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8000円の教室  作者: カビ
相馬和樹
3/22

やるなら巧くやれよ

7時に出勤。


本来の就労時間は、8時15分〜17時15分なんだけど、授業の準備のためにこの時間には学校に着いておく。

教師歴3年のひよっこの俺は、こうして準備しておかないと、グダグダになることが容易にできるので、この時間は無駄ではない。


7時50分。


職員室に人が増えてきたため、自販機へ向かう。

この時間になると、教師も生徒もぼちぼち登校するため、「仕事が始まるなぁ」と、少し鬱々な気分になる。

今のうちに栄養ドリンクを飲んでおこう。


「あ!二月先生、おはよー!」


先客がいた。


佐藤愛。


バドミントン部のエースで活発な生徒で、教師にもフランクに話しかけるタイプ。


「おはよう。朝練か?」

「うん!大会近いからね!」


スポーツドリンクを持っている佐藤に挨拶しながら、俺も栄養ドリンクを買う。


「二月先生、そんなの飲んでんの?」

「<そんなの>って、割と美味いんだぞ」


栄養ドリンクの味は悪くない。疲労予防のために我慢して飲んでいるわけではない。


「いや、味はどうでもいいよ。身体に悪いんじゃないの?」

まあ、良くはないだろうが。

「大丈夫大丈夫」


何の根拠のない「大丈夫」を言ってしまった。

「あのね。あんまりそういうの飲みすぎるの良くないらしいよ。お昼もカップ麺とか食べてるし。運動してる?」

怒られて、少しシュンとしてしまう。

せめて、ウォーキングをするように約束して別れる。

\



朝のホームルームは、真面目に聞いている生徒は皆無と言って良い。

授業中寝ているような生徒はもちろん、授業態度が良い生徒も、顔の力が抜けているのが分かる。

まあ、今日も重大発表なんかないから、聞いていてもいなくてもかまわない。


力の入れどころを分かっているのは、むしろ褒められるべきだ。社会に出たら、上司のどうでもいい話を「聞いてないけど聞いている雰囲気」を出すことが割と大事だったりする。

しかし、堂々と寝られては、注意せざるを得ない。


「相馬、起きろ」

「・・・あ?」


涎を垂らしながら寝ていた相馬は、低い声で返す。

気の弱い生徒達が、身をすくめるのがわかった。


「ホームルーム中」

「あー。すんません」


やはり低い声だったが、一応謝罪をしてくれたため、これ以上ぐちぐち言わないようにする。


「寝るんだったら教師にバレないように寝ろよー」


クスクスと笑いが起きる。

受けたのは嬉しいが、これは俺のただの本心だ。

寝ているのに気づいてしまったら、対応するしかない。

しかし、巧くやってくれれば、「気づかなかった」と言い訳できる。


仕事が減る。

相馬のようなタイプの生徒は、その辺を頑張ってほしい。

\



さて、相馬に話を聞かなくてはならないのだった。


ホームルームが終わり、相変わらず眠そうにしている相馬に声をかける。


「今日の昼休み、ちょっとだけ時間いいか?」

「えー。昼飯食う時間がなくなるんスけど」

「3分で終わる」

「・・・へーい」

\



生徒指導室。


嫌な名前の部屋だ。

そんな名前の部屋には、教師だって入りたくない。

生徒なら尚更だろう。

よって、屋上を指定した。


相馬がよくサボりに使っている場所だから、いらない反発も減らせるだろう。


「・・・ウス」

仏頂面で挨拶する相馬。

「おー」


3分と約束してしまったので、単刀直入に聞こう。

「他校の生徒と喧嘩したって本当か」

「してません」

ふむ。予想通り。


「そうか。まあ、そんな噂が立たないように巧くやれよ」

「だから、してねーって」


ハハハ。


もう、聞くことは聞いたし、職員室に戻るか。

「あの、もう終わりっすか?」

「うん」

珍獣を見るような目で見てくる。

「なんか、センセーって変わってんな」

そういって去っていった。


俺からしたら、君ら高校生の方が、よっぽど変わってるように思うけどなぁ。

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