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8000円の教室  作者: カビ
相馬和樹
12/22

逃げ場

痛い目を見ないと人は変わらない。

親が子供に説教するメリットは、やったことを反省させるというより、「こういうことをしたら面倒なことになる」という教訓を学ばせることにあると思っている。


教育。


誰もが知っている概念だが、これほど全貌が見えないものもない。

「教える」に「育てる」だ。

完璧にこの2つを同時進行できる人物に、俺はまだ会ったことがない。


だから、我々凡人は、100点を取りに行かない方が良い。

妥協した70点を狙う。

\



「人探しを頼みたいんですが」

「・・・誰をですか?」

嫌だけど仕事ならば断れない真面目な白井さん。


「こいつら」

例の動画を見せる。4人ともばっちり顔が映っている。

「顔が割れてるなら、すぐに見つけられると思います」


「さすが」

褒めたのに、限界に近い便意に耐えてようやく見つけたトイレに4人並んでいた時のような顔をしていた。

プライドから露骨な顔はしないが、不快感を隠しきれていない顔。

なんで、こうも嫌われたもんかねぇ。


「アタシも出るか?」

読んでもないのに同じテーブルについていた星田が言う。

「お前まで動かしたら予算オーバーだから良いや」

俺の数倍の喧嘩の腕を持っているこいつをコマにしておいて損はないが、金を優先する。


「へぇ。張り切ってんな」

「は?」

そう言いながら俺の隣に座る。

「ちゃんと先生してんだな」

頭を撫でてきた。

こいつ・・・『五等分の花嫁』の風太郎と同じことしてやがる。



なんか勘違いしてんな。

相馬のためではなく自分のためになるだけだ。


「はっはっは」


撫でるだけ撫でたら高笑いして去っていった。


釈然としない俺に、今度は白井さんが不可解なことを言う。

「あなたのそういうところ、恵さんは気に入ってるみたいだけど、私はあなたの逃げ方、嫌いです」


逃げ方?

どういうことか聞こうとしたら、白井さんも部屋を出る。2人して意味深なことを言って去るとか、純文学の登場人物かよ。


しかし、逃げてるってのは俺の人生をよく表していると思う。

今の仕事も、逃げた末にたどり着いたしな。

俺は弱いからよく逃げる。

仕事から。

家族から。

友達から。

恋人から。

自分から。


『逃げるは恥だが役にたつ』

少し前に大ヒットしたドラマのタイトルだ。


どっかの国の諺らしいが、これをタイトルにした人のことは、高確率で気が合うと愚考する。


逃げた先で出会えた人もいる。

人は合わない場所からはどんどん逃げていい。

しかし、自分の得意なことは日々磨いていく。

そうしていたら、こんな俺でもなんとか生き残ることができた。

「だからさ、相馬」


姿は見えないが、この事務所のどこかにいる教え子に教える。


「教育」の「教」をやってみる。


「俺が逃げる場所と状況を作ってやる」





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