S.不埒な主人の辿々しい言い訳
☆関係者諸氏へ★
今作に置ける“SF”に関して、作者はこれを、
スペキュレイティブ・フィクションにする事と決めました。
謂わば一つの免罪符。
これなら全てが許されると考える姑息な手段。
なので実際の所は他にも色々、“S”と“F”の諸要素を仕込んだつもりです。
優柔不断の産物ですが、下手な鉄砲も何とやらに。
或いは、覚えが無いものまで出て来るかもしれない。
もしそうであれば、それはまたそれで、何とも喜ばしい事は違いなく。
ともあれ、そう、もう一つ勝手に定めておくとすれば、
四部作の六作目たるこの作品、愉しんで頂ければ幸いです。
それでは、どうぞ、どうぞっ、どうぞっ!!
私をスラーティバートファーストと呼んで貰おう。
誰もそう呼ばない――つまり、名前等意味が無いからだ。
重要なのは行いだけである。
何をしたか? そうそれが、それをこそ定義する。
物事は、そんな風に出来ているものだ――造物主だって例外では無い。
而して――
魂々と御指が動く侭に、秘められた真実を浮かび上がらせる卓上遊戯自動機械。
私が今世で行った行為は、言ってしまえば、そんな風な代物だった。
最初に言葉ありき――そう、その通り。何時だって、何処にだって言葉があった。
何時も無ければ、何処もまた無い、そんな有り様の時でさえ。
霊と言い換えて良いかもしれず、力と宛てても良いかもしれないが、何にせよ、それは今も、今までも、そして、これからも、決して変わる事の無い真理の一つである。
何故利用しない?
誰だってそうする。
私だってそうする。
だから私は、魂々と御指を総動員して言葉を集めたのだ――全てを支える基底を、基礎を築こうとして。一つの法則、一つの秩序を螺旋軸と、目に付くものから手当たり次第に。
そうして出来上がった世界は、しかし、法則も秩序もあるのかどうだか良く解らない、実に酷いものであり――基礎の数字と基底の文字を諸共に、異なる二つの言語に寄って肯定の意が示されたあの卓上遊戯風に言えば、それはこんな風な代物だった。
即ち――粗雑にして俗悪なる、山と積もった出来損ない。
もしこれが、もう少しマシな造物主の手に寄るものであれば、速やかに処分してしまったに違いない――事実、途中まで私もそうするつもりだった――しかし、生憎と言って、私は少しもマシな造物主等では無かった。女々しくも未練がましく、後腐れも垂々に、その世界を無碍にしてしまうのが惜しかった――もう少し正直に言えば、その結果として私の労力が、私自身が、無駄になってしまうのが口惜しかった。認め難かったのだ。
そこで私は、世界をそのままにする事とした――見苦しいのは承知の上。潔さとも無縁な事も。出来不出来は造った本人が一番良く解っている、説教ならば間に合い済みだ。
それでも敢えて、敢えて言って置くとするなら――そんな名も無き世界に対して、私が心を砕いた事は、紛れも無い事実である。それがどれだけの効果を及ぼしたか、それが誰の為であったかについての方は、まぁさて置くとしても、事実は事実。変えようは無い。
それに、もしかしたら、という話でもある――そう、もしかしたら、私が気付いていない何かに、何か重要な何かに、誰か彼かが気付く可能性だって無い訳が無く、そして、世界には子供達が暮らしている――私の鏡写し、と呼ぶのも痴がましい程には純粋な、造られる以前の危機も知らず、こんな主を信じ続けている子供達が。幸いにも親に似なかった彼等が、その何かの解答を、私の成果を見付けてくれるかもしれない――都合の良い話だが、期待を、希望を抱いて何が悪いというのか。
どうかお忘れなき様に。我々は決して孤独では無いのだから――なんつって。