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現代書記  作者: 赤木梓焔
第壱章
3/26

壱ノ壱

「結構埃がたまっているなあ……」

 右手にはたきを持ち、口にはマスクをつけたカグツチは、事務所の本棚を掃除していた。


 探偵とは名ばかりの、何でも屋のカグツチだが、低料金で仕事をこなしているため、意外と依頼が多く事務所にゆっくりしていることがない。

 今日は珍しく外出する仕事がないので、朝からパソコンで書類を作成しながら、事務所の中を片付けていたのだ。


「あれ、こんなところに入れていたんだ……」

 カグツチは、はたきを動かしていた手を止め、本棚の中から一冊の分厚い本を取り出した。その本の背表紙には『古事記』と書かれている。


「懐かしいな……父さん、母さん」

 本を手にしたカグツチはゆっくりと両目を閉じる。その瞼の裏に懐かしい景色が浮かび上がってきた。


**********


「ホギャア、ホギャア、ホギャア」

「ああああああああっっ」

「イザナミーーー! しっかりしろぉぉぉ!」


 まだ世界に「日本」が生まれる前。

 海岸の砂浜で、「国産み・神産み」を行っていたイザナギとイザナミに不幸が訪れた。

 一人の赤ん坊がイザナギの体から飛び出すと同時に、イザナギの体が真っ赤な炎に包まれる。

 傍で見守っていたイザナギが慌てて火を消したが、イザナミは荒い呼吸を繰り返すだけ。

 そのイザナミの横で、全身を炎に包まれた赤ん坊が元気よく泣いていた。

 この赤ん坊こそ、森羅万象の神の一人、火の神として生まれた「火之迦具土神ひのかぐつちのかみ」……カグツチのことである。


「おのれー! よくもイザナミをっ」

 いつもならイザナミから生まれた神を抱き寄せ喜ぶイザナギだが、瀕死の火傷を負ったイザナミを目の前にして、我を失う。

 拳10つ分の長さがある十拳剣とつかのつるぎ・「天之尾羽張あめのおはばり」を腰から抜くとカグツチの体を切りつけた。

 カグツチの体は大きく裂け、噴き出した血から多くの神が生まれる。

 それでも怒りの治まらないイザナギは、海にカグツチを投げ捨てるとイザナミを抱え、自宅に戻っていった。


 日本の歴史書「古事記」では、カグツチは殺されていることになっているが、彼は生きていた。

 この時、イザナギとイザナミに「国産み・神産み」を命令した、神をまとめる「最高神」が瀕死のカグツチを救う。

 九死に一生を得たカグツチは紆余曲折を経て、この現代で生活をすることになったのだ。


**********


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