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現代書記  作者: 赤木梓焔
第参章
19/26

参ノ四

「後は、あの人達が来てくれるといいね」

「ああ、伝えたいことは伝えた。後はあの人達次第だな」

 俺とアルテミスが不安そうに話をしている中、進がギターケースから水色のエレキギターを取り出した。

「おっ、アレはフェンダー・ムスタングだな」

「一目見ただけで分かるなんて、さすが店長」

 進達の準備を眺めていた『ダカーポ楽器店』の音石(おといし店主は、進のエレキギターを見て、即座に言い当てた。

「しかもあれは65年再現モデル。恐らく10万円前後するんじゃないか?」

「えーっ!? ギター一つでそんなにするのー? 私の好きなワインが20本も買えちゃう」

「お前、そんな自分中心な計算しか出来ないのかよ」

 音石店主が即席鑑定をしている横で、進のギターの価値を自分の好きな物に換算しているアルテミスに、カグツチは冷ややかな視線を送った。


 なぜ進がそんな高級なギターを持っていたかというと。

 進の祖父はエルビス・プレスリーに憧れてギターを始めた。

 そして進が3才の時、祖父が物置小屋に置いていた古いギターを見つけて、以来、進は祖父からギターを教わった。

 自分と同じ趣味を持った進に祖父がギターをプレゼントした。

 祖父からも思いを大事にしたい――進がギターを止めたくない、もう一つの理由だ。


 楽器店の店前で演奏の準備が出来た進達がチューニングや他の楽器と音を合わせ始めると、その音を聞いた人々が少しずつ集まり始める。

「進達はどんな曲を演奏するのかな?」

「んー、中学生なら人気アイドルの曲じゃない?」

「それか今人気のフォークデュオってとこか?」

 進が軽音楽部でギターを演奏することは聞いていたが、どんな曲を弾くのか聞くの忘れていた。

 アルテミスの言うとおり、アイドルか人気アーティストの曲だろう。

 全ての準備を終えた進がマイクの前に立ちメンバーの紹介と挨拶を始める。

 進に呼ばれたメンバーはそれぞれの演奏テクニックを披露しながら、観客に挨拶をした。

 観客は二十人程度だが、メンバーが紹介されるたびに、暖かい拍手を送った。

 メンバー紹介が終わり、観客の拍手が落ち着いたところで、進が話はじめた。


「それでは聞いてください。Crossroads――」

 そして――進の持っていたエレキギターに繋がれたアンプから、ギュン、ギュンと軽快な音が鳴り響いた。

「すごい……これ、Creamの曲じゃない」

「アルテミスこの曲知っているのか?」

 進の演奏を聞いたアルテミスが目を輝かせながら話し出す。しかし、俺は誰の曲なのかさっぱり分からない。

「うん、1960年代に人気だったイギリスのロックバンドだよ。あ、カグツチって英語苦手なんだもんね」

「馬鹿にすんなよ。俺だって中学生くらいの英語ならできるぞ」

 アルテミスの言葉にすこしムカついて、膨れたような返答をするカグツチ。

 しかしアルテミスはそんなカグツチを軽く無視して、流暢な発音で英語の歌を口ずさんでいる。

 演奏が始まると懐かしい名曲とあって若い人だけではなく、年配の人達も演奏を聞きに集まってきた。

 観客の中には音楽に合わせてリズムを取り、踊りだす人まで出てきた。


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