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盲目乃者  作者: 結城貴美
第19章 WHAT A FOOL BELIEVES
191/200

190 購入

PVがようやく2万超えました。ありがとうございます!

前回の時点で超えてたんですが、感想いただいた喜びで忘れてました……。

 次の日はまだ上陸二日目のため神衛兵(かのえへい)の訓練には参加しなかった。まだ船に揺られている感覚が抜けなかったことと、昨日は双子に急かされて部屋へ行くことになったため、仕事の紹介も受けられなかったからだ。


 街中の地理もまだよくわかっていないので少し散策したかったのもある。反力石(リーペイト)の換金もしたい。リューナの暇つぶしのための菓子の材料も買っておきたい。リューナとカイルに連絡を取り、三人で出かけることになった。


 セレインは実習、双子は講義があるとのことで来なかった。ファイスールはとても行きたがっていたがテレクエルに嗜められていた。朝食は皆と一緒にとらないつもりだったが、この日は六人で一緒にとってその場で別れた。


「最初に石屋に行っていいかな? 換金したい」


 フォスターがそう切り出すとカイルが賛成した。


「いいよ。俺も行きたいし。売ってるかなあ」

「何か探してるのか?」

「うん。ここは医療の町だしあるだろうと思って」

「そういえば何か言ってたな。神の石のことだったのか」

『どうせ碌でもないことだろ……』


 カイルはビスターク相手に何か企んでいるようだが、まだ教えてもらっていない。その場もはぐらかされた。


 神殿から続く大通りを逸れた裏通りにある石屋へ入った。カイルが目を輝かせながら物色しているのを横目にフォスターは反力石(リーペイト)を換金した。船旅でだいぶ出費してしまったので手持ちが心許ない。反力石(リーペイト)の相場は水の都(シーウァテレス)とそう変わらなかったので当面の資金は心配無くなった。


「あ、時修石(リペダイト)が売ってる。思ったより高くないな……」

「買うの?」

「ん、あると便利だよなと思って」

「でもそれ、理力かなり使うよ? 普通は神官が使う物だから」


 店主らしき商人が話しかけてきた。


「それはまあ、理力多いのがいるので……」

「私が使えばいいよね。でも何に使うつもり?」

「食器が割れたときにいいな、と思って……」

「そんな普段使いに?」

『んなことに使うのかよ!』


 商人とビスタークに突っ込まれ恥ずかしくなった。


「……人に迷惑かけてないんだから別にいいじゃないですか……」

「ま、まあそうだね。じゃあお買い上げってことでいいのかな?」

「はい」


 フォスターは商人に聞こえないように呟く。


「それに、そのハチマキにまた穴が開いたりしたら直せるだろ」

『そうだったのか。悪いな、助かる』

 

 ビスタークはそれを聞いてからかったことを少し反省し謝意を伝えた。

 

 購入を決めたフォスターの脇でカイルが呟く。


「うわー……たっか……」

「何が高いの?」

身体石(コルパイト)

身体石(コルパイト)? どんな石なの?」


 リューナが訊くとカイルの口が軽くなる。


「身体の欠損部分に貼り付けると、その部分が生えてくるんだって」

「生えてくる?」

「例えば、片腕が無くなってる人なら、その腕が生えてくるらしいよ」

「すごい!」


 リューナは少し考えて呟く。


「私の目も、それで見えるようになったりするかな……?」

「え? ……欠損部分って話だからね……ダメなんじゃないかな……」

「そっか……」


 悲しそうに俯いてしまい、カイルが何とか慰めようとした瞬間、リューナが急に気を取り直す。


「じゃあ私の目玉をくり抜いて、そこにこの石を入れればいいってことだよね!」

「ええっ!?」


 思ってもみなかったことを言われて驚き、すぐにカイルは青ざめる。


「そんな怖いこと言わないで!?」

「だって……」


 換金と買い物を終え話を聞いていたフォスターが慌てて近づいて来たが、リューナは少し考えてすぐに言葉を続けた。


「でも、そんなに高い石なら現実的じゃないね」


 自分で自分を納得させるかのようにリューナは言った。


「リューナ……」

「主に手足を生やすのに使う石だから、目の代わりになるかどうかもわかんないし……」


 男二人が声かけに悩みながら気遣う。


『神の子だし、普通の障害じゃねえだろうから、目玉くり抜いても無理じゃねえかな。それに、回復しちまうだろうし』


 ビスタークがフォスターにしか聞こえない声で神経を逆撫でするような発言をした。フォスターが一人で苛立ちに耐えていると、先程の店主らしき商人が近づいてきた。こちらも話を聞いていたようだ。


「その身体石(コルパイト)はねえ、遠いところの石だから、どうしても値段が高くなっちゃうんだよね」

「どの辺なんですか?」

風の都(ウィブリーズ)のほうだよ」

「そこに行ったら安く買えますかね?」

「うーん……事故で手足を無くした人だったら、ここでも神殿から補助が出るんだけどね。目玉の代わりにするって話は聞かないし、どうかねえ。元々病院で使う石だし、うちみたいな石屋ではあまり扱いが無いんだよ」

「そうですか……」


 身体石(コルパイト)は諦めてカイルは炎焼石(バルネイト)を複数買って店を出た。フォスターは生活に必要な洗浄石(クレアイト)等をこの場でリューナに渡す。


「そもそも、身体石(コルパイト)って何に使うつもりだったんだ? リューナにじゃないだろ?」

「あ、うん……」


 カイルはフォスターの額をちらりと見る。


「親父さんに使えないかと思ったんだ」

『は?』

「どういう事?」


 鉢巻きの端をカイルへ渡し、ビスタークの声が聞こえるように計らう。


排泄石(ディガイト)の人形に取り憑いてる状態で身体石(コルパイト)埋め込んだら身体が出来ないかなって」

「いやいやいや……流石に無いだろ……」

『理力どんだけいるんだよ。それに石一つじゃ片腕だけとか片脚だけとかにならねえか』

「だーかーらー、実際出来るかどうかわかんないから、試してみたかっただけ!」


 文句をつける父子へカイルはやけくそ気味に言い放った。


「でも、お値段高くて無理だったんだね」

「うん。そういうこと」

「高くて親父は助かったな」

『だな』

「で、炎焼石(バルネイト)買ってたよな? 天火用?」

「うん。あとは金属の箱作らないとならないから、その資材の調達しないと」

「そういうのってどこで買うの?」


 リューナが気軽に訊く。身体石(コルパイト)を目の代わりに使うことについて引き摺ってはいないようだ。


「わかんない」

「わかんないの?」

「だって初めて来た場所なのに分かるわけないよ」

「あ、確かにそうだね。どうするの?」

「適当にぶらぶら歩いて、店の人とか職人さん見つけたら聞いてみるつもり」


 カイルは知らない人相手でも物怖じせず気さくに話しかけるタイプである。


「お前のそういうとこ凄いよな」

「そう?」

「まだこの辺のことわからないし、適当に散策してみるか」

「そうだね。えっと、菓子の材料になるもの買いたいんだっけ?」

「そうだな」

「じゃあ、あっちの賑わってる商店街行ってみようか」

「リューナ、俺とカイルに捕まってろよ。絶対に離れるなよ」

「う、うん」


 フォスターとカイルの間にリューナを配置することで誘拐を阻止しようという考えである。カイルは内心滅茶苦茶喜んでいた。堂々と片想いの相手と手を繋ぐことが出来る。二人とも緊張しながら手を繋いだ。


「そういや俺の持ってる天火と船で作った菓子の生地、リューナに渡しておこうか? そしたら部屋で焼けるだろ」

「いいの?」

「セレインさんも食べたがってたし、そのほうがいいだろ」

「そうだね。焼くのを待ってる間の匂いだけでもわくわくするし。セレインさん、だいぶ疲れてるみたいだったから息抜きさせてあげたいな」

「リューナは優しいね」

「そうかな? ありがとう」


 カイルに褒められリューナが照れる。


「じゃあそうしようか」

「でもホントにいいの? フォスター、料理したがってたのに」

「新しい天火が出来るまでまた下拵えでもするよ。それに炎焼石(バルネイト)もあるからちょっと何かを焼くくらいなら出来るしな」

「資材さえ揃えばすぐにでも作ってあげられるんだけどね。今日のうちに見つかるといいなあ」


 しばらく三人で商店街を見て回った。フォスターは目的の物を手に入れたが、カイルの欲しいものは見つからず、昼食を食べた後は別行動することになった。


「あのクッキーも売ってなかったしなあ」

「それも探してるのか? どこがそんなに気に入ったんだ?」

「自分でもよくわからない。なんでだろ? でもまあ、それより金属板だよ。職人通りみたいなところがあるからそっち行って聞いてみる」

「夜は一緒に食べるのか?」

「そのつもり。後で連絡するよ」

「わかった。じゃあな」


 カイルは兄妹たちと別れた。



 商店街から離れカイルがしばらく歩いていると、職人の工房のような一角が見えてきた。そこへ向かう途中で見覚えのある商人から話しかけられた。


「お兄さんじゃないですか! 偶然ですね」

「あ! 港町で商売してた人?」

「そうですそうです。覚えててくださいましたか。どうしたんです、こんなところで?」

「あー、金属板売ってるところを探してて。職人さんに聞き込みしようかな、と思って」

「金属板なら取り扱っている業者を知ってますよ。案内しましょうか?」

「いいんですか! お願いします!」


 案内されながら会話する。


「前売ってもらったクッキー、なんか癖になっちゃって。まだあるなら買いたいんですけど……」


 商人はにっこりと笑って鞄に入れていた格納石(ストライト)から大きな鞄を取り出す。そこからクッキーの入った瓶を持ってカイルに見せた。


「ありますよ。こちらですよね?」

「そうそう、それです! あるだけください!」

「あるだけ、と言っても瓶二本しか無いですが良いですか?」

「はい!」

「毎度ありがとうございます」


 商人は笑顔を浮かべてカイルにクッキーの瓶を手渡した。

前回ブクマ1つ増えたら今回2つ減っていた悲しみ。




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作者Xfolio
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作者タイッツー
日々のつぶやき。執筆の進捗状況がわかるかもしれない。
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