じゃねぇか。そんな騒動の原因となった俺は、ガリアンにこの打倒作戦に参加させてほしいと声を掛ける。



「そのガルトウルフとやらの打倒作戦、自分にも加えては頂けませんか? 今回の騒動は自分が引き金となったかもしれません」



「お主がか? それは加勢してくれるのであれば、有り難いのじゃが、武器は持っておられるのか?」



「はい。武器ならあります」



俺は戦車を指差し、これが武器であるとガリアンに伝える。するとガリアンを始めとする自警団員や、冒険者達がざわつき始める。後で聞いた話だがこの世界の武器という物は、大なり小なり魔力を含んでいるらしい。この魔力の反応とはこの世界の住人なら誰でも感じる取れるというのだ。



しかし、俺もこの戦車も魔法が存在しない異世界からやって来た為、そんなもの持っているはずがない。俺はこの戦車が持つ攻撃力を粗方教え、ガリアンにはバリスタの攻撃をも凌ぐ防御力を持っていると伝える。




そんな戦車の性能を聞いて最初は有り得ないと言ってはいたが、俺の戦車に矢を放っていた自警団や冒険者集団にそれが事実であると伝えられ、もしそんな性能を誇っているのならば、是非とも打倒任務に参加して欲しいと言ってきた。だが無理はせず、危なくなったら直ぐに逃げてくるように念を押してきた。



「わかりました。危険と判断すればこの町の防衛線まで後退します」



「宜しく頼むぞ」



俺は戦車を町の門から出し、マフトと呼ばれる男からガルトウルフの目撃地点を偵察するため戦車を街道に沿って走らせる。町を出て5キロ程走っただろうか、戦車を一度停止させ車内のスクリーンに投影された外部カメラのズーム機能を使い、奥に何かの群が砂埃をあげながら進んでいる様子を確認する。



その砂埃を巻き上げる集団を確認する為に今度は熱源探知の出来るサーマル機能を使う。するとスクリーン全体が投影する景色が白黒となり、砂埃を巻き上げている集団が何かを確認する。すると魔物の体温が戦車のサーマルに反応し黒の背景の中に小さな白い点が複数有ることを確認、急いで戦車を展開させ情報を伝達するためにウィスカまで戻る。




「ラティーナ街道の給水地点付近でそれらしき群を見ました。恐らく今はウィスカまで4ラングほどの地点まで進んでいると思われます」



「本当なのか? しかし、もうこんな所まで来ておるとはな……」



ガリアンの顔に焦りが見える。見たところ防衛線のバリスタは未だに再装填が終っていない。俺はそんなガリアンや町の冒険者達の顔を見て、ある事を思い付く。それは俺が先攻し、バリスタの装填が完了するまで足止めし、可能なら俺がガルトウルフを殲滅し、不可能ならバリスタで迎撃してもらう。俺はこの作戦が今できる最良の策だとしてガリアンに具申し、彼は申し訳なさそうな顔をしながらお願いしたいと言い結果、その案は認証された。




俺は再び戦車に乗り込み、スクリーン横の弾種選択用のタッチパネルでキャニスター弾を選び、閉鎖機に装填する。対人用の砲弾で防御力の解らない相手にどれ程のダメージが与えられるか想像もつかないが、これでダメなら榴弾、その次にAPFSDSの出番だ。最初からAPFSDSを放っても良かったのだが、APFSDSは10発しか積んでいない、いわるゆ切り札的なアイテムだ。しかしキャニスター弾は散弾するという特性上、射程が極端に短い。どうやってガルトウルフの群を一度で効率良く倒せるかと考えていると、城壁の上でバリスタを構えていた自警団員が



「っ! 敵影確認! 距離2ラング!」



もうそんな所まで来やがったか。2ラングだとギリギリAPFSDSの射程圏内だ。ここで何発か撃って先制しても良いが、先程述べたように10発じゃ全てのガルトウルフの打倒は出来ない。それに見えない敵からの攻撃を回避する為に奴等が散開する可能性も否定出来ない。相手が散開してしまうと、広範囲の敵を攻撃出来る榴弾や残りのキャニスター弾の性能をフルに発揮出来ない上、無駄な消耗をしてしまう。なので最初はキャニスター弾で先頭の群を倒し、群の真ん中の位置を開いてそこに榴弾を撃ち込むという作戦に出ることにする。



俺は戦車のスロットルを開きキャニスター弾の有効射程圏内に収めるべく、ガルトウルフの群を目掛けて戦車を発進させる。戦車のスクリーンに敵との距離を測る距離測定器(レンジファインダー)の数値が小さくなっていき、敵との距離が縮まって行く。戦車と先頭のガルトウルフとの距離が1000メートルを切ったタイミングで戦車の操縦桿に取り付けられた安全装置のダイアルを回し、解除して敵との距離が残りの500メートル台に入った所で戦車を停止させ、残り400メートルを切った事を確認すると、操縦桿の右に取り付けられた主砲発射ボタンを押す。



ズバォァァァン! カシュ! ゴトン……



主砲から数千個にも及ぶ鉛の玉が発射され、車体後部から役目を終えた空薬莢が吐き出され地面に落ちる。音速を超える速さで撃ち出された鉛玉はガルトウルフの群に一瞬で到達する。



全長5メートルを超える巨体の持ち主はキャニスター弾の直撃を喰らい、目の前の出来事を把握出来ないまま絶命する。散弾となった鉛玉は瞬く間に4体のガルトウルフを葬り去り、この戦車の力はこの世界でも通用することが分かった。生き延びたガルトウルフは目の前の仲間を殺した鉄の箱を敵と認識し、鋭い牙をたてながら此方へ突っ込んでくる。俺はアクセルを全開まで吹かし、前進と同じ速さで後退するSタンクの運動性を最大限使い、距離を取る。



カチッ シャラララ…… カシャン!



後ろの自動装填装置(オートローダー)が次弾が装填され閉鎖機が閉じる音が聞こえ、俺は立て続けにキャニスター弾を発射する。今度は初弾に比べて相手との距離が縮まっていたので2体までしか倒せなかった。だがこの一撃で群れの中心部が開き。榴弾を叩き込める状態となった。俺はすかさずタッチパネルで弾種をキャニスター弾から榴弾に切り換え、装填が終ると直ぐに引き金(トリガー)を引く。



バァァン! シュウウウ……



車体が反動で揺れ、キャニスター弾とは違う重々しい発射音と共に榴弾は発射され、砲身から排煙機(エバキュエーター)より吐き出された白い燃焼ガスが出て行き、発射された榴弾は道を走るガルトウルフの群の真ん中に着弾し、石の敷き詰められた道ごと6匹のガルトウルフを吹き飛ばす。そして俺は火器管制を機関砲に切り換え、残りのガルトウルフに照準を合わせ、引き金を引く。



ズドガガガガガ!



20㎜の機関砲が発射され、榴弾の攻撃を掻い潜った残りのガルトウルフの巨体を情け容赦なく蝕んで行く。そして装填が終わり次第、次の榴弾を発射する。そんな中、側面から一体のガルトウルフが跳躍し、俺の戦車の上面目掛けて爪を振りかざししてくる。俺は火器管制を咄嗟に機関砲へ切り換え、銃身を上に向け引き金を引きガルトウルフを蜂の巣にして一つの肉片に変える。そして榴弾を5発撃ち終る頃には目の前の穴だらけとなったラティーナ街道の道と、大量のガルトウルフの亡骸が自分の戦車の目の前に広がったのだ。



こうして俺の初の異世界戦闘は一方的なまま、呆気なく幕を閉じた。目の前の敵が全て絶命したことを確認すると戦車を旋回させ、夕日を背にウィスカへと戻るために戦車を走らせる。気が付いたらもう夕暮れなんだな……。俺は1日で様々な事が起きすぎたと思いつつウィスカを目指す。








キリキリキリ…… 戦車が履帯のきしむ音を鳴らしながらウィスカの堀に掛けられた橋を渡り、町の大通りに入った所で俺は戦車を止める。そして町の防衛線を張っていたガリアンが俺のもとに走ってくる。




「……っ! シドー殿、無事であったか! そして、ガルトウルフの群はどうなっている!?」



「ええ、全て殲滅出来ました。しかし、新たな襲撃があるかも知れないので油断はなさらn……」



「そんな馬鹿な! あのガルトウルフの群を殲滅しただと!?」



ガリアンはその事が信じられないらしく、城壁の上でバリスタを構えていた自警団員の元へ行き、彼の望遠鏡を取り、俺が戦っていた場所を見る。



「すまない、如何せん魔力のない武器がガルトウルフの群を倒すとは信じられなくてな。しかし、何故お主は2ラング先の敵を狙えると豪語していたのにあそこまで距離を詰めたのじゃ? そんなに遠くへ飛ぶものならバリスタみたいに遠くから狙えば良かったものを……」



「ええ、私が使える砲弾という矢には幾つか種類がありまして、最初に放った砲弾は他の種類と違って相手に有効打を与えれる距離が短かく、その代わり広範囲の敵を攻撃出来ると言ったタイプの砲弾なんです」



「なるほどのぅ。お主が急に敵に向かって走りだしたから皆驚いていたのじゃ。死にに行くようなモノだとな」



このオッサン以外と鋭い。現代兵器の強さは射程で決まると言っても過言ではない。そんな兵器のセオリーを中世レベルの文明力の世界で察するとは……。流石は自警団団長なだけのことはある。そんな会話をしていると、




「シドぉぉぉぉ!」 ドドドド


ガシッ


「ぶるぁ!?」



何かが俺の胸元目掛けてタックルしてきた。俺は一瞬混乱したが、その正体がフィーナである事をすぐに認識する。フィーナは俺の服を両手で掴んで今にも泣きそうな顔をしながら



「ばが! ばかぁ! 一人であんなガルトウルフの群に立ち向かおうなんて死にに行くようなものだぞ! なんであんな真似をしたんだ!」



こりゃ相当怒ってるな。そんないきなり少女が抱きついてきて、たじたじしている様子を見たガリアンがこう言って来た。



「すまんが、もう少しそこの娘のしたいようにさせてはくれないじゃろうか? お主が奴等の群に突っ込んで言ったと聞いて血相を変えてお主の後を追おうとしたんじゃ。あんなフィーナの顔は初めてみたわい」



出会ってまだ1日も経っていないのにやたらと懐かれたものだな。なんて思っているとガリアンはフィーナの過去について語ってくれた。



フィーナは貧しい家庭に産まれ、幼い頃に母親を病で亡くしてから父親が男一人で育てて来たのだが、その父親もフィーナが13の頃に職場の事故で大怪我を負ってしまったらしい。フィーナはそんな父親に迷惑は掛けたくないと言う一心で14の時に家を出て孤独な旅を続けていたらしい。



だが、14歳という年で大した装備も持てない彼女はコールマンの近くの道で力尽きて倒れた所をガリアンに拾われてウィスカまで来たそうだ。フィーナはその時に自分の無力さを感じてガリアンに剣術を教えて欲しいと頼み、特訓に励んだそうだ。



「彼女にそんな過去があったのですか……」



「他所から来たお主にとって、今のフィーナのナリでは想像出来ないじゃろう。彼女にはそんな過去があったのだ」


俺は胸元目掛けて抱きついて来たまま手を離さないでいるフィーナの頭を無意識に撫でていた。ガリアンは続けて



「確かにフィーナは剣術を体得して、剣術だけでは自警団の中でも最高クラスの腕を持っておる。じゃがその代償は大きな物だったのだよ」



「代償ですか……」



「それはな、普通の少女として過ごせる時間なのだよ。フィーナは毎日稽古に励んでいてな、休み時間や休日になると町の露天で買い物をする同世代の娘たちや親に何か買って貰っていた子供達をいつも眺めていたんじゃ。本人はそんな感情を必死に殺そうとして稽古に励んでいたのだがな……」



フィーナは自分の目の前で過去について暴露された事を聞いて顔を真っ赤にする。だが俺を掴む手だけは絶対に離そうとしない。



「フィーナはお主がガルトウルフの群に突っ込んで行く前まで倒れていた時にお主から貰った飲み物やその戦車と呼ばれるお主の鉄の箱の乗り心地を語ってくれてな、その時の顔は純粋な少女そのものだったわい」



「だっ……団長、止めて下さい!」



フィーナは更に顔を真っ赤にしてガリアンに物申すが、ガリアンはお構い無く話を続ける。



「聞いた話だと、フィーナはお主に例の飲み物がもう1つ欲しいと頼んだそうじゃな?」



「ええ」



「驚いた。フィーナが誰かに欲しいと頼んだのはワシに剣術を教えて欲しいと頼んだ時以来じゃ。それまで誰にも甘える事を知らなかったフィーナがのぅ……」



「きっとフィーナはお主の行動や思いやりに素直に甘えたいと言う気持ちが表れたのじゃろう。自警団員の中では最年少だからのう、年がそんなに離れていないお主は言えば甘えたい気持ちを伝えれる兄のような者なだろう」



14歳で剣術の道を歩み始めたフィーナはまだ誰かに甘えたいという感情がまだ残っている時にその感情を奪われた。だったら今は彼女の好きなようにさせてあげたい。俺はフィーナに一言、



「すまなかったな、フィーナ。今は君の好きなようにしてくれ」



「……っ!」 フィーナは俺の服を掴む力を更に強め、真っ赤な顔をしたまま



「だったら、もう少しこのままで居させてくれ……」



「ああ、こんなので良いならお気に召すままに」



次第に俺の服を涙で濡らすフィーナの頭を俺は再び撫でる。元自衛隊員の俺にとってはこんな事で誰かの心を幸せに出来るなら、これくらいお安い御用さ。そんな感じでフィーナを撫でていると、ガリアンが



「ところで、お主は冒険者手帳を持っておるか? 今ギルドの調査員がお主の打倒したガルトウルフの数を数えていてな、打倒数に応じて報酬が出るのじゃが……」



「あの……冒険者手帳って何ですか? 私が出てきた地域ではそのような物が存在しなくて……」



「お主、冒険者手帳を知らないのか? しかし、冒険者手帳が存在しないとは珍しい地域もあるのだなぁ」



ガリアン曰く、冒険者手帳と言うものはこの世界の冒険者必需品のアイテムで、これが身分証明書にもなり、町のギルドから様々な任務(クエスト)を受け、報酬の受取に必要な地球のモノで言う所の電子手帳のような物らしいのだ。



そしてその手帳を発行しないと今回の報酬は貰えないらしいのだが、そこはガリアンが気を利かせてくれて俺の代わりに一度報酬を受理し、後で俺に渡してくれるそうだ。正直、この世界の金を持っていない俺にとっては有り難い話である。俺はガリアンの言葉に甘え、お願いすることにする。



冒険者手帳を発行するにはかなりの金額が掛かるらしいのだが、俺が倒したガルトウルフの数から推察するに、全く問題ないとガリアンは教えてくれ、俺は冒険者手帳を発行することを決意する。



「そうかそうか、では明日ギルドで報酬の受け取りと冒険者登録を済ませるとするかのう! それよりシドー殿、お主は宿の段取りは付いているのか?」



「いえ、全く付いていません。そもそも私は今完全な無一文でして……。でも戦車の中で寝れますし、お気になさらないで下さい」



するとガリアンはそんなことではイカンと言い、町を救ってくれたお礼に町の宿の部屋を確保してくれると言って来た。正直、この騒ぎを起こした本人としてここまで施しを受け入れる訳にはいかないとガリアンに言ったが、それは絶対にダメだと言って一歩も引かなかった。俺は戦車を町の人々の通行の妨げとならない様に城壁に沿って作られた町の街道に止める。そしてガリアンに流されるまま誘導され、町の宿に着いた。



「それでは明日ギルドで会おう。詳しい場所はフィーナが案内してくれる。分からない事があれば彼女に聞いてくれ」



俺はガリアンに案内された宿の目の前で彼と明日予定についての約束を交わし、彼と別れる。宿はレンガ造りの建物でまるでヨーロッパの旧市街にありそうな古民家の様な見た目をしており、入り口の両サイドに花を植えた植木鉢が置かれており、清掃がしっかりと施された清潔感溢れるお洒落な建物だ。俺は恐る恐る宿の扉を開け、中に入る。



「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」



扉を開け中に入るとそこにはピクピクと動く兎耳を持った、俺と同じ歳か上くらいの綺麗な宿の受付スタッフであろう女性が俺を出迎える。俺は始めて見る元居た世界だとファンタジー世界の産物でしかなかった兎耳に言葉が出なく、しばらく放心状態になる。



「あの、お客様? 私の顔に何か付いているのですか?」



「はっ! ご、ごめんなさい。兎耳を持った女性は始めて見るものでして……」



「おや、ハーゼシビリアンを見るのは始めてですか? だとすると、貴方がカワバタ シドー様でしょうか?」



「あ、はい。でも何で俺の名前を?」



「話はガリアンさんから聞いています。魔力のない武器でガルトウルフの大群を単騎で倒したという遠方の旅人に部屋を用意しておいて欲しいと頼まれまして」



「そうですか。でもそんな人間を見ても怖くないのですか?」



「はい! ガリアンさんから変り者だが話しやすい人間だから安心しても良いと教えてくれましたし、町を守ってくれた人が悪い人な訳ありません」



俺はガリアンにこっちの人々を怖がらせない様、事前に伝えてくれたことに感謝する。正直、自衛隊の迷彩服という変わった服を着たまま、この世界の常識を知らない俺は色物人種以外の何者でもないからな。



兎耳の宿屋の彼女は奥の部屋から俺が泊まる部屋の鍵を取り出し俺を2階まで案内し、扉の鍵を開けて俺を部屋に案内する。部屋はかなり広々しており中央に大きなダブルベットが用意されており、窓からはランタンで照らされたウィスカの町並みが見え、電気とは違う目に優しい光が心地よい。俺は兎耳の彼女から部屋の備品の使い方を粗方聞いて、一回にある大浴場にやって来た。



日本に居たときと変わらないスタイルの大浴場をお目にかかれて俺は感動する。風呂入るために受付で再び会った兎耳の彼女が詳しい事を教えてくれた。どうやらこの大浴場に貯めたお湯に体を浸ける入浴という行為はアクアポルトの住民が考え付いたことらしく港町で水が有り余るという性質上、町の子供がイタズラで冬に町の噴水に「炎の魔石」なる熱を持った魔石を大量に投入したことが起原らしい。そしてコールマンとアクアポルトとの交易都市となっているウィスカにも次第に受け入れられたそうだ。



この宿屋の風呂の構造は大きな浴槽の下に大量の魔石を敷き詰めてお湯を沸かしていおり、いわゆる大きな鍋の様な構造になっているそうだ。俺は移動と戦いでかいた汗を流すために体を洗い、湯船に入る。お湯は少し熱いと感じたが疲れた体を癒してくれるには丁度いい湯加減だ。だがこの浴槽の構造を思い出し、まるで出汁を取られている味噌汁の煮干しみたいな複雑な気分にもなり、10分ほど肩まで浸かり体が火照ってきたタイミングで湯船から上がり体を吹いて部屋に置いてあったバスローブを羽織り部屋に戻る。







俺は再び部屋に戻り窓際に置かれた椅子に腰を掛け、ウィスカの町を見ながら一人黄昏る。この世界に転生してまだ二日目なのに様々な事が起きたものだ。まず何も考えずにP90の有り弾全て溶かし、道端で倒れていたフィーナを助け、町を襲おうとしていたガルトウルフの群を退け……。



そして元居た地球が今どんな状況になっているのか。恐らくアリアスに見せて貰った20年後の荒んだ世界に向かって進んでいっているのだろう。だが明日に備えて寝なければないないことも事実。俺は椅子から立ちあがり、布団に潜る。しかし、そんな事を考えていると中々眠りに就こうと思えない。すると、



トントン 誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえ、俺は宿屋の娘が何か伝えたい事があったり、何か持って来たのだろうと思い体を起し、返事をしてドアをノックした音の主を部屋に案内する。






「し、シドぉ……」



音の主は宿屋の娘ではなく、フィーナだった。彼女は俺と同じバスローブを羽織り頭のポニーテールを崩し、今はセミロングの髪型をしている。そしてその髪はまだ水気を含んでおり、恐らく風呂上がりなのだろう。そんな彼女は体をモジモジさせながら、俺を見ている



「フィーナ? こんな時間にどうしたんだ? 」



するとフィーナは俺目掛け、ペチペチと裸足の足音を発てながら俺の胸元に再び飛び込んで来る。



カバっ



「フィーナ!?」



「良かった……シドーが無事で本当に良かった……」



昼間の汗の臭いとは違う、シャンプーの臭いが俺の嗅覚を刺激し、バスローブ越しに胸の感触がダイレクトに伝わってくる。止めてくれ、独身歴25年の俺にとってこの状況は色々と不味い。俺は昼間フィーナの露出度の高い服を見たときと同じ様に邪念を取り払う。だがそんな四苦八苦する俺に対しフィーナは



「シドー、今日は同じ部屋で寝させてくれないだろうか?」



今この娘はナントイッタ? 俺と同じ部屋で寝たいと言って来たか?



「おいおいフィーナ、さすがに冗談だよな? 歳がそんなに離れていない俺の部屋で寝たいとか本気なのか?」



「わ、私は何事に関しても本気だじょ! ……かぁぁぁ」



噛んだ。この娘噛んだぞ。フィーナは噛んだことに気付き、顔を真っ赤にする。しかし、すぐに俺を涙目の上目目線で見つめて



「町の大通りで今日は好きなようにしてもいいと言ってくれたのはシドーだぞ? だったら今は私のお願いを聞いてくれ……」



「……よし、分かったぞ」



「本当か!」



フィーナは顔を輝かせた。本当にフィーナは誰かに甘えたいという感情を抑えていたんだな。そして今、その気持ちを爆発させているのだろう。だがフィーナの寝床の確保はどうしよう? 俺は一度部屋を見渡し、ダブルベットがこの部屋に置かれている事に改めて気が付く。まさかガリアンはこうなることを予測してこの部屋を取ったのか?



だが未成年の少女を俺と同じ布団に寝かせる訳にはいかない。俺が窓際の椅子で寝るからフィーナにはベットで寝て欲しいと言ったがフィーナはこれを全力で拒否。しばらく言い争った後、結局同じ布団で寝ることになった。



フィーナは満足そうに俺の布団に潜り込んで来る。バスローブの胸元がはだけ、胸の谷間や鎖骨がモロ視界に入ってくる。彼女が鎧を脱いだときも思ったが、フィーナは本当にキレイな肌をしており向かい合った俺は目のやり場に困る。これ以上彼女を凝視するわけにはイカンと思い、体を彼女に背中を見せる感じで寝返りをうつが……



「しどぉ……何でそっちを向くのだぁ……」



ムダだった。フィーナは今すぐ俺に体の位置を元に戻すように催促する。そして体を元の位置に戻すと、満足そうに今度は俺に抱き付いて来て今度は俺に寝返りをうたせない様にガッチリと体をホールドする。



「私に背中を向けた罰として……きょ、今日はこのまま寝てもらうからな!」



と言い、絡ませてきた腕と足を離そうとしない。そしてフィーナも冒険者であり、剣士でもあるので見た目以上力が強く、抱き「締め」られると痛い。そして徐々にその力が弱くなり、すぅすぅ と女の子らしい静かな呼吸を規則的にしながら、眠りに就く。こっちの気持ちなんか考えずに穏やかな呼吸と表情をしたまま眠る美少女に釣られ、俺も次第に眠りの世界に就く。








そして翌日、ギルドに赴きこの世界が元居た世界と同等に世知辛い世界であることを痛感するのであった。















2日ほど投稿に時間が掛かって申し訳ありません。仕事と前書きに書いた削除事件のせいで投稿が遅れました……(´・д・`)



あと、今回はスマホ投稿です。実はスマホでも執筆中にタブを間違えて閉じてしまい再び放心状態になってます(´・ω・`)




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