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[TL]地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ  作者: 地底乃人M


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心からぬれた夜


 ベッドサイドの間接照明に浮かびあがる桃瀬の躰へ、静かに(おお)いかぶさる石和(いさわ)は、ゆっくりと前戯をはじめた。(たい)らな胸を、やさしく愛撫する。まだ触れてもいない股のあいだがしっとりするのは、桃瀬の呼吸が石和と連動しているからである。互いに興奮状態が(たか)まり、石和の指が股のあいだをさぐると、桃瀬は恥ずかしそうに表情を歪めた。いやらしい水音がして、背中がゾクッとする桃瀬は、顔が真っ赤になってしまう。


「……い、石和さん、いや……、わたし、もう……びしょびしょ……、あまり見ないで……」


「ふふ、すごくかわいいよ、理乃ちゃん。よく、ぬれているね。これなら、指を使わなくてもいけそうだ」


 石和は男性器にコンドームをつけると、桃瀬の膝に手を添え、「いくよ」と前置きした。雄々しい欲望を受けいれる桃瀬は、「ハァハァ!」と呼吸が浅くなるが、石和のぬくもりを従順に受けとめた。どんな表情をしてよいのかわからない桃瀬は、じぶんの手で顔を隠した。石和は、最中の顔を見られたくない乙女心を尊重して、手の甲にキスをした。「理乃ちゃん、だいじょうぶかい? 少し動くよ」「……は、はい」


 つなげた躰をゆさぶられ、不慣れな状態に痛みを感じる桃瀬だが、うまい具合に性感帯を擦られるたび、形容しがたい快楽にとらわれた。石和の腰つきは、次第に強くなってゆく。


「あっ、あっ、……んんっ! 石和さ……ん……!」


 余裕をなくして顔を隠しきれない桃瀬は、両腕をシーツへ投げだした。パイプベッドの軋む音が室内にひびく。……これが、石和さんの本気? ちがう……よね……? きっとまだ、手かげんしてくれてるんだ……。どんなときも、やさしいひとだから……。


 それなりに激しいセックスだが、苦しげに息を切らす桃瀬を気づかいながら緩急をつけて上下運動に徹する石和は、精神的に追いこむ真似はしなかった。ぬれすぎる桃瀬は、先に絶頂が近づくのがわかった。……だ、だめ、なんかきちゃう!


「石和さん、わたし……っ」


「いいよ。ぼくも出そうだ」



 石和は桃瀬の背中を抱きあげると、タイミングをあわせて絶頂を遂げた。石和の首筋にしがみついて肩をふるわせる桃瀬は、……ああ、石和さんの赤ちゃん、産んでみたかったな……と、一瞬血迷った。恋人のからだを両腕に包みこむ石和は、その耳もとでささやく。


「ぼくは、これっきりにしないよ」


「はぁ、はぁっ、……え?」


「理乃ちゃんの考えをおしえてほしい。ぼくといるときは、しあわせを感じてもらいたいからね」


 桃瀬をあお向けに寝かせる石和は、ゆっくり腰をひいた。濃密な時間を過ごすふたりだが、桃瀬はいまにも泣きそうな顔をして、じっと、石和を見つめた。……本当は、別れたくない……。このまま終わりなんて……、いや……。石和さんと、ずっといっしょにいたい!



「理乃ちゃん、愛してるよ」


「……っ!?(いま、なんて?)」


「ぼくは、きみを愛している」


「い、石和さん……(わたしも……)」


「ぼくたち結婚しようか」


「け、結婚……(え? プロポーズ!?)」


「どうか、ぼくの妻になっておくれ。いっしょに暮らそう」


「わ、わたしなんかじゃ、石和さんに、ぜんぜん……ふさわしくない……」


「なぜそう思うの? 年齢が? 職業が? ぼくがきみを好きになった気持ちは、そんなことでは変わらないよ」



 石和は、桃瀬の右手を持ちあげてペアリングをはずすと、左手の薬指に嵌めた。……これ、結婚指輪だったの? 同じく、じぶんの右手からペアリングを左手の薬指へ移す石和は、「返事を聞かせておくれ」と薄く笑う。……わたし……は……、わたしは……なんて云えば……。石和さんが好き……、大好き……!


「う、……うぇ~んっ」

 

 感情が抑えきれない桃瀬は、返すことばに詰まり、ボロボロと大粒の涙をこぼした。



✦つづく

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