ルール違反
夢なのに記憶に残ってしまうので、毎回このカラスの夢を見る度に少し気分が落ち込む。
時刻は午前5時30分。そろそろ出る準備をした方が良いのだが、その前に相馬に今日はどうするのかくらいは聞くべきだろう。
星田探偵事務所の2人はまだ寝ているようなので、できるだけ音を立てないように移動する。
と言っても、3歩で相馬の元に行けるので、とてもイージーだ。
身体を揺する。
少し驚いた顔で俺を見る。
「おはよう。今日はどうする?」
「あー・・・学校行きます」
「ん」
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電車を使い出してからもう10年以上になるが、車内の雰囲気は、未だに慣れない。
それなりに混んでくると、自分が身動きとれないことに対する悪感情が満ちる。
それを感じることは当たり前なのだが、稀に行動を起こして不快な気分を解消しようとする人がいる。
わざとぶつかったり、攻撃をしてきたりする。
こわーい。
個人的思想かつ、絶対に間違っていると分かっているが、俺は、「ああなった奴は人間として評価しない方がいい」と考えている。
現代日本では、ルールを守らなければ、真っ当な生活はできない仕組みになっている。
人間がカラスより頭が良いと言うのであれば、奴らにはない秩序を持たないといけない。
法律は、善悪の問題と同時に、人間であるか否かの物差しでもある。
江戸時代の侍だったら、気に食わない奴がいて、切り捨てる行為はルール違反ではなかったわけだが、令和はそうはいかない。
今の時代が、人殺しを人間扱いすると思うな。
「なんで人を殺しちゃいけないの?」
小学3年生頃になったら大部分が持つであろう疑問。
知るか。
理由が必要か?
じゃあ、今俺がテメーを殺しても、「殺しちゃいけない理由がないから」と許すのか?
許せないなら、そんな疑問の答えなんて考えても時間の無駄だ。
・・・閑話休題。
ルールを守らない奴は人間とは呼べないという話だった。
この車内に、人間ではない奴がいる。
痴漢だ。
見るからにモテてこなかったであろうハゲデブのおっさんが大人しそうな女子高生の下半身に手を入れている。
さて、これを放っておくのは精神衛生情報よろしくない。ありがた迷惑上等であの人間の姿をした獣を地獄に落とそう。
まず、スマホを取り出して獣が見えるように動画をとる。
バレてもいい。バレれば一旦は俺に意識が向くため、被害者が解放される。
「おい!何撮ってんだ!」
声さえも気持ち悪い高い声だった。
「え?」
注目が集まる。
目立つのは、当然喚いているケモノの方。
「オレを撮ってただろ!」
「はい?」
「スマホよこせ!」
「え。やめて下さい」
揉み合いになる。
「おいオッサン。このにいちゃん知らないっつってるぞ」
味方登場。
第三者の参戦により、獣がやっと周りを見渡す。
軽蔑している視線、関わらないように目を伏せているに顔が赤くなる。
「なんだよ!俺が悪いのか!?いつもそうだ!俺は正しいのに周りが馬鹿だから損をする!いっつもそう!死ね!馬鹿は死ね!死ね!死ね!死ね!」
ハハハ。
日本語しか分からないから、何言ってるか分かんねーや。
喚き続ける獣に、駅員さんが5人で止めにくる。
その中の1人に動画を見せる。
獣が連れていかれる。
一応、俺と女子高生も話を聞かれる。
まあ、事態を大きくしたことに多少の注意は受けたが、一言二言で終わった。
隣の部屋から獣の声で、「なにがいけないんだ!俺の何がいけないんだ!」と聞こえてきた。
さあ。
全てじゃない?




