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盲目乃者  作者: 結城貴美
第8章 TELL ME WHAT YOU SEE
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045 神官兄弟

「いいね」ありがとうございます!


「トマトときのことハムのオムレツにする!」


 先程からリューナがずっと黙ったままだったが、もらった言文石(リーサイト)でメニューをなぞるのに夢中で、ようやく今何を注文するのか決めたらしい。


「……今までずっと注文する物考えてたのか?」

「うん。お魚の料理とどっちにしようか悩んでたんだけど、お魚ってあまり食べたことないから味が苦手だったら困るなあと思ってこっちにしたの」

「じゃあお前今まで俺たちの話聞いてなかったな」

「えっ、全然聞いてなかった。大事な話だったの?」

「いや違うけど。ちょっと聞いてみただけ」


 相変わらず食べ物で誤魔化せそうなところに少し安心した。食いしんぼうなのは変わっていないようだ。

 

「そういや二人はもう済ませたのか?」

「いや、頼んだけどなっかなか来なくてさ」

「時間かかるのはしょうがないが、忘れられてないかと不安でのー」


 神官兄弟はフォスターにとって従兄弟のような感じだ。そのため気をつかわずタメ口をきいている。リューナもコーシェルにはあまり苦手意識を持っていない。本人には悪くてとても言えないのだが大神官と口調と雰囲気が似ているため「おじさん」の感覚なのだそうだ。


「ちょっと俺、店の人捕まえてくるわ」

「えっ」


 そう言ってウォルシフは席を立って厨房のほうへ行ってしまった。


「まだ俺注文決めてないのに」

「すまんのう。あいつ空気をわざと読まんところがあるからのー」

「まあいいけど」


 フォスターは店の中を見回して言った。注文したものがなかなか来ないためか苛立っている人と諦めの表情をしている人達が多い。

 

「そんなことより店手伝ってやりたいよ」

「見るからに人手不足じゃしなあ。店の人も助かるんじゃないかの」

「ウォルシフが店員連れてきたら聞いてみるか。もしそうなったら、リューナのことお願いできる?」

「ええよ」

「フォスターが働くなら私も」

「お前は机の配置とか覚えてないんだからダメだ」


 自宅の店は導線を完全に覚えているし広くないので働いてもそこまで問題無いが、目の見えないリューナが知らない広い店で働くなど無理だ。フォスターがリューナをたしなめるとビスタークが注意した。


『俺をリューナかこいつに渡しとけ』

「あー、その方がいいか」

「なんでじゃ?」


 コーシェルはビスタークの帯を握ったままでいたので声が聞こえている。


「原因がよくわからないんだけど、リューナが変な奴らに狙われてるんだよ」

「変な奴ら?」

「そう。だから見張っててほしいんだ。親父も渡しとくから」

「おじさんを渡されてものー」

「身体を乗っ取って戦ってくれるよ」


 リューナが忠告した。


「リューナちゃん、それは取り憑かれるって言うんじゃ」

「そうとも言うね」

「じゃあウォルシフが戻ったら渡すかのう」


 コーシェルは弟を身代わりに差し出すようだ。


 ウォルシフが店員を連れて戻ってきた。店員はものすごく疲れた顔をしている。フォスターが手伝う提案をすると注文を聞かずに店長のところへすっ飛んで行き、かわりに目を引くスキンヘッドの店長がこちらへやってきた。

 話によると親族の不幸と妻の出産と急な発熱が重なり、店員の三人が休んでいるそうだ。店を休みにしたかったが、今は稼ぎ時なので無理矢理開けてしまってこの有り様だという。店長は宿の方も経営しているとのことで、働けば兄妹の宿泊費と食費を無料にしてくれ、働きによっては少し色をつけてくれるとのことだった。


「じゃあ俺行ってくる。リューナのこと頼んだよ」


 そう言ってビスタークの帯をテーブルの上に置いた。それをコーシェルが掴んでウォルシフに渡した。


「お前はフォスターのかわりにおじさんとリューナちゃんの護衛をするんじゃ」

「ん? どういうこと?」

「リューナちゃんは悪い奴らに狙われとるらしいんじゃ。おじさんの帯をつけてフォスターのかわりにリューナちゃんを護るのじゃ、弟よ」

「お、なんか面白そう。やる!」


 そう言ってウォルシフはビスタークの帯を額に巻いた。コーシェルにいいように騙されている感じがしたがリューナは同情しつつ黙っておいた。


「よし。それじゃあ何かあったらお前の身体を使っておじさんが戦ってくれるからの」

「えっ、どういうこと」

「えっとね……ウォルシフはお父さんに、取り憑かれちゃったんだよ……」

『お前アホだろ。兄貴に乗せられたんだよ』


 ウォルシフは慌てて帯を外そうとしたが外せなかった。


「え、なんで取れないんだ? ちょ、なんで?」

『同情はしてやるがバカ息子が帰ってくるまでは保険でここにいさせてもらうぞ』

「ええー! 浄化! 浄化しよう!」

「フォスターが戻るまでは頑張るんじゃ」


 コーシェルはウォルシフが帯を巻いた後また握り直して会話に参加した。リューナはウォルシフの身体を手探りしないと帯の位置がわからないので掴んでいない。

 

『そんなに浄化を試してみたいんなら一緒に港まで行動すれば骨の悪霊が出てくると思うぞ』

「港からここまで通って来たけどそんなのいなかったけどなあ」

『俺がいるから出てくるんだよ』

「おじさん悪霊のくせに悪霊に恨まれとるんか?」

『悪霊じゃねえっての! そんなことよりさっきの話の続きを聞かせろ』

「なんじゃったっけ?」


 ビスタークにそう言われたがコーシェルは何のことなのか忘れたようだった。


『ストロワの名前を知ってるって店の話だよ』

「あー、そうじゃった。都の端っこのほうにある、小さい神の石の店でな、そこで聞いたんじゃ。後で簡単に地図を書いとくよ」

『助かる。店にいたのはどんな奴だった?』

「俺たちに接客してくれたのは女の人だったよ。四十前後くらいかなあ」

「山吹色の髪色をしとったな」


 それを聞いたビスタークは感慨深い様子で呟いた。


『レリアの姉だ……』

「へ?」

「え、あの人、おばさんのお姉さんなんか?」

『絶対にそうだとは言い切れないが、可能性は高い』


 コーシェルが不可解な表情をする。


「わし、小さかったからはっきり顔を覚えとるわけじゃないが、髪色も違うしあまり似てなかった気がするのう」

『血は繋がってないから似てなくて当然だ』


 それまで黙って兄弟の話を聞いていたリューナが口を挟んだ。


「お父さんの声だけ聞こえないからよくわからないんだけど、フォスターのお母さんのお姉さんが水の都(シーウァテレス)にいるの? おじいちゃんと関係あるの?」

「そのおじいちゃんがストロワって人なんじゃよな?」

『……そうだがこいつには言えないことが多いんだ。余計なことは聞かないでくれ。特に! 弟のほう! お前は余計なことを絶対に言いそうだ』

「俺の名前はウォルシフだよ。弟って呼ばないでくれよ」

『とにかく詳しいことは神殿に帰ったらニア姉とかに聞いてくれ』

「そっちだけで話してないで私にも教えてよ」


 リューナが会話に参加できないことで苛立っている。文句を言うリューナにウォルシフが帯の端っこを渡す。


「直接聞くといいよ」

「……でもお父さんウソばっかりつくんだもん。みんなに聞いてもらって教えてもらうほうが本当のこと聞けそうで」


 ビスタークがめんどくさそうに言う。


『ストロワに会って確認できたら全部言うって話になってただろ』

「そうだけど……私のお母さんってフォスターのお母さんと関係あるの?」

『……ある』

「おじさん、おばさんの親族に手を出したんか」

『うるさいな』


 余計なことを言うなと言っただろ、とビスタークは心の中で腹立たしく呟いた。


「え、フォスターのお母さんのお姉さんがそうなの?」

『違う』


 もう全部ぶちまけてやろうか、とビスタークがイライラしているところへ救いの手が届いた。


「これ、店長から。待たせてるお詫びだって」


 そう言って紫の髪の毛を一つに纏め黒い店員用のエプロンを着けたフォスターが料理を一品置いた。他のテーブルにも別の店員が同じ皿を配っていたようだ。そのおかげでリューナの質問が止まった。


「やった! なんの料理?」


 目を輝かせて聞く。


「干し鱈と茹でた芋を潰して伸ばしたものだって。添えてあるパンにつけて食べてみな。味見させてもらったけど美味いよ」

「うん! ありがとう」


 フォスターはウォルシフを見て言った。


「結局ウォルシフがそれ着けたんだ……」


 それ、とはビスタークの帯のことである。


「フォスターが戻るまでこのままだって。早く戻って来てくれよ」

「当分無理そうだな。それまで頼むよ」


 フォスターは地元を出発してからずっとビスタークの帯を着けていたので、のびのびとした解放感を味わっていた。

持ってきた料理はブランダードという食べ物。

以前ペンションで食べたことがあって、とても美味しかったんです。



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作者Xfolio
今まで描いてきた「盲目乃者」のイラストや漫画を置いています。

作者タイッツー
日々のつぶやき。執筆の進捗状況がわかるかもしれない。
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