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スケッチ5.生命短し盛れ人々 積もる泥の乾かぬ内に

 ☆★☆★


 そんな風にして、そう、六から四、五ヶ月ばかりが往来した。


 ☆★☆★ 


 行きつ戻りつ、その間に何が起きたか、語る事も出来るには出来る。

 だがその為には、大量の酒と煙草が必要になって来る。

 軽々しく掘り返すのは懸命とは言い難い――何処に繋がっているかも知れないからだ。


 ☆★☆★


 (追記するなら、軟膏も少々と――何の為、誰の為かは言わなくともに解るだろう。それに対する答えは、世にも稀に数少ない、万人に寄る見解の一致を望めるものと信じている。)


 ☆★☆★


 兎も角、そう、それらはもう、今やかつての事である――時に振り向くのも悪い事では無いけれど、眼の前にもっと意味のあるものが聳えていれば、そちらを優先するべきだ。


 ☆★☆★


 かく訳で、フェリックス・スコープツィッヒは己が見出し、名付け親となった聖遺物の用途を知り、セネティアス・フィドゥシアンとその一党は、彼の意図の何たるかを知った。

 嗚呼被創造物よオー・シリィ・フェロウズ――彼も彼女も頑張った。

 聖方西斯哥(サン=フラン・シスコ)中を西へ東へ、逃げては追われ、付かれては隠れ、破られてはまた逃げる、そんな日々を一つの定型と成した二人は、やがてその末に、或る場所へと辿り着く。


 ☆★☆★


 其処は、海なるものの残滓が最も顕著に遺っている場所であり、そしてまた――散々見て見ぬ振りをして来た事を、此処に素直にお詫びしたい――人々が近付く事の出来る、登る事の出来る限界という意味に置いて、真に天の頂の麓と呼べる場所でもあった。

 試みなかった孤人区域(セイラム=フォウラム)の最奥、坂道から階段へと変わるのを数段超えた先にある広場は、特に(シェル)持つ類の魚達の、既に石と化した骨を断片として、粉飾として散りばめており、歳月に寄って磨かれ、均されたその装飾を全体へと広めさせ、その様相は、更に奥、幅広に、緩やかに、真正面から見据える事の出来る堆き山目掛けて続いて行く階段の上や、左右の壁面にも確認する事が出来る――その奥、となると、それは解らない。何故なら、何段も何段も登った末に待っているのは、幾重にも渡って張り巡らされた『☆FORBIDDEN(関係者諸氏へ)★』の封印も古めかしい大扉だからだ――訪れる市民達の大多数が目的は、あくまで憩いである為に、無駄に詮索する様な愚かな真似はしない。素直に、看板の指示に従うだけである。

 それに従わない残りの極小数の場合、意志の有無より方法が問題なのだが、大扉を開ける手段を見付けた者は誰も居なかった――芸術分野(ファイアワーク)に置いて特出していたある男は、かなり惜しい所まで行った、けれど、結局の所それは、耳と眼に心地良いだけに過ぎず、目論んでいた破壊の方は全くの不首尾に終わってしまった――他の所なら全部上手く行ったのに。だが、この方法では駄目だと悟ると、男は警句を字義通り受け入れ、某の優れた建築技術に祝いを添えるべく、一風変わった花屋となる事を決意し、それは報われ、彼は財産と尊厳を手に入れた――その一人の男の名前が、フランクだかシュタインだか言う事と含めて、全ては最早どうでも良い、今やかつての出来事である。


 ☆★☆★


 墜落した霧か隆起した地盤か、或いは言葉の出処か、何はともあれ、この場所が行き止まりなのは周知の事実であり、と同時に、それと関係するかどうか知らない様に、余り周知の事実では無い風説として、此処はこう呼ぶ人から呼ばれていた。

 即ち――舟方の正門(ファサード)、と。

 開けられないのは、その舟方なるものが、最早何処にも居ないからかもしれない――その理由はまた、ここでならば良く見渡せるだろう。中にはヒトデも混じっているが。


 ☆★☆★


 けれど、しかし、今日この日を結節に、風説はきっと新たなものとなる筈である。

 何時の間にだろう、既にして大扉は開いていた。

 煎胡麻(セサミ)の呪文を告げる暇も無かった――いとも容易く、呆気無い進展。

 開いていなかった場合の考察を無駄とする、とある探求者(シーカー)を迎え入れる様に。

 

 ☆★☆★


 尤も、そんなフェリックス・スコープツィッヒの語る所では、正門の事ならとっくの昔に知っていたし分かっていた、セネティアス・フィドゥシアンさえ居なければ、或いは、都市の外縁、基盤に関する思考誘導さえ無ければ、もっと簡単に、簡潔に此処へと到達し、真実に至っていた、という話だが、まぁこれは聞くだけ言うだけ無駄というものだ。

 その時は過ぎ去り、もう帰って来る事は無く、今此処には彼と彼女が揃い踏み、目指す者が下段、妨げる者が上段と、長い段差を挟んで対峙する――白昼の中に堂々と、恥じる事無く、どちらが真に正しいかを決する為――その他大勢を従えて。


 ☆★☆★


 核心に至る隙を突いたこの今の内に、この降って湧いたその他大勢について。

 彼等は両陣営が招き寄せた、謂わば助っ人である――が、思想的な所は関係無く、目的幇助の為の者達に過ぎず、もっと言えば、場面を派手にする賑やかしの存在だった。

 絶対救援護民官セイフティガーディアンズと呼ばれる彼等は、貴賓を、性別を、年齢を、能力を問わず、全て市井の民の自発的なる仮初の姿であり、有事の際に求める事で御指(フィンガ)を貸してくれる――だが、貸すのはあくまでも御指(フィンガ)であり、魂々(ソウル)では無い。詰まる所、その行為は何もかもが振りであり、結果を齎すものでは無いのである――彼等はその役割を、景気良く囃し立て、気分良く行動して貰う事と弁えており、間違っても何かを成そうだなんて思ってはいないし、望んでも居ない。結果を齎すのは、そんな酔狂を求めた、雇い主がするべき事なのである。

 だから、そう、この場合で言えば、護民官達が両の手にそれぞれ握っている衰直刀(サーペル)凍結合式(フリント・ロック)も、その他の装備一切、何もかもが玩具(フェイク)に過ぎず、余程頑張らなければ、誰かを、何かを傷付ける事なんて、とてもとても、出来たものでは無い。そして彼等は、誰かを、何かを傷つける気が無いだなんて気付かれない様に――縦令何であれ、本気で無いのは面白く無い、他ならぬ自分達が、だ――傷付けない事を頑張るつもりだった。


 ☆★☆★


 救護(セーフガード)の名前は、名前だけでは無い――訂正(ソーリィ)。名前だけなのだ。見掛けが全てであり、今を決して変える事が無いという意味で、この有り様は聖方西斯哥(サン=フラン・シスコ)の市民そのものと言えよう。

 在るが侭に成るが侭に、疑いは忘れ、忘れては疑い、そして忘れ――


 ☆★☆★


 尚、この事実を知る者は、知らない者と比べて、意外な程に少なかった――絶対救援護民官セイフティガーディアンズ達の働きがも真に迫る虚である為(または、そもそも、どうでも良いので、とは言わない方が良いだろう)、諸活動に関わる者以外へは、殆ど浸透していないのだ。

 事実、セネティアス・フィドゥシアンは知らない側の人間だった。彼女の部下である愚賽(ファンブル)の使徒、そしてフェリックス・スコープツィッヒは、知る側の人間であり、どちらもその扱いを心得、特に後者は、その存在を愉しんでも居た――折角だから、添える華は豪勢である方が好ましい、が、添えるだけで構わない、渡す以上は、自分の手でしたいのだ、と。


 ☆★☆★


 誰に? そんな者は一人しか居ないだろう。


 ☆★☆★


 これまた火蓋を切る前の、フェリックス・スコープツィッヒからセネティアス・フィドゥシアンについて――視線と視線を交わらせたその瞬間から既に吉兆があったけれど、彼は彼女をぞっこん惚れ込んでいた。憧憬を超えて恐怖となったその背丈を唯一抜かせば、それこそ何の文句も無い外見は元より、使徒としての意志にこそ、フェリックスは惹かれていたのである。蝿を追い払う様な気怠さで敵対する相手ならば、逆も然りの賛同者共々大勢居た、けれど、自分を捕まえ止めようとする、その為に、あれ程の真剣味(シリアス)熱意(フィーバー)を発揮してくれる相手は、誰一人として居なかった。誰一人、である。勿論、捕まって止められる気等、毛頭無いが、適度な敵対者は、人生に、その諸活動に張り合いを産み、正しさをすら証明する素敵で希有な存在じゃぁ無いか――使徒が何だ。平坦(フラット)が何だ。巨人が、何だ。

 寧ろ素で狙い易くていいでは無いか。


 ☆★☆★


 フェリックス・スコープツィッヒの方はそう思い、想っていた――では、もう一方の、セネティアス・フィドゥシアンは、と言うと、視線と視線を交わしたその瞬間から既に吉兆があったけれど、彼女は彼が大嫌いだった。常日頃であれば警邏位しか仕事が無い、平穏無事な生活を品無くぶち壊しにしてくれる、許す事の出来ない宿敵。自分の能力を全力で駆使して食い止めなければならない、この世界に仇成す者。何と腹立たしい。あの時から幾度と無く見る羽目になった彼のニヤニヤ笑いを思い出し、その足跡を追って市民に行なった聞き込みから浮かび上がる朧な個性を認め、懐に絶えず忍ばせている頭髪の一筋を見返す度に、抱いた感情は改められ、自分に課せられた使命を痛感させてくれる――それに、何より、何故に彼は、数ある部位の一点ばかりを狙うというのか。解らない意味は動揺と困惑となり、伝え聞く始まりの恥辱(フィグ)をぶり返し、意識を逸らす事を躊躇わせる。

 何故と問う暇があれば、先にしょっ引こう。そうしよう。


 ☆★☆★


 そう言う事だ――だからセネティアス・フィドゥシアンは、業務内容(システム)を知らないにも関わらず、絶対救援護民官セイフティガーディアンズに頼ろうとは思わなかった。やるならば自分の手で。そう考え、行いへと移すなら、脇目も振らず向かうのは、フェリックス・スコープツィッヒの元であり――彼もまた、それに応じる様に一歩二歩と進み出すと、合わせる様に六人の奉公人(サラリマン)が、それ以上の滅私者(サラリマン)が、その輪郭も一丸となって脚を動かす――それは次第に速さを増し――ある一点にて疾走へと変わると、彼方と此方、上と下に別れた、元は同じ者達は中途にて交わり――さぁお目々(スコープ)の蓋をパッタリと閉ざし、主なる舞台(ショウ)贔屓(フォーカス)しよう――シャンシャンファンファンと甲高い金属音と共に盛大な気合を響き渡らせ、激しい演武を繰り広げる――そんな最中にあって、フェリックスとセネティアスは、半ば我関せずと言う様子に、歩む速さはそのままと、瞳を絡ませあいながら真っ直ぐに進み――片方の口先は刻一刻と歪みを増させ、片方の目元は眼鏡の反射で白く隠れ――縮まった距離が、生と死(シックス・)を別つ(フィート・)長さ(アンダー)となるや、やおらそれぞれの腰元へと、懐へと腕を伸ばし――そして。


 ☆★☆★


 ()()()()()()()()()()()()()さん()!!


 ()()()()()()()()()()()()()()()!!


 ☆★☆★


 一瞬速く振り抜かれた指揮棒(スティック)の、優しげな、けれど断固とした誘導に従って掌は逸らされ、放たれた閃光は、狙い違わった方角の土台を抉り削り、埋もれていた者達を宙空へと吹き飛ばした――何処かの誰かが語った、鰭と呼ばれる翼に近しいものを羽撃かせる様に、鳥に似たかつての姿を、或いは、鳥と相成るやがての姿を思わせる形で。盛大に。容赦無く。


 ☆★☆★


 それは愚賽(ファンブル)の使徒の長に代々伝わる遺物――小さな筐状の銃身に短い把手を持つ、星の一つと降って湧いた孔の様に黒い黒い、真っ黒い機械装置だった。名前は知らず由縁も知らず、ただ、その武器――この場に置いて唯一無二である様に、そもそも誰かを殺傷する為だけの道具が非常に稀なものであるのだが――武器として、如何に優れた能力を持っているか、それのみが知られている。引鉄を引く、これだけの操作で、紅く輝く賽の目(スポット)状の口から放たれるある種の可視光波(スペクトル)――それは時に霊と言い換えられ、時に力とも宛てられる――が、観測上、遅くも衰えも無く、進行上に存在する有象無象の尽くを根こそぎにしてしまう。碩学者(サイエンティスト)幻想家(ファンタジスト)にとっては正に目も眩む様な代物だが、繰り返そう、その原理道理は全くの未知であり、目的に合致する(自体がそもそも数少ない)なら何でも構わない者達が担い手となっているので、何の問題も無い――こんな逸品を持ち出して来たという所に、セネティアス・フィドゥシアンの想いが、如何に本気(シリアス)であるかが窺い知れよう。


 ☆★☆★


 濛々たる土の大渦の中、欠片の魚と眷属は一つの群れとなり、空へ、空へと還って行く。

 我々は決して孤独では無い――口だったもの、と思われるもの、全てがそう言いたげに。

 パクパクパク。


 ☆★☆★


 所で、今やかつてで無く、最早どうでも良くは無い事実として――名無しの兵器が放つ光線は、全てを貫き、見えなくなるまで伸び続けたが、偶然にも、その進行方向には、ただの一人の人間も居なかった――いや、それを言えば、生きている存在も、か。死者は地中に埋もれているが為に仕方がないとして、この光で傷付いた生者は零だった。勿論痕跡は虫食いの様に残されていて、明日から暫く振り続ける事になる未曾有の豪雨(スコール)と合わせて、殺生以外の被害は十二分に出る事となるが――それでも、新たな死者は誕生しなかったのだ。この場に居る誰も彼も、その事実に気付いた者は居らず、また今後気付く事も無いだろうが、これは探求するに余りある事象である――聖方西斯哥(サン=フラン・シスコ)に置いて、根幹は存在しているというのにその派生はまるで無い、少し考えれば簡単に辿り着けそうなのに、しかし省みられた事が無い、とある概念共々、無視した侭は勿体無いと言わざるを得ない――ついでに言うと、六日を超えた七日目の朝、雲一つ無い快晴の下に街の疵は跡形も無く消え果て、乾いた土の積み重なった都市景観が待っている事を、先に預言(スポイル)して置こう。

 今更じたばたした所でもう手遅れだ。


 ☆★☆★


 しかしてそれらは、都市を俯瞰して始めて解る事実であって、当事者達が辿り着ずとも責めるのは酷というものだ。況してや、その当事者二人はと言えば、目指す所が高みであっても、見えているのは、瞳に入っているのはお互いの姿だけであり、その取り巻き達は、演劇に集中しつつも時折流れて来る光から逃れなければならないのだから、そんな余裕は端から無い――本当は、逃げる必要等無く、光の方が逃げて行ってくれている訳なのだが。


 ☆★☆★


 そう、だからこそ、フェリックス・スコープツィッヒとセネティアス・フィドゥシアンは次第、次第と群れる衆人(フラッシュモブ)から離れて行った――封じられし聖遺物の流石と呼ぶべきか、フェリックスの振るう案内旗(フラッグ)は、その役割で以って飛来する閃光の矛先を担い手以外へと巧みに導く、想定以上の弾力さを示しはしたが、翻る先端はセネティアスの、深追いしないが故により狙い難く、注意深く逞しい正面に隠された部位までは、短い腕をどう伸ばしても決して届かない上、続け様に指掛かる引鉄のお陰で、二の足と後退を踏まざるを得ず――逃げる者と追う者の必然として、二人は舟方の正門(ファサード)の奥へ向けて駆け登って行く――前人未到、訂正(ソーリィ)、かつては違った、今では前人未到である、ぐるりぐるりと巡り始める階段の上を。


 ☆★☆★


 そんな両人を追い掛ける者は誰も居なかった――追い掛けるに足る興味も好奇心も最初から無く、雇用主にして観客がこの場から去るのなら、何時までも茶番(ショウ)を続ける意味も無く――刃無き刃、音限りの銃で遣り合い続けていた、そして、刃無き刃、音限りの銃で遣られ合い続けていた人々は、正面及び左右両隣に居る同朋と、互いに互いの瞳の中を覗くと、示し合わせた瞬間に己が獲物を腰元へ、懐へと仕舞い込み、星字(サイン)を切って、変わり映えのしない日々への帰り支度をし始める――労働に励んだり、談笑したり、商売に勤しんだり、呑み喰いしたり、趣味趣向に奔ったり、☆★☆★したりする日々への。誰の彼の区別も無く。


 ☆★☆★


 六人の使徒について――彼等は空気を読んだ。途中から、自分達の症状(シリアス) が言う程大したものでは無い事を、翻って、自分達の目がもう無い事を悟った彼等は――何に対して、と聞くのは野暮というものだ――左右両隣に居る同朋と、互いに互いの瞳の中を覗くと、示し合わせた瞬間に己が獲物、限りでは無いが限っていた銃を懐へと仕舞い込み、星字(サイン)を切って、変わり映えのしない日々への帰り支度をし始める――労働に励んだり、談笑したり、商売に勤しんだり、呑み喰いしたり、趣味趣向に奔ったり、☆★☆★したりする日々への。

 誰の彼の区別も無く。


 ☆★☆★


 この様にして、二人っきりの追跡劇は勢いを増して行く――何時の間にか、光線は途絶えていた。時計回りに上へ上へ、大渦の軌跡を描くフェリックス・スコープツィッヒの逃走は、待ち望んでいた瞬間への期待と熱気に寄って疾走へと変わり、靴底を詰めても隠せない短小な体躯を補って余りあるその足捌きに、セネティアス・フィドゥシアンも合さざるを得ず、ともすれば曲がり角の向こうへと見えなくなって行く淡桃色の尾を追い掛けて、引鉄を引く暇も無く大股に駆け上って行く――一歩で距離を稼ぐその走りは、ともすれば簡単に追い付いてしまいそうであるけれど、そうは成らないのはフェリックスの猪口才な努力だけでは無い。これ以上先へ行っても良いのだろうか? そんな愚賽(ファンブル)の使徒として至極当然の問い掛けが足枷になっているからで、だがしかし、今日この日まで継承されて来た衝動も在ればこそ、セネティアスの両脚は止まらず、段を踏みしめ続ける。


 ☆★☆★


 昇り続ける回廊には一定の間隔を置いて、窓の様な孔が開き、そこからは聖方西斯哥(サン=フラン・シスコ)の、つまりはこの世界の裏側以外の、凡そ全てを見る事が出来た――地の果ても、街並みも、そこに住まう人々も、鳥も、空も、雲も、月も、太陽も、星も、霧も、虚無も、その他諸々(アンドソーオン)も――手を伸ばせば届きそうで、もしかしたら真相すらも、ではあるが、駆ける影はそのままに、何もかも忘れてしまったかの如く――ぐるりぐるりと螺旋の様に――

 そして。

 

 ☆★☆★


 ☆☆☆☆


 ☆★☆★


 ★★★★


 ☆★☆★

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