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1【新人侍女】は語る1

ご職業が娼婦の方々が大勢出てくるので、全体的にR15となっています。純粋な恋愛がお好きな方はやめておいた方が無難かもしれません。

近くて遠い4つの世界のお話


世界の始まりはスープ皿に満たされた粘度のある命の水

天から落ちた滴りが水面を押し出し、それは王冠へ、王冠から神へと変化し

波紋は大地となった


波紋から成った大地は、大きな大きな輪の形をしていて

それを四柱の王冠の女神達が、それぞれ守護している


これはそんな世界の《3の国》の話





忠誠と深秘の国、王を頂点とした国

王族・貴族・騎士・魔法使い・神官・庶民が生きる国


《3の国》といっても、さらにいくつかの国に分かれていて、そのなかでも一位の権威を誇る国の下級貴族の家に生まれた。……本当に一位なのかは知らないけれどね


下級貴族令嬢として生まれた者は、上級貴族のお屋敷で行儀見習い侍女として働くのが常識だ。私も行儀見習い侍女として働いていたある日、父が有り金持って愛人と失踪してしまいました。実家は火の車、残された母は憤慨し実家へと帰り、お家は断絶……すればよかったのに、5つ子弟のだれかに継承されることとなってしまいました


小悪魔5つ子は全寮制の学校へ通っていた時に生まれた、年の離れた弟達だった。入れ替わり悪戯を仕掛けるヤツラで、見分けがつかないという同じ顔っぷり。普通、多少の違いはあるだろうに、本人たちも解っていてわざと同じようにふるまうのだ。母でさえ見分けがつかず匙を投げたという、小悪魔ファイブであった


正直私も投げたかった……、はっきり言って姉弟として交流したことがほとんどなかったのだ。全寮制であり、長期休暇時には侍女学校へ通っていたので、実家へ戻るのはほんの数日。私の卒業と入れ替わりにヤツラが入学し、寮生活となった。私はそのまま高位貴族のお屋敷に住み込みでご奉公となったので、家族感は薄い。薄情と言うなかれ、そのころから家の事業があやしくなりはじめ、送金するのが精いっぱいで様子を見に帰ることも出来なかった。帰るくらいなら働けと両親に言われたものだ


後腐れのないようにと母の実家が借金を清算してくれて、事業関係の後始末やお預かりをしてくれているのだが、成人した孫娘など知らないとばかりに縁を切られた。父親の血を引く子供は要らないそうですよ、特に私は父親似だしね……あはははは


捨てられた私は家族を捨てることも出来ずに、結局今まで通りに働いて送金の毎日。小悪魔ファイブは現在学校の最高学年でもうすぐ成人なのだ。私よりも背もでかいし力もあるし、勉強も優秀だったりするらしい。全然会っていないけれど。最低でもあと1年分かける5人分の学費を稼げば、義務終了になるはず!!


その為少しでもお高いお給料の出るお高い地位のお屋敷に勤めたいと、侍女斡旋の世話人の間を渡り歩いた。現在働いているのは序列5位の侯爵家。そこそこのお給料はもらっているが、育ち盛り食べ盛り悪戯盛りの5つ子を養うためにはもっと高いお給料がいるのだ、学費は仕方ないと思うが学校から届く悪戯の結果である弁償代さえなければ……余計な出費を産みだすヤイツらは、私にとっては小悪魔ではなく悪魔である


そして


やっとしっかりとした身分のお屋敷で、非常にお高い給料を支払って下さる住み込みのお仕事を見つけた。紹介して下さる世話人は私を見て顔をしかめたが、お給料にはかえられない。愛想笑いの侍女スマイルを浮かべて、世話人の話を聞く


「…………なんでこの求人を選んじゃったんだい、君?」

「お給料が良かったからです、弟達の学費の足しにしたくて……ですが」

「……弟さんたちねぇ、何人いるの?」

「5人です」

「君の両親は馬鹿かい」

「出産は2回しかしていません、一概に馬鹿でくくってしまうのは早計かと」


あぁ、5つ子なんだ珍しいなと言うお言葉をいただき、世話人は詳しい話をしてくださいました



ご紹介していただいた上級貴族様は序列2位の侯爵家でした。ここの当主さまは色好みで有名な方で、手を付けた侍女は星の数ほどと言うエロ侯爵様でした……通称『専用娼婦を飼っている侯爵家屋敷』。娼婦であって愛人ではない、プロであってアマではないのだ……


マジか、ヤられる前提か、それって……


「早い話が身売りじゃないですか!!」

「君ねぇ、世知辛いこの国で女性がそこまでの高給取りって何人いると思う。王宮で働いている上級女官くらいのもんだ、しかも上級女官は伯爵家以上の才色兼備なご令嬢だけがなれる職業だぞ。君、そんなに優秀かい?あ、爵位が足りてないから元々無理か」


お手が付けば特別手当が付くぞという、あんまり嬉しくない情報をいただく


「身を売る専門になる方が給料は良くなるかも……、いや世の中には物好きって言うのがいるしな。没落貴族の令嬢を踏みにじり優越感を得たい下級貴族とか、屈服させてやりたいと思う金満庶民とかさ」

「すいませんね、美人じゃなくて……」

「可愛いとは思うけど、美人ではないな君は」


あくまで侍女(?)という職でのお仕事ならば、これ以上いい雇い先はないと言う世話人。これ以上選り好みしていると、収入より支出が大きくなってしまう、主に弁償代で……どうしてあんなふうに育ったのか謎である


そもそも誰が育てたのかも知らない私、産んだのは母のはず……ですが


もう後がないので、夜のお相手前提の侍女となることに判を押す。ただもし万が一妊娠が分かった場合は、きちんと認知をし侯爵家の子女として迎えられるとのこと。そもそも現在の嫡子様は当主様の愛人のお子様だし、悪いようにはしないとの世話人の励まし(?)を受けながら書類にサインをしたのだった


なりふり構ってはいられない、本当に世知辛い






……そりゃあヤられる前提だったら、お屋敷内の侍女さん達の顔ぶれに納得いくわ!!


序列2位の侯爵家へ世話人と一緒に向かう。見回すと……何というかもう、セクシー系侍女ばっかりなのだ。悪女系セクシー侍女長様を筆頭に、母性たっぷりの豊満系侍女さんや、清楚系でも夜は娼婦に変わります侍女さん(本人がそう言っていた)や、甘えるの上手な妹系侍女さんなどが盛り沢山。葡萄酒色(ボルドー)のお仕着せを色っぽく着こなしているその中に、貧乏系貧相侍女が紛れ込みました、えぇ、私の事ですよ


なんですか、美食の合間の粗食担当ですか?


「言っておくけれど私は巨乳が大好きだから、ぺったんこな君には食指が動かないから安心してくれていいよ」

「左様で……」


当主様の嫡子専用であるらしい私に、エロ侯爵(とうしゅ)様はそう仰った。もげろ女の敵


詳しい話を聞くと、その嫡子様が第2次性徴を迎え、某有名高級娼館の高級娼婦たちを侍女として雇い入れ、手を付けても良い環境にしたようだ。もげろ女の敵


しかもその某有名高級娼館は、嫡子様を産んだ愛人様の所属していた店で、愛人様を手に入れるため娼館ごと買い上げたという金持ちっぷり。身請けすればいいだけの話じゃないのと思ったが、心の中だけ。もげろ女の敵


その玄人に手を出し放題だった嫡子様が、最近外の素人女に興味を示し出したようで、趣向を変えたタイプの侍女が欲しかったらしい。えぇ、私の事ですよ


もげろ!!


しかもなぜか私は男装中、フットマンもどきと化している。もちろん私の趣味ではない


「倒錯的だろう?息子も興味を示すかもしれないからな……」

「……左様で?」


倒錯的ってなんですか、私がぺったんこだというのを強調したいのですか


内心イラッとしながらも、お高いお給料の為我慢しますよ。まったくもうお貴族様ってのは、あやしい性癖持ちばかりなのだろうか?……私も貴族だけど。取りあえず見習いとして雇われることに、給料は見習いの為減額されましたが、もしお手付きされればプラス支給されるそうです、ワァ待遇イイナァ……なんて思う訳ないだろうが!!





「大丈夫よ、最近はご学友のツンツン系ご令嬢に夢中だから。侍女には週2くらいしか手を出してこないわ」

「左様で……」

「でも嫡子様は寮住まいだから、ご実家には多くて週2くらいしか帰ってこないけれど」

「10割で手を出しているッ!!」

「そう言えばそうね」



清楚系でも夜は娼婦に変わります侍女さんがお屋敷内を案内してくれて、まずは間取りと清掃作業を覚えることとなります


「ここが控室、まず避妊薬を飲んでもらいましょうか」

「…………子供出来たら認知するわりには、避妊薬を飲まされるのですね」

「あら、知らないの?嫡子様ってね、当主様も愛人様も避妊薬を飲んでいたのに出来た子供なのよ。だから当主様は飲んでいても相性さえよければ、出来るときは出来ると思っていらっしゃるわ」


それは愛人様が薬を飲んだと嘘をついて、飲まなかっただけではないのかしら?と、思った。そしてその事については清楚系侍女さんも疑っているらしい


「侯爵家の嫡男を産んだらそれこそ多額の謝礼金が出るわ、それはとても魅力的な額。……あんたも狙ってみれば?ただし分け前はいただくわよ?」

「それを言うなら自分でお産みになった方が、丸儲けではないですか?」

「私が孕めるとは限らないでしょう。あんたにも協力してあげるから報酬は半々よ、私が産んだらすべて私のモノだけどね」

「左様で……」


避妊薬を目の前で振りながら言う清楚系侍女さん。清楚なのは見た目だけなようで、腹の中は真っ黒みたいだ。しかも微妙に馬鹿っぽい、そんな条件で手をうつ人がいたら見てみたいほどの失策だ。こういう人とは友達になれないなぁ、あまり近づかないようにしよう


「ご遠慮申し上げます、薬はちゃんと飲みます。できれば侍女の仕事だけしていたいので」

「ふぅん、そう言うのを謙虚って言うのかしら。ならば、侍女長の前で薬を飲んだ方がいいわ。私が見届け人だと疑われてしまうかもしれないしねぇ……」


ふふ、と清楚に笑う清楚系侍女さん。彼女が持つ薬は、ただの小麦粉を固めた偽の薬モドキだそうだ、どこが清楚系なんだこの人。薬モドキをポケットにしまいながら、彼女は最後の爆弾を落とした


「ちなみに言っておくけど、夜のお相手って嫡子様以外もするのよ?」

「は?」

「侯爵家の血を引く者や、侯爵家家臣団のお偉いさんたちの性欲処理係。『長』の付く役職の人ね。乱交アリでお誘いは断れないのが基本、月ものの時は免除されるくらいかしらね。まぁ、家臣団でも下っ端には権利が無いけど、合意があればいいらしいわよ。あくまでも自由恋愛という事でお手当は出ないから、私はまっぴらですけどね」


ら、らんこうって……その、複数有りってことですか?


さ、さいあくだ!!

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