序 「よくある光景の1コマ」
俺達の学園は田舎にある。
眼前には大海原。
振り返ればそびえ立つ山。
大きな街まで無駄に交通費を消費して1時間以上かかり、周りに娯楽は皆無。
無駄に全寮制である。
教育には最適だが、青春を送るには全く適さないこの学園で俺は、危機に陥っていた。
夕暮れ時。
他の生徒は部活や寮までの帰路に着いている頃、俺「道田唯幸」は5人の人間に命を狙われていた。
鋭い輝きを放つ真剣を突き付ける黒髪ポニーテールの女子、この学園の最高権力者にして学生達の長「結ヶ咲統」
鈍い輝きを放つライフルの銃口を突きつける白銀のツインテール女子、マスコットのような見た目の「筒賀定」
突き付ける武器こそ無いが鋭い眼光を放ちながら不敵な笑みを浮かべる男、不良の代名詞「春日健一」
杖のような物を持ちながら片手には妙な本を持つ少女、学園主席「朝永結」
パソコンを数台を操作しながらこの状況を見守る少年、自称天才ハッカー「長崎総」
学園でも有名人である彼らと何故このような状況になっているのかというと、時は3日ほど前に遡る。
「……はぁ?編入?」
それは自らの肉親である父からの突然の電話がきっかけだった。
『おう、無駄に青春を謳歌している我が息子のために父さんが自らのコネを使ってある学園に編入させてもらえることになったんだ』
「コネとかいやらしいわ。あと話が無茶苦茶怪しいんですけど」
『まぁ聴け少年』
「なんだその口調は」
『お前の今通っている学園は良いところだが、何の変哲もない面白みにかける……そんな場所じゃないか?』
「いやあんたが通わせt」
『少しでも刺激欲しさに性犯罪や犯罪や性犯罪に手を染めないかとパパは心配しているんだよ』
「なんで性犯罪って2回言った。あとパパってなんだ」
『そんなわけで、だ。俺が昔世話になった学園にお前の話をしたら是非にとお願いされたんだよ』
「あれ?コネで頼んだんじゃないの?話噛み合ってないぞ」
『ってわけで、そこ全寮制だから明日には引越し業者来るからな』
「はぁ!?何勝手言ってんだよ!!手続きとかはどうするんだよ」
『そのへんは済んでるから安心しろ!なぁに行けば楽しい所だから安心しろって。はっはっは』
「笑ってんじゃねぇ!!」
という無茶苦茶なやり取りをした結果、俺はこの学園に来ることになった。
最初は嫌々だったが、すぐにクラスにも馴染み友人もできた。
ちょっと変わっているがルームメイトも良い奴だし、ある意味親父に感謝だなと思っていた時、その放送は流れた。
「転入生、道田唯幸君。放課後、特進クラスの教室まで来るよう。以上」
簡潔に流れたその放送を聞いた瞬間、周りの人間がざわつき始めていた。
その理由を友人に尋ねたが、皆苦笑するばかり。
ワケも分からず、迎えた放課後。
特進クラスの教室を訪れた俺は、いきなりそこにいた全員から囲まれる結果となったのだ。
流れる妙に重い空気。
俺を取り囲む人間から放たれるソレは俗にいう殺気であった――。
「えーっと、コレはどいう状況なんでしょうか」
意味不明な状況に、思わず状況説明を求めてしまう情けない男の図である。
「あぁ?お前、この状況でよくそんなにヘラヘラしてられんな」
「あ、いや別にヘラヘラはしてないっていうか……状況が飲み込めないだけであって」
「おい、統。本当にこいつであってんのか?何かの間違いじゃねぇのかよ」
乱暴な口調で春日は結ヶ咲に問いただす。
「……いえ、彼で間違いないわ」
真っ直ぐに俺に向けられるその視線は、同時に突き刺さるような殺気を帯びていた。
普通の小説に出てくる普通の男子生徒では足が震えているか、泣き出しそうになる状況だろう。
だが、自分で言うのも何だが俺は普通の男子生徒じゃない。
「だから、ここで死になさい――」
その言葉と同時に全員が一斉の俺を殺そうと動きはじめる。
最初は結ヶ咲であった。
切っ先を瞬時に引き、突きの体勢に入る。
それと同時に筒賀の引き金を引こうとする指に力が入る。
ワンテンポ遅れるように、春日がアッパーの構えを取るために体勢を低くしようとする。結ヶ咲の射線からも筒賀の射線からも外れている。
同じテンポで何やら呪文のようなものを唱え始めようと口を動かそうとする朝永。
長崎は動かないようだ、俺の動きでも見ているんだろう。
連携の取れた動きだ。
俺は内心その動作に感心しながら親父の言葉を思い出していた。
『なぁに行けば楽しい所だから安心しろって。はっはっは』
あのクソ親父は全てを承知したうえで俺をこの学園へ編入させたのだろう。
なら、その言葉に乗ってやろうと今覚悟したのである。
2秒後、俺の状況は一転した。
結ヶ咲の真剣は春日の頬を掠め、筒賀の弾丸は教室の窓に穴を開けた。
春日のアッパーは空を切り、朝永の魔法のようなものは教室の床の一部を焦がしていた。
長崎は唖然とした表情でパソコンの画面を覗いていた。
俺は教室の後ろに用意されていた椅子に腰を落としていた。少しだけ制服が破れてしまった。新品なのに。
その場に居た全員が誰も声を出していなかった。
まぁ普通はそうだ。
俺を殺す気で放った一撃を全て無効化されたのだ。
「……あなた、何者?」
口を開いたのは結ヶ咲だった。
俺はため息混じりに椅子から腰を上げた。
「とりあえず、落ち着いてお話しませんかね?」
そう、コレは俺が新しい学園で送る新しい青春だ、と思う。
初めまして、雨宮聖とお申します。
日々小説家、シナリオライターを目指し奮闘している者です。
まぁ忙しかったとかいう言い訳をしつつ作品を完結させてこなかった自分に喝を入れるために処女作てしてこの作品を投稿しました。
非常に見難くて、頭の悪そうな文章を書きますがご愛嬌と思って見守ってください。