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2【侍女長】は語る1

忠誠と深秘の国、王を頂点とした国

王族・貴族・騎士・魔法使い・神官・庶民が生きる国


《3の国》といっても、さらにいくつかの国に分かれていて、そのなかでも一位の権威を誇る国?の庶民として生まれた私。商人をしていた父は、商談に失敗してあっさり愛人と有り金持って失踪……。まぁ、良くあるパターンだと開き直れたのも拾って下さった娼館の女将さん(マダム)のおかげ。そこはお偉いさんしか利用できない一見さんお断りの高級娼館で、高い教育と芸を勉強できた。裕福な商人の娘だった私は、もともと教育を受けていて下地があったからか、すぐお偉いさん方からの寵愛を受けることが出来た


見目麗しく、色々な話が出来て、ちょっと我侭小悪魔。それが私の売りだった、今思うと恥ずかしいけどね……


そして数年後、避妊に失敗して身ごもってしまった。誰だかわからないが、お相手がお相手なだけに安易に堕胎の道は取れない。だからと言って産んでもケチが付く……そもそもどうして避妊薬を服用していたのに身ごもってしまったのか?


結構お高い隣国の『愛と出産の神』サマ神殿印の薬なのに、どうした神サマ!?


疑問に思いながらマダムと王冠の女神神殿へ出向く、そこで血族判定をする為だ。そこで判明する腹の子の父親は、遊び人で有名な序列2位の侯爵様……選りにもよってアレの子か


うわ、さいあくだ


言っておくがこの腹の子が最悪なのではない。アレと縁づいてしまった私が最悪だ……。この結果に、さすがに隠す訳にはいかないので、マダムと共に話し合いをする事となったのだが


「結婚しよう!!」

「嫌です」

「何故だ、薬を服用していても孕んだのならば、それは神の望まれた子ではないか!!」

「それは他の国の常識ですが、この国での非常識です。ただの失敗です、避妊失敗」


言っておくがこの腹の子が失敗作と言う意味ではない


「君を愛しているんだ!!」

「嘘吐け」


あれほどの浮名を流していて、愛をささやくなんて馬鹿か?店でも侯爵様に抱かれた事のない娼婦は、新人だけだという状態で愛だなんて、何を言っているのだろう


「子を産んでお渡しするのは構いませんが、私の存在を秘匿していただき、子の権利を保障していただかないと。あ、あとは働けない分の支度金を頂かねばなりませんけれど?」


娼婦の子なんて蔑まれちゃこの子が可哀想だし、この馬鹿の血を継いでいるのは確実なのだから、認知していただかないとね。出産前後は客を取れないだろうし、妾なんて冗談ではない。私を巻き込まないでくれ、私は面倒だから庶民のままでいい……


「だから私と結婚すれば万事解決するではないか」

「堕ろすよりも、面倒くさい」


言っておくけど、そんな事しないからね。授かっちゃったものは仕方ないでしょう、そう言う縁だったんだから産みますよッ!!


こんな会話の応酬で全然解決しない。聞くと侯爵様は人肌依存症だそうで、夜、人肌に触れていないと不安になり安眠出来なくなるそうだ。じゃあ嫁をもらえばいいじゃないかと言うと、私の事が好きだからそれ以外の嫁は要らないとか言う馬鹿だ。そもそも庶民は貴族とは結婚できないでしょうと言うと、え、庶民だったの?と言う始末。まぁ、高級娼婦といえばよんどころない家の出の女性も多くいるけどねぇ……


仕方なしにこの娼館ごと買い上げて、私を含め高級娼婦たちを侍女として雇い入れる事となる。ただし夜のお相手込みの侍女、その侍女たちになら手を出してもいいが、素人さんには迷惑をかけてはいけないという誓約をした。変なところ(?)に種をまかれ芽吹いてしまったら、私の子が不憫だしね


客を取る以外に侍女仕事をしなければいけないから、労働的には大変になると言うのに、意外と希望してくれる高級娼婦たちは多かった。まぁ、侯爵家お抱えの魔術師による『誓約』を交わさなければいけないと知り、辞退した娼婦もいたのよね。どうせ紛れて逃げようと思ったのでしょうけど、さすがにそこまでおおらかな訳ないじゃない、上級貴族様のお屋敷よ?


でも、きちんと仕事していればそこそこの自由を保障してくれるし、『屋敷で貴族と侍女とのラブロマンスプレイ』を体験できて、労働が苦ではない娼婦には結構好評だった。私も正直、家事の方が楽だと思ったしね……これも縁なのかしら


葡萄酒色のお仕着せ(妊婦用)をまとって、高級娼婦兼侍女たちを仕切る。侯爵様は、私におとなしくしていてほしいそうだけど、運動不足だってお腹の子にも悪いのよ?それならば、夜の閨のお仕事を遠慮させてくれないかしらと言うと、それはそれだって抱きしめられる。あんまり激しいのは困るんだけど、おとなしくしていてほしいって言ったじゃないの。そう言っても聞きやしない


他の子達を抱けばいいじゃないかというと拗ねるし、何のための高級娼婦兼侍女なのよ






これが序列2位の侯爵家屋敷が、侯爵様専用の娼館となった経緯。早い話が、侯爵様は馬鹿だということである。

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