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8000円の教室  作者: カビ
相馬和樹
2/22

今日できないことは明日やりましょう

学生時代、職員室に入るのが怖かった。


教師だけの空間というだけで入りたくないのに加え、説教された場所が職員室が多かったので、教師に日誌を提出するだけの用だったとしても、胃がキュッとする感覚があった。

しかし、今、その職員室が職場で落ち着く場所になっている。


今日の小テストの採点をしている。


採点が嫌いな同僚は多いが、俺は、好きな部類の仕事に入る。

現代国語とかの採点は、「この時の著者の気持ちを答えなさい」みたいな問題の答えは、◯✖️だけではなく、△の判断が難しいから、集中が必要だろうから疲れるだろうから嫌いというのも分かる。


でも、俺の数学教師だ。


もちろん△もあるけど、国語ほど採点は難しくない。

数字を見づけるのは慣れているので、苦ではない。

それに、余計なことを考える必要がないのが良い。


「二月先生」


リズム良く採点していた俺に声をかけたのは、同期の生物教師の荒川先生。


「なんでしょう?」


生物や科学の教師は、白衣を自然に着ることができるのが羨ましい。

中学生の頃流行った『ガリレオ』の湯川みたいで格好いい。俺も白衣に手を入れてみたい。


「お忙しいところすみません。二月先生のクラスの相馬のことなんですが」

「・・・」


相馬和樹。


2年2組の、いわゆる「問題児」ってやつだ。


「相馬がどうかしましたか?」

「えっと、他校の生徒と喧嘩していたという目撃情報がありまして」


こういう話は以前からあった。しかし、あくまで「目撃情報」だ。本人がやってないと言えば、そちらを信じるしかない。


「分かりました。相馬に聞いてみます」


そう言いながら、本当にやっていた場合、教師に正直に話すわけないと思っていたの。俺だって話さない。


「お願いします」


申し訳なさそうに頭を下げながら荒川先生が職員室を出ていく。

とりあえず、採点を終わらせてから俺も職員室をあとにする。

\



現在時刻は3時50分。


相馬は帰宅部なので下校している可能性が高いが、あいつがたまに黄昏ている屋上を見てみることにした。


「二月先生、さよならー」

途中、女子生徒に挨拶された。

「うん。さよなら」


顔は知っているが名前が曖昧な彼女に返しながら、よく下の名前を呼ばれることに再確認した。


遊佐二月。


二月。そのまま「にがつ」と読む。

珍しいが、キラキラネームほど弄られない名前をつけた両親は、ネーミングセンスがあるのだろう。


1月から12月を声に出してみたら、2月が最も言いやすい。

5月と書いて皐月とかも良いと思うが、2月の方が親しみやすさがある。この名前のおかげで、初対面の人との話題には事欠かないし、生徒と打ち解けるのにも、この名前の効果がそれなりにあるのだろう。


でも、相馬は一度も読んでくれたことないんだよなぁ。


屋上に着く。

相馬はいなかった。


「・・・」


いないのなら仕方ない。

これ以上、相馬のために時間をかけるのは、ルールに反する。

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