第3話 精霊
どーも、お気に入り登録有難う御座います!
頑張って更新して行きます!
「精霊…?」
「精霊を知らないのか?精霊は世界の自然物質の象徴の様な存在だ。大抵、精霊は一つの物に従属し、それを助ける。特に人に宿るものを守護精霊と呼ぶ」
淡々と男の人は説明してくれた。
そして、続けてこんな事も言った。
「普通、精霊は宿り主以外に見えない。また、他人に懐く事は無い」
「え、でも…」
そう言っている間にも男の人の精霊は私と男の人の間を行ったり来たりしていた。
「そう、こんな事はありえない。お前の言う事が正しいならば、これは驚くべき事だ」
男の人は腕を組んで暫く考え込むと、こちらを向いた。
「一先ず学院長の所に来て貰おう」
「え、学院長?どこの?」
「学院長は俺も通っているベリュンヘル王立学院の全てを取り仕切っている。因みにここは、この学院の北に位置する森の中だ。詳しくは分からないがお前にも何か事情があるのだろう。後は学院長に話しをすればいい」
「えっと…その学院では何を学べるの?」
「学院では、精霊学や魔法学等多岐に渡って教えている。俺は戦闘学で剣等の武器の扱いを習っている」
「あと、私、桜花院真美。貴方は?」
「セドラス=クレドルス。セドラスでいい…お、オゥカィン?」
「あ、こっちで言うと私、真美桜花院かな?真美で良いよ。セドラス」
「分かった、マミ。取り合えず学院へ向かう。歩きながら話せる事は話そう」
「うん」
そう言って男の人…セドラスと学院に向かった。
鬱蒼とした森の中、整備されていない獣道みたいな所を2人(と一匹?)で歩く。
時々、質問をしてそれに応えて貰いながらゆっくり歩いた。
セドラスは私の歩調に合わせてくれるため、有難かった。
「精霊って人によって違うの?」
「ああ、精霊は多くの種類が存在している。主に火・水・風・土に属す。稀に自然界の物や空気中、特別な空間にいる光・闇や時・植物等を司る精霊に気に入られて守護精霊としている者もいる。しかし、今まで精霊を2体以上指揮した者はいないと言われている。」
「それって人の性格によって変わったりするのかな?」
「どうだろうな。特別な方法を用いなければ、他人の精霊を見る事は出来ない。つまり精霊術に関しての研究は進んでいないし、精霊についての研究も殆ど進んでいないと言う事だ。しかし、精霊の中にもそれぞれの格が存在し、より強い力を持つ上位の精霊は人に姿を見せたりする事も可能で…そういった精霊は、どれも人に近い形をとる事が多いと聞く」
「精霊っていつ守護精霊になるの?」
「基本、精霊は母親の胎内にいる時に子供を選定し、生れ落ちたその時から守護する。稀に生まれてくる前に他の精霊に気に入られたり神によってその定めを受けた者は、成長してから精霊を持つ事もあるそうだ」
「…私いないんだけど」
「…詳しくは学院長と話してくれ」
「…うん」
暫らく問答が続いてはいたが、質問する事が思い付かなくなった上に、学院長に聞けとバッサリと切り捨てられてしまった事によって、また無言になって森の中を歩いた。
森を抜けると正面に巨大な建物が立っていた。
学院は途轍もなく巨大で、五階建て以上あるように見える。
庭園は綺麗に整備され、噴水が月にキラキラと輝い花々が活き活きしている。
セドラスに連れられ学院に入り、廊下を歩き階段を何度か登る。
突き当たりの部屋の扉をセドラスがノックした。
「失礼します。学院長」
「あら、セドラス、勤務時間外はおばさんで良いわよ。こんな夜遅くにどうし…その子は?ま、まさかさらっ「森の中で迷っていた。事情があるようなので連れて来た」…そう」
「そう…可愛い子ね。私はこの学院の学院長、ミレーヌ=クレドルスよ。貴方の名前は、お嬢さん?」
「私、真美桜花院です。マミで良いです」
「マミね。よろしく」
そう言って手を差し出すミレーヌさんに手を出して握手をした。
「で、事情って?」
「俺はこれで…」
「待ちなさい、貴方も聞いて行きなさい」
「…何故だ?」
「貴方が連れて来たのよ?最期まで責任持つのは当然でしょう?」
「…」
ミレーヌさんに言い負かされたセドラスは溜め息を吐きながらソファに座った。
ミレーヌさんはこちらを向いて先を促す様に手で合図した。
「あの…突然こんな事言い出して変な奴だと思われると思うんですが…私、別の世界から来たんです」
「!…」
「そう…大変だったわね」
「信じて…くれるんですか?」
「もちろん。貴女は嘘を付いているようには見えないしね?こう見えても私、人を見る目はあると思っているのよ?」
目を見開いて硬直するセドラスと違って、ミレーヌさんは分かっていたかのように落ち着いてそう言い私の頭を撫でてくれた。
それが余りにも優しいから目を閉じてその手に擦り寄った。
「本当に可愛い…今日は私の所に泊まりなさい。後の事は私が何とかするから」
「有難う御座います」
ギュッと抱き締められてミレーヌさんの大きな胸に顔を埋めながらそう言うと、満足した様にミレーヌさんはソファに勧めてくれた。
「で、他にもあるんでしょ?」
「その事なんだが…マミには守護精霊がいない」
「まぁ、他の世界から来たんですもの。当然と言えば当然ね」
「それだけじゃない、マミにはどうやら他人の精霊も見えるらしい。その上、俺の精霊が初対面のマミに懐いている」
「へぇ、それは凄いじゃない。マミちゃんに手伝って貰えば長い間進まなかった精霊についての研究も進むかも知れないわね。それに、マミは精霊に気に入られ易いんじゃないかしら?さっきから私の精霊もマミちゃんに懐いているもの…ねぇ?」
先程、ミレーヌさんに抱き締められた時から私の体の周りをクルクルと飛び回っている赤い火の玉みたいな精霊がいた。
森の中で最初に会ったのが、火の精霊の持ち主だったらもしかしたら火の玉を見たと思って気が動転していたかもしれない。
「はい、セドラスの精霊は涼しくて気持ちいい風の精霊かな?ミレーヌさんの精霊は温かくて包み込んでくれる様な火の精霊?」
「ええ、どちらも合っているわ。本当に興味深いわねマミちゃん。ねぇ、貴女さえ良ければこの学院で学生として通ってみない?」
「良いんですか?」
「ええ、その辺は私に任せなさい!あ、でもその為にはこの学院は王立で国に生徒全員の情報を送らないといけないから…一度国王陛下に直接謁見して詳しく話した方が良いかもしれないわね」
話が急に発展し過ぎて頭の中が変になりそうだった。
でも、見ず知らずの他人である私にミレーヌさんはこの世界での私の立ち位置を作ろうとしてくれている。
それが堪らなく嬉しかった。
「有難う御座います、ミレーヌさん。宜しくお願いします」
「良いのよ。明日にでも陛下に謁見しましょう。今日はもう休みましょう。私の部屋は敷地内の女子寮にあるの。行きましょう?」
「…俺はもう良いか?」
「ええ、いいわ。また何か用事があったら呼ぶから宜しくね?」
「はぁ…」
「セドラス、ありがとう」
セドラスは照れた様に頬を搔いて後ろを向くと部屋を出て行った。
その背中を見送って、ミレーヌさんの帰り支度を手伝った。
「さ、私達も行きましょうか?お風呂とか入りたいでしょ?」
そう言われてみれば、今日は色々合って森の中を走ったりしたため汗もかいていた。
「はい」
そう返事して、ミレーヌさんに促されながら部屋を出て行った。
外に出ると、月の光が優しく私を包んでくれている気がした。
次回も宜しくお願いします!