凡百の長
俺が許せねーのはなあ、そういうとこだよ。なんでも知ってますって面して、自分の価値については飛んだ盲目ときた。
なあアンタ考えたことあるか。どうして俺らがアンタを守るのか、アホみてえな命令に従うのか、知ろうと思ったことはねえよなあ。
アンタにとってそれは当然のことだからだ。
疑問を挟む余地もないことだからだ。
アンタはそうして国の庇護を受けながら、その意味をまるで知ろうとしない。当然と受け止めたものの重さを、価値を、微塵たりとも理解しない。
俺たちはみんなアンタになりたかった。アンタと同じものを見てアンタと同じことをしたかった。だが不可能だ。だから不可能だ。俺たちは決してアンタの先には立てねえ。模倣することすら現実にはできねえ。アンタの先にはアンタしか辿り着けねえ。
わかるか、わからねえだろうな。
俺たち凡人が百集まろうが二百集まろうが、アンタ一人の描く未来に届くわけねえんだ。だからアンタは、アンタの見る先を知りたいと思う奴にとっては、百でも二百でも命を捨てて釣りが返ってくるような存在なんだよ。
わかったか。
わかったら二度と、こんなつまらねー凡人の前に立とうとなんて考えるな。
たぶん何かの短編にしようとした欠片だと思うんですが詳細不明。