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第10話 武器

アクセス数8000突破!! 有難う御座いまーす!

















「冒険者ギルドに入ってチームを組んだのはいいけどさ、マミって武器持ってるの?」


ロイのその言葉で、ギルドの帰りに街の武器屋に来ていた。


「まぁ、どうせマミって実戦型戦闘学取ってるんだし、自分の武器は必要だもんね?」


「…実践型戦闘学って自分の武器使うの?」


「持ってる人はね、持ってない人は用意された物を借りてするらしいよ?特定の武器に慣れずに色んな武器を使うって人もいるらしいけどね」


「まぁ、何にするかは見て決めてもいいと思うわよ?マミは魔法も精霊魔法も使うんでしょ?なら、杖とかの選択肢もあるし、人によっては魔法を使う人でも剣を使う人もいるしね」


ミルとロイが教えてくれているが実はミレーヌさんの助言で取り合えず今は魔法学以外は参加していないので、あれ以来他の科目は習っていない。


他の科目ももしかしたら同じ様な事を招くかもしれない。


そろそろ、参加しても良いと言われているので準備もしなければならない。


「じゃ、取り合えず一通り見てみましょ?」


「うん…沢山あるね…」


店内をパッと見ると壁際一面や棚に膨大な武器が飾られている。


「人によって好みや戦闘スタイルが違うしね。あ、ちなみに私は魔術師兼盗賊よ」


「盗賊!?」


ミルの言った言葉に驚いて、ミルを見た。

ミルはこんな可愛らしい顔をして他人の物を盗んだりする犯罪者だったの?


「先に言っておくけど、他人の家に忍び込んで物を盗ったり掏りをする盗賊と一緒にしないでよ?盗賊って言うのはギルド所属のジョブ(職業)の一種で、ダンジョンとかの宝物や珍しい古代遺産を手に入れるために指先を器用な人がなったりする物の総称よ」


「僕は魔法剣士だよ~」


「ジョブって自分で決めるの?」


「そう、大体の人は自分で選ぶのよ」


「ふ~ん。私どうしようかな~」


そう言って店の中をウロウロと歩き回りながら武器を見ていく。

ハンマー(槌)・大剣・ロッド(杖)・ボウガン・弓…etcと沢山並んだ武器やそれに類する物が無造作に置かれていたり、丁寧に置かれていたりするのを見て回る。


「マミ!こんなのどう?」


そう言ってミルが見せたのは短剣みたいだった。


「う~ん…ちょっと…」


「そっか~」


言葉を濁して返すと、気の抜けた返事をしてまた探しに向かうのを見て同じ様に探す。


「?」


そうすると店の丁度角に当たる場所、棚と棚の間で槍が籠に入って大量に置かれている後ろに無造作に置かれた装飾の無い黒の鞘に入った白い持ち手の小剣が目に入った。

何か惹かれる物を感じて、手を伸ばして拾い上げ、店の中を照らす光に翳すと柄に付いた黄色い宝石がキラキラと光を乱反射する。


「綺麗…」


周りにある武器の中にも美しい造形美と言える物も幾つかはある。

しかし、この小剣の美しい持った武器は他には無い様に思える。

その時、店の奥から店主らしい小さな髭もじゃのおじさんが出て来た。

そのおじさんは、小さい割りに全身が筋肉質で分厚い皮の手袋をしている。

おじさんは、カウンターに着くと小さな声で「いらっしゃい」と言うと、私の方をふと見ると眉尻を下げた。


「嬢ちゃん、悪ぃんだがその剣は売りもんじゃねぇんだ」


「え?」


「どう意味?おじさん」


ミルがおじさんに言うと、おじさんは更に困った顔をした。


「その剣はな、抜けねぇんだ」


「マミ、ちょっと貸して~」


ロイは私の返事を聞く事無く剣を私の手から奪うと強く柄を強く握り締めて引き抜こうとした。


「ん~…っはぁ、抜けないや」


「何なの、この剣?」


「この剣はなぁ、この鍛冶屋の創設者、まぁ、俺の師匠の親父さんだったらしいんだが、その親父さんが打った剣でな。親父さんはこの剣を打って直ぐに死んじまったらしい。文字通り魂を込めた一品って訳だ。だが…今までこの剣を何度も売ろうとした。師匠も親父の剣を世に送り出そうとしていたんだ。それでも、誰もこの剣を抜く事の出来る奴は一人も今まで表れる事は無かったんだ。棚の中に閉まって鍵を閉めていた筈なんだが、どうやって出したんだ?」


おじさんはカウンターを出て棚をガチャガチャと言わせ鍵が掛かっているか確認しながら言った。


「私が見つけた時はそこの棚と棚の間の槍立ての後ろに落ちてました」


「う~ん…最近出した覚えは無いんだがなぁ…」


ロイから再び剣を手にした私は、鍔に付いた黄色い宝石を撫でた。


「こんなに綺麗な剣なのに…残念だなぁ」


諦め切れずに柄を握ると軽く力を込めてみた。

すると、ロイがあんなに力を込めて抜こうとしていたのが嘘の様にスルッと剣は抜け、その抜ける様に白い剣身を覗かせた。

黄色の宝石がキラッと内から輝いて、私の周りを温かな小さい光が飛んでいた。

見た事も無い色合いの小さな精霊は嬉しそうに飛び回り、擦り寄って来たり飛び回ったりした後に、宝石の中に戻って行った。

ふと、おじさんに眼を向けると、おじさんは涙をボロボロ流しながら私によって来たので、私は剣を手渡した。


「親父さんの生涯最後の一品…師匠でさえ敵わないと言う程の至高の一振り…スゲェ!絶対俺はこれよりもスゲェモンを作ってやる!」


おじさんはガハハハと滝の様な涙を流しながら笑って、剣を掲げると宣言した。
















やっと落ち着いたのか、おじさんはふぅと一息吐くと、私に剣を差し出してきたので受け取って鞘に納めた。


「この剣は持っていってくれ。これを抜けるって事はきっと、お前さんに何かがあるんだろう。そんなお前さんが持っていた方がその剣も嬉しいだろう。金はいらねぇ」


「でも…」


「いいんだ。お前さんは俺に生涯の目標を作ってくれた。それは俺にとって城を買えるほどの金よりも尊い」


今までが嘘の様に真髄な目をして言うおじさんは、吹っ切れた様な顔をしていた。


「分かりました」


「そうしてくれると助かる」


ニィっと笑うおじさんに笑みを返すとおじさんは声を上げて笑った。


「マミ、そろそろ行くわよ。早くしないと寮が閉まっちゃう」


「え、もうそんな時間?…って大変!?」


ミルの声に反応して時計を見ると時間は余り無かった。


「じゃ、おじさん。また!」


そう言って店を駆け出そうとした時、おじさんに呼び止められた。


「お、嬢ちゃん」


「何ですか?」


「まだ命を奪った事が無いだろう?」


「え?」


おじさんは先程よりも真剣で冷たい目を向けて私に言った。


「お前さんも冒険者だろう?なら少なくとも動物の命を狩る事はあるだろう。もし、そんな風な人生を歩んだとしても決して殺しに慣れるな」


「おじさん…?」


「いいか、殺しに慣れたら最後だ。もし、殺しに慣れる時が来たらもうそれは既に人じゃない。獣と一緒だ。怖くていい、怯えてもいい。殺す事はいい事ではないと覚えててくれ。それを忘れた時、武器は応えてくれなくなる。だが、慣れるなとは言っても殺すなとは言わない。躊躇する事で仲間を…そして、自分を危険に晒すと元も子もないからな」


「マミ!急いで!」


ロイが呼ぶ声が聞こえて、私は慌てた。


「う、うん!…おじさん、急がなきゃならないから!」


「おう」


戸を閉めて駆け出そうとした時思い出して戸を再び開けると、おじさんは驚いた様な表情をした。


「おじさん、私忘れないよ。おじさんの言葉。ずっと覚えてる…じゃあね!」


今度は振り向く事無く、二人を追って走った。

暗くなった街を駆ける時、空には満天の星が、街には街灯が輝いていた。
















「まぁ、あのお嬢ちゃんなら大丈夫か。真っ直ぐな目をした珍しい娘だったな…」


ふぅとカウンターの椅子に座って、息を吐いた、武器屋の店主は頬杖を突いて入り口を見やった。


「師匠、アンタの親父はスゲェって言ってたの信じてなかったけど…今は信じるぜ。嬢ちゃんにも、この先幸運が訪れるよう…」


店主はそう呟くと、その声は店の中の閑散とした空気に溶けて消えていった。













武器屋は既製品の売買とオーダーメイドの発注をしているので、店の者全てが店で作られた物とは限らない設定です。


ではでは、また次回。

出来るだけ年内にもう一話は上げる様にします!

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