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現代書記  作者: 赤木梓焔
第弐章
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弐ノ伍

 洞窟の中は湿っぽくかび臭い匂いが漂っている。足元の岩にはこけのようなものが生えていて、気をつけないと足を滑らせそうだ。

 左手に灯した火の灯りを頼りに洞窟の中を進んでいくと、周りからキキキッと何かが鳴くような声が聞こえる。


「スナノオの言うとおり、あちこちに魑魅魍魎がいるようだな」

「ああ、しかし襲ってくる気配はないな」

 洞窟の中にいる魑魅魍魎は、カグツチとスナノオを見ているだけで、近寄ってくることはしない。

 むしろ2人を警戒して、いつでも逃げるような感じだ。

 こうして2人が進んで、しばらくした後。

 カグツチ達は今までの苔が生えている道とは違い、広々としていてわずかに霧が立ち込めている場所に出る。

 足を止め辺りを見渡すと、二人の方をじっと見つめている人物に気づいた。


「あれは、母さんじゃないか?」

「ああ、俺もなんとなくそんな感じがする」

 2人が視線の先にいる、真っ直ぐな長い黒髪をした、白いを着ている女性がイザナミであるかどうかを話していると、その女性は2人に近づいて話しかけてきた。


「そのイザナギに似た鋭い眼差しはスサノオか?」

「か……母さん! そうだよ、スサノオだよ!」

 イザナミから名前を呼ばれたスサノオの目には涙が滲んでいる。しかしその顔は、母に会えた嬉しさで笑顔が浮かぶ。

 イザナミはスサノオに少し微笑みながら、ゆっくりと二人に近づいていく。そしてスサノオの隣にいるカグツチに気づくと、少し目を細めた。


「それから、スサノオの隣にいる赤い髪はカグツチだな」

「そ……そうだ」

「よく覚えている。お前を産んだ時にお前が発した炎で私は傷つき、そして その傷が元で私は死に、この黄泉の国へと来てしまった」

「う……うう」

 イザナミの言葉に、自分が生まれたことでの罪悪感を思い出し、カグツチは俯き、声を失う。

 するとイザナミは、カグツチの前まで来ると両手を伸ばし、カグツチの背中にまわす。

 そしてカグツチのことを抱きしめながら、耳元で優しくささやく。


「お前は火の神として産まれただけだ。もう自分を責めることはない。私はお前の事を恨んだことは一度も無い」

「か……母さん……!」

 イザナミの言葉に、カグツチの目から涙が溢れ出る。

 イザナミは、両手で顔を押さえながら泣きじゃくるカグツチの頭に手を伸ばしながら、優しく撫で続けた。

 その様子を横で見ていたスサノオも涙ぐみながら、良かったなと、呟いた。


「また、会いに来てもいいですか?」

感動の再会が落ち着いた頃、カグツチはイザナミに問いかけた。

「勿論だよ。二人とも、いつでも遊びに来るがよい」

「ああ、今度は美味しそうな土産を持ってくるよ」

「フフッ、楽しみにしているよ……ただし、桃の実はいらないがね」

「持っていかねーから、そんなの」

 快諾した後、スナノオに冗談を言うイザナミと、イザナミの言葉に突っ込みを入れるスサノオ。

 しばらく笑い会った三人だが、やがて別れの時間が訪れる。

 カグツチとスサノオはそれぞれイザナミと抱擁したり、握手を交わした。


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