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佐野さんは突っ走る

サノハビッチ2 ~いつかはメリークリ○○ス~

作者: 中澤 悟司

ちょうどクリスマスなので、ノリだけで書いてみました。


前提が要るような話ではありませんが、佐野さんと香山くんの出会いとかが気になった方は、過去作からどうぞ。

 秋が過ぎ、冬になった。最近は秋が短い、先週まで夏日だったと思ったら、今週は朝夕の冷え込みが厳しいとか、体調がおかしくなりそうだ。というか、おかしくなった。某懐メロでは無いが、小さい秋とか言いたくなる。


 そんな異常気象が例年で平常になりつつあるなか、俺の周囲の異常も平常になりつつあった。


「なー、佐野ちゃん、また俺とキモチイイことシに行こうよ」

「私は気持ち良くなかったですから結構です」

「そんなにずっと邪険にされてるのに、佐野ってばMっ気あったんだね。良い店紹介するよ?」

「SMプレイは興味ありませんので、悪しからず」

「リカー、俺お前のことマジで好きだぜ?」

「貴方が好きなのは私の体と財布だけでしたよね?」


 げ、コイツ体目当てだけじゃなかったのか。


 何故か、そう、何故か分からんが、学食で塩対応を続ける俺の側から、サノハビッチこと佐野さんが離れようとしない。敢えて邪険にしているつもりはないが、かと言って親しげにしているわけでもない。何故くっついてるのか謎である。

 佐野さんは、俺の彼女というわけではない。いわゆるモテ女、とでもいうのだろうか、誰とでも気軽に付き合う、そういう女性である。俺、大分美化して言いました、ハイ。まあ、やってたことは呼び名に恥じない?くらいのことだったらしいです。知らんけど。


 が、問題はそっちではなく。


 そんな佐野さん目当てでチャラ男が次から次へと湧いてくるのだ。


 佐野さん絡みで殴ってきた奴をきっちり締めたことが広がったのか、俺の食事を邪魔するような馬鹿は居なくなったが、それにしても真横で延々とコレをやられるのは精神的にクるものがある。


 飯食う場所変えれば良いじゃないか、と思われる諸兄もいらっしゃるだろう。勿論俺も考えなしのアホではないと自負しているので、違う場所の開拓に努めたこともあった。なんで俺がこんな目に、と思いつつも、御足労したわけである。

 が、幾つかの店で同じ状況になり、他の客の迷惑だからと実質出禁を食らったことに加えて、コスパで勝るものがなかった結果、元の定位置に戻ってきたというわけだ。ホント、繰り返すが俺は悪くないはずなのに、何故こんな目にあうのか、理不尽が過ぎる。


 じゃあ誘引要素の佐野さんを遠ざければいいんじゃね?とおっしゃる諸兄も、勿論いらっしゃると思う。私もそれは考えたが、横や前に座り、時々話しかけてくる程度で、佐野さん自身は特に何もしていないのだ。若干ストーカー気質な気もするが、別に隠れてコソコソ覗くわけでなし。堂々とやれば良い、というものでもないだろうが、自分が説教した手前、あまり理不尽に突き放すのもなぁ、と思ったりもするのであり。


 要は、このチャラチャラチャラチャラとゴキブリのように湧いて出てくるチャラ男が鬱陶しいだけなのだが、これがまた、1匹1匹はそこまでしつこくないのである。意外とあっさり去っていくのだ。これまた何故か黒長髪清楚系風女子を続けている佐野さんに、チャラいのはそこまで興味は惹かれない、ということなのかもしれんが。いずれにしろ数が多い、とにかく多い。あー、もうホイホイならまとめてバル○ンしてぇぇぇぇ。


「貴方と出会って分かりましたけど」


 チャラ男の相手がひと段落ついた佐野さんが、少し冷めたであろうペンネだか何だかを食べながら言った。


「彼らの言葉は軽いですね」

「まあ、重くは聞こえないね」


 重かったらチャラ男じゃない、何だ、ジャラ男?どっちにしろ小銭みたいな名前だな。


「貴方のは重いです」


 いや、別にそこまで想いは載せてないからね?うっとりしても違うからね?


「今までの男なら、これでコロッと騙されてくれたんですけど」


 あんたも結構黒いな。


「彼らは、自分に都合の良い部分しか見てくれません。私の悪い部分に向き合ってくれたのは、貴方が初めてでした」

「うん、それ前にも聞いたよ」

「嬉しかったので、何回でも言いますよ。貴方が『初めて』の相手だったんです」

「いや誤解を招くような表現はやめてもらおうか」

「誤解して欲しいです」


 うん、こいつも大概だったわ。


「そういえば、もうすぐクリスマスですね」

「そうだな」


 俺にとっちゃケーキとおもちゃの日くらいの認識だけどな。


「確か聖母マリアがキリストを産んだ日だと」

「それ結局24日なのか25日なのか未だに良く分からんが」


 俺の家ではイブにケーキ食って、当日朝にゲームソフトを貰って、そこから冬休み中やり込む、っていうのが定番だったな。


 というか、スーパーとかもう25日の昼頃には年末年始お正月モードに切り替わってるからな、あの切り替わりの潔さが良い。ハロウィンとかバレンタインとか、日程的に余裕があるから、余韻に浸れる余地もあるんだよな。余裕って大事。


「処女懐妊とか言うじゃないですか、あれ違うと思うんですよ。旦那と寝てないだけで、相手が誰か分からな」

「10億人のクリスチャンを敵に回すような発言は止めてもらおうか」

「私も貴方とはまだだから、今妊娠してたら処女懐妊?」

「絶対違うから。それこそ俺以外の誰かが父親だから」


 こんな処女がいてたまるか。


「あー、つまらないなー、もうちょっとさ、色気的なもの、何かないの?」


 真面目プレイは疲れたらしい。


「それ大抵男が言う台詞だから」

「じゃあ香山くん言ってよ」

「何故」

「私が言って欲しいから、他に理由要る?可愛い彼女のお願いなんだけどなー」

「だからサラッと誤情報を入れるのは止めてもらおうか」

「もう大学生なんだけどなー、義務教育の男の子じゃないんだけどなー」


 俺はカジュアル感覚で女性とどうこう出来るような強メンタルは持っていない。見た目だけならドストライクな女性を軽く口説けるくらいなら、俺もチャラ男になるわ。

 …いや、やっぱチャラ男はいいわ。


「そのうちキモいおっさんって言われちゃうよ?」

「的確に抉ってくるの止めてもらえます?」

「傷付いちゃった?じゃあ私が慰めてあげるよ、ほら」


 おいで、とばかりに佐野さんが手を広げる。すぐ隣でそれをされると、ついついフラっと行きそうになるくらい魅力的な女性ではある。


 だが断る!


「悪魔の誘惑には負けません」

「香山くん小悪魔っぽい方が好みなの?ちょっと時期外れちゃったけど、小悪魔コスしてこようか?」

「どうしてそうなる」


 チャラ男が消えたと思ったら、佐野さんのペースに巻き込まれる。俺の望んだ平穏には程遠いが、最近は、これも悪くないかな、と思ってしまう自分がいたり。

 学食のテレビに、コマーシャルが流れる。もう日が近いから、クリスマスバージョンばっかりだ。今年のクリスマスは、隣に誰か居るかな。


 もしかして…。


「そう言えばメリクリって連呼してるのってさ、ちょっと恥ずかしくない?」

「は?」


 何の前振りもなく、唐突にどうした?子供っぽいとか、そういう話か?


「だって、クリって言えばやっぱりクリ○○…」

「いやおかしいから!その発想おかしいから!」


 おっさんがセイント性夜、ってボケるくらい無いわ!


「えー、でもクリスマスに大学生カップルが一緒に過ごすって、やっぱそうなるでしょ。何?チューして終わり?彼女シラけちゃうよ、折角オシャレして、可愛い下着も着けてきたのに」

「それは佐野さんだ、から、じゃない?」


 いや、そうなのか?そういうことなのか?


「ヒヨった彼氏にちゃんと相手してもらえなくて、寂しくて人肌恋しくて仕方ないところに、いかにも軽そうなナンパ男登場よ。彼女取られて、彼氏残念」

「そ、それは創作物の話ではないのだろう、か?」


 うっかり(空想の)彼女を想像してしまうと強烈なダメージが。俺にNTR属性は無いのだ、勘弁して。

 チクチクと俺をイジってひとしきり満足したのか、佐野さんは『仕方ないなー』と言わんばかりに、俺に向かった。


「どうせ女の子はそんなこと考えない、とか思ってるんでしょ?そんなことないよ、好きな人相手なら期待しちゃうよ?」

「いやいやそんなエロ漫画みたいな話、あるわけ、ない、だ、ろ」

「ふーん、じゃあ、イブの日に確認してみる?」


 何を確認しろと言うんだ、この小悪魔は。

皆さんは確認できましたか?(何を)

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