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盲目乃者  作者: 結城貴美
第9章 FRIENDS WILL BE FRIENDS
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056 乗船

「いいね」ありがとうございます!

 食事の後、ヨマリー達は別の宿を取っているとのことだったので、目当ての船へ向かう小舟の乗り場近くで明日の待ち合わせを約束し別れた。そしてその後、フォスターは宿に帰るなり今まで我慢していた非難をビスタークへ浴びせた。


「リューナの面倒を見てくれた子のお兄さんに取り憑こうとか恩知らずにもほどがある!」

『部屋に戻るなりそれかよ』

「ずっと言いたかったけど外だったから我慢してたんだよ!」

『うぇーめんどくせぇー』


 フォスターの文句は続く。


「あと、俺が上の年齢に見られるってことは似てるお前もそうだったってことなんだからな!」

『俺は大人っぽかったんだよ』

「顔がそっくりだったってことはお前も俺も同じだよ!」

「お父さん、ヨマリーのお兄さんに取り憑くなんて言ってたの? ひどい!」


 先に部屋へ入り自分の肩掛け鞄をテーブルに置いていたリューナが近寄って来てビスタークを責めたところで、フォスターは彼女を見て動きが止まった。


「…………リューナ、ちょっといいかな」


 大袋の中から神の石の袋を出して、中から淡緑色の小さい石を取り出した。コップにその石を入れて水源石(シーヴァイト)で貯めた水差しの水を注いだ。


「これで口をすすいで」


 リューナの口の中は真っ黒だった。イカ墨のせいだろう。口の周りは気付いて食事の後に拭いてやっていたのだが、歯などの口の中まで真っ黒だとは思わなかった。リューナは言われたとおり口をすすいだ。コップへ入れた石は口浄石(ソーマイト)という口の中を清潔に保つ効果を水に付与する口神ソームスの石だった。口をすすぎ終わるとリューナの口の中を確認する。


「うん、もういいな。口の中が酷いことになってたぞ」

「そうなの?」

「イカ墨のせいで真っ黒に汚れてた。びっくりしたよ。女の子がそれじゃみっともないぞ」

『お前って母親みたいなところあるよな。小言が多いし』

「うるさい!」


 リューナにも声が聞こえていたのでふざけてこう言った。


「ふふっ、おかあさーん」

「せめてお父さんにしてくれよ……」

『やーい、お母さーん』

「お前ホントふざけんな!」


 ビスタークがフォスターの神経を逆撫でしたため怒りが再燃した。


「俺が寝てるときに勝手に移動して、ユヴィラに帯を巻かれて勝手な行動をされたらホント申し訳ないよな……」

「お兄さんの身体目当てとかほんっとうにお父さんって最低だね」

『言い方ァ!』


 ビスタークがリューナに慌てて突っ込んだ。

 

「だからさ……寝るときは俺の身体を縛って動けなくしたほうがいいかもしれない……」

「どうやって?」

「長い紐で手や足をぐるぐる巻きにするとか」

「それは……ヨマリーたちに変に思われるんじゃない?」

「……夢遊病とか言っておけばいいんじゃないかな……。無意識に夜中動き回る病気だ、とか」


 フォスターが青ざめた顔で続ける。


「それにリューナに言われて気づいたけど、ユヴィラだけならまだしも、もし親父がヨマリーのほうに手を出したら、俺はもう生きていけない……殺してくれ……」

『あんなガキに手なんか出さねえよ!』

「お父さん、最低……」

『わかったよ! 何もしねえよ! 取り憑いたりしねえから安心しろ!』


 ヤケになったビスタークが怒鳴るように言った。


「ホントかなあ……」

「そんなに飲みたかったんならコーシェルとかウォルシフに身体貸してもらえば良かったじゃねえか」

『あいつらすぐ悪霊だの浄化するだのうるさいから面倒だったんだよ』


 フォスターが一つ案を思い付いた。


「あっ、嫌だけど俺が酒飲めば身体動かせなくなるから縛られるのと同じじゃないか? 嫌だけど」

『そうなったら半日動けないだろお前。その間に狙われたらお前も俺も動けずに終わるぞ』

「それはまずいか……」


 勝手に他人の身体へ憑依しないとビスタークに約束させ、もし破った場合は火葬石(カンドライト)で燃やすとリューナが脅した。フォスターは不安に思ったものの他に良い対策が思い付かなかったので残りの料理を済ませ翌日を迎えた。



 宿の鍵を返して小舟の乗り場へと向かった。沖合に停まっている船が一隻増えていた。別の方面へ行く船だろう。船が二隻となったことで港が慌ただしい。遅れて来たこともあって大急ぎでたくさんの小舟で荷運びをしているようだ。


 船は木造の帆船である。自然の風を利用するだけでなく風の大神の換気石(ウィブライト)も使っている。本来は台所等の換気をする石だ。石は筒状になっており、穴から汚れた空気を吸い取って反対側の穴から綺麗な空気を出す。その出てくる空気を利用して帆に当てる。たくさんの換気石(ウィブライト)を使い帆と共にその角度の調整をすることで船を自在に操れるようにしているのだ。自然の風の力にはかなわないのであくまでも補助的に利用するのだが、無いよりは良いのだそうだ。


 船の乗組員には目的地出身の人間を必ず入れている。目視は出来ないのだが、輝星石(ソウライト)を持っていれば昼でも星の存在を感じられるため方向がわかるのだ。大抵は地元の上空に大事な人の星があるため複数人の該当者を採用している。



 港には人が大勢いたのでリューナとはぐれないよう腕を組むように掴ませた。混雑の中ヨマリー達を探すが向こうは二人とも背が低いためなかなか見つけられない。


「リューナ! こっちこっちー!」


 きょろきょろしているとヨマリーのほうが見つけてくれて無事に合流した。


「おはよう! 船の乗り換えをする人もいるし、混んでるねえ」

「そうだね。なんだか息苦しいよ。乗る前に一緒になれて良かった。会えないかと思った」

「大丈夫だよ! もう切符は買ってあるんだから部屋に行けば絶対合流できるよ」

「あ、そうか」


 リューナがヨマリーと仲良く喋っている間、フォスターは周りを見渡して警戒していた。あちこちにどこかの神衛兵(かのえへい)らしき鎧を着けた者がいたからだ。


『小さい島を巡ってきた船に乗ってきたんだろう。普通に巡礼の奴もいるんだろうが、どいつがどうなのかわからねえからな。気を抜くな』


 言われなくても分かっているし、すぐ近くにヨマリーとユヴィラがいるので迂闊に喋れない。頷くだけにしておいた。


 リューナとはぐれないようくっついたまま小舟へ乗り込む。沖まで船員が小舟を漕いで移動し、どうやって船に乗るのかと思っていたところ、反力石(リーペイト)を渡された。反力石(リーペイト)で浮いて船から出されている木の棒に掴まり中へ入るようだ。思わぬところで地元の神の石を目にして少し嬉しいような誇らしいような気持ちになった。陸の孤島のような辺境の町でも一般社会との繋がりはちゃんとあったのだと。

 

 船の甲板に降り立つと船員へ反力石(リーペイト)を返した。指示に従い内部へ続く階段を降り、掲示されている案内板を頼りに自分たちの船室まで辿り着いた。

 船室は狭くて窓が無く、両側に二段ベッドが置かれていた。部屋の中央に光源石(リグタイト)を使ったランプが一つぶら下がっている。まだ出港していないが海の上ではあるので少しだけ揺れている。


「相変わらず狭ーい。私、上のベッドね!」


 ヨマリーが入って右側の二段ベッドの上をいきなり確保した。


「はいはい、じゃあ俺は下ね」


 ユヴィラはヨマリーの行動には慣れているようで、やれやれといった態度で下のベッドを確保した。リューナは部屋の物の配置を歩きながら触って確かめている。


「ほんとだ。カーテンがある。柵もしっかりしたのがちゃんと付いてるし、これなら落ちないね。昨日まで泊まってたところは柵っていうより紐だったから、上で寝られなかったんだよね」

「だってお前、家のベッドでも落ちるじゃないか……」

「しーっ!」


 リューナはフォスターに余計なことを言わないよう釘をさしたが遅かった。


「上で大丈夫なの? 落ちない?」


 ヨマリーが心配そうに言った。


「さすがにこの高さの柵があれば大丈夫だよ!」

「うん。それで落ちたら逆に凄いな」

「じゃあ、上で寝ていい?」

「いいよ」

「やったあ!」


 とても嬉しそうに梯子を上る。目が見えないのだから上でも下でも関係ないのではと思うが、この梯子の上り下りが楽しいのだそうだ。


「んー……布団がいまいち……洗浄石(クレアイト)使ってもいい?」

「いいよ」


 大袋を出してそこから石の入った小袋を取り、中から洗浄石(クレアイト)を出した。


「後で俺にも貸してくれ」

「うん」

「兄貴、私たちもやっとこう」

「そうだね」


 それぞれ自分の場所を綺麗にした。


「よし! じゃあちょっと船の中見て回ろうよ! ご飯食べるとことかトイレとかお風呂の位置確認もしたいし」

「うん。いいよね?」

「何かあるといけないから全員で行こうな」


 こうして皆で船内を探検することになった。

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作者Xfolio
今まで描いてきた「盲目乃者」のイラストや漫画を置いています。

作者タイッツー
日々のつぶやき。執筆の進捗状況がわかるかもしれない。
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