第7話 初めての授業
遅くなってすいませんでした。
ではでは、どうぞ!
昼食後、現在居るのは魔法学教室。
あの後、ロイと分かれてミルと共にここにやって来た。
教室の中はまだ教授が来ていない事もあって(ここでは専門的研究をしている教授が授業をするようで教授=先生と言う事らしい)周りはかなりザワザワしている。
「魔法学の授業は、基本的に魔法の実践について教えてくれるのよ。コツを教わった後に、実際に試せるようになっているの。だから、この教室にある物や教室の壁や床は宮廷魔術師達の半永久保護魔法で護られているの」
「半永久保護魔法?」
「えーっと、確か大気中の魔力を吸い取って稼動している防御魔法を掛けてあるの。魔法式が弄られない限り永遠に動き続けるらしいわ。魔法を解く事が出来るのは教授やそれに近い大魔術師だけなの」
「へ~、凄いんだね」
「今の私達には不可能な事だけどね。将来それが理解出来る位になれたら良いな」
そう言うミルの横顔は、夢を見ている様に幸せそうな顔をしていてきっとそうなった時の自分を想像しているのだろう。
その時、教室の扉を開いて白髪で同色の長い髭を湛えた老人が入って来た。
周りの生徒は先ほどが嘘の様に静かになっていた。
老人はゆっくりとしかし、確りとした足取りで教卓に立った。
「オホン、皆、揃っておるかな?」
そう言って周りを囲む大学の様に並んでいる机に付く生徒達をグルッと見渡す。
不意に見渡すのを止めたと思うと、視線が噛み合った。
「ほう、君がこの学院始まって以来の複数の特待生枠を取ったマミ・オウカインじゃな?」
顎の髭をゆっくりと撫でながら視線を合わせたままで声を掛けてくる。
「は、はい」
「編入生として入って来たとは言っても、周りの生徒と一ヵ月程しか変わらん。その分学べば直ぐに追い付く事が出来るじゃろう。努力を怠らん事じゃ」
「はい」
「良い返事じゃ。期待しておるぞ?」
そう言って、目を細めてホッホッホッと笑う老人は意外にお茶目な性格をしているようだ。
すると隣からミルが補足として説明してくれた。
「あのおじいちゃんは、魔法学教授のスウィン・ドルマ教授よ。ドルマ教授は学院教授をしているけど本来は宮廷魔術師として認定された大魔術師なの。魔法に関わる事で分からない事はないと言われる凄い方なの」
「そうなんだ、全然見えない。凄く優しそうな唯のお爺さんに見える」
「まあね」
「では、今日は初級火球呪文ファイアボールの実践を行う。番号の順番に前に来てこの鉄人形に当てるのじゃ」
そう言って、ドルマ教授が指を鳴らすと人位の大きさの鉄製の人形が出て来た。
「この鉄人形は火系の保護魔法が施されておる。一年生の力では傷一つ付ける事は出来んじゃろうから思いっ切りぶつけるが良い」
ドルマ教授の指示で番号が一番の人が前に出た。
見事成功して、人形に当てると次々に生徒たちがクリアしていく。
「あ、私の番だ。行って来るね!」
ミルがそう言って前に出て行くと、鉄人形に向かって手を出した。
「ファイアボール!」
他の生徒よりも大きな赤い火球が人形に当たって消えた。
喜びながら、帰って来たミルは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
「見た?結構良かったと思うんだけど」
「他の人より、大きかったよ」
「そう?」
本人は分からなかった様で、人より大きな火球はその分威力があるようだ。
そうしている間に、クラスの大半の人が試してほぼ全員が成功したらしい。
私の番号は編入した事から一番最後になっているらしく一番最後に順番が回って来た。
やはり、突然の編入生の実力が気になるのか一同が注目する。
順番になって前に出ると、ドルマ教授がコツを教えてくれる。
「魔法とは、大気中に存在する精霊よりも小さな大気と同化した微精霊から魔力を引き出して発動するものじゃ。最も必要なのは思い描く事じゃ。心の中に思い描いた事を微精霊が感知し魔力を出してくれる。その魔力に乗せて自らの魔力を放出するのじゃ」
簡単に言うなら、まずイメージをしてどんな事をするか思い描いたら、微精霊が火を出してくれるからそこに向かって油を吹きかけて火を吹く様な物らしい。
頭の中に自分の掌から炎の塊が飛ぶ光景を想像する。
すると周りから支えられている様な感じがしてきた。
どうやら、これが周りの微精霊から魔力を与えられている情況の様なので、前に向かって手を出してそのまま力を押し出すようにしながら呟く。
「ファイアボール」
すると、掌から他の生徒と違って青白い炎が放たれ鉄人形に向かって飛んでいく。
鉄人形に当たった瞬間に、パリンとガラスが割れるような音がしたと思った時には鉄人形の腹部に風穴が開き、貫通した青白い炎はそのまま教室の壁にぶつかって鉄人形と同じ様に風穴を開けて教室を突き抜けていった。
「…」
一年生では傷一つ付ける事が出来ないと言われた鉄人形に穴を開け、半永久的にそれを維持する教室の保護魔法も突き抜けた初級呪文。
誰が見てもその力が異常な事など丸分かりだ。
鉄人形も壁も穴の周りには青白い光が移り音も無く燃えている。
「マミさん…すまんがちょっと付き合ってくれるかのう?」
「え、はい」
「今日の授業は仕舞いじゃ。一応、壁には魔法を掛けて置くが決して触れんようにの」
そう言うと、ドルマ教授は指を再び鳴らし鉄人形を消すと教室から出たので、私もそれを追いかけて教室を出た。
次回をお楽しみに!!