第三話
人生をかけて信じる。信じ続けたさきに善悪を超えた何かを感じれるかもしれない。
そんな作品です。
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毎週金曜日に更新を予定しています。
第三話 賢太郎
この日もうちに真美が来ていた「櫻子がよく勉強しているから私うれしいわ、元気がもらえる。神もきっと喜んでおられるわ」
櫻子に来世パラダイス教会の教義が染み込んできていた。
「今まで神の存在を知らなかったなんて神に申し訳ないわ、全ての創造物は神の物、私も神のものなのに…」櫻子
「大丈夫これからたくさん奉仕して神に使えたらいいのよ。」真美
「奉仕ってなに?」櫻子
「この良い教えのことを多くの人に知らせるのよ、もっと多くの人に神のことを教えてあげないと」真美
「どんなことをするの?あまり難しいことは私には出来ないわ」櫻子
「大丈夫、私が櫻子にしたみたいに家を訪問して少し聖書の言葉を紹介するだけよ」真美
「それなら私にもできるかもしれないわ、一週間後の今日なら空いているけど」櫻子
「それはいいわ、娘さんはどうするの?」真美
「連れて行くわ」櫻子
櫻子は宗教活動を始めることにした、生後2ヶ月の万理を連れて。
櫻子は奉仕に行くことを賢太郎に伝えるタイミングを見ていた。二人きりになれる時に言おう、賢太郎ならわかってくれると考えていた。
二人きりになる時が来た、「賢太郎、少し話いい?」と櫻子が切り出す。
「な、なに?ど、どうしたんだよ。落ち着けよ、離婚ならしないぞ」賢太郎
賢太郎は離婚の話だと勘違いした。それほど少し前までの櫻子は辛そうな雰囲気だったのだろう。
「離婚の話なんかしないわよ。大事な話よ神様についての」櫻子
「神様?どうしたんだよ櫻子。」不思議そうな顔をする賢太郎。
「俺は神について考えたことはないけど、墓参りにも行くし神社に初詣にも行く。存在は感じたことないけど潜在意識で神はいると思っているのかな。」賢太郎は少し真面目な顔で答えた。
「私もそうだったわ。でも真美が宣教に来てくれて真理と出会ったの」櫻子
「そ、そうなんだ。真美さんは宗教の人?大丈夫な宗教なの?」賢太郎
「真美は来世パラダイス教会の人よ。真美はとても親切だし今まで宗教の本をくれたけどお金を要求されたこともないわ」櫻子
「来世パラダイス教会?なんか最近信者が増えてる新興宗教だよね。新聞でみたよ。そうなんだ、お金はかからないんだ…櫻子はその宗教にはいりたいの?」賢太郎
その本のお金はどこから出てるのだろうと賢太郎は疑問に思った。
「私は来世パラダイス教会の教えが真理だと確信しているわ、だから入信できるよう勉強していきたいと思ってる。」櫻子
「俺は宗教は薬みたいな物だと思うんだ。弱った時に助けになることもある。でも弱ってないのに薬を飲んだら逆に体が悪くなるだろう?だからいいとこだけ取り入れたらいいんじゃないかな?」賢太郎
櫻子は「何言ってるんだろう」と賢太郎が言っていることは理解できなかった。
「それは宗教してもいいってこと?」櫻子
「今は否定も肯定もしない。しばらく様子を見させてくれ」賢太郎
「今度奉仕という活動に参加してみたいんだけどいいかな?」櫻子
「今回はいいよ、でものめり込みすぎないように気をつけるんだよ」賢太郎
「大丈夫よ、そんな変な物じゃないから」櫻子
賢太郎はこのことを両親には黙っておいた。新興宗教を櫻子がしていることを知るとどうなるかは大体想像はついていた。信仰の問題は無理強いしても逆効果、自分で真実を見極めてもらうしか無いと賢太郎は思っていた。
その賢太郎の価値観は学生時代に培ったものだ、学生時代の友人の1人が新興宗教をしていた。
その友人を櫻子との結婚式に招待したのだが、「僕は宗派が違うから教会で行われる結婚式には出席できない」と言われた。
賢太郎は「そんなこと関係なく友人として来てくれ」と言ったが、その友人の意思は固く結婚式には来なかった。
しかしそれから数ヶ月のちにその友人から「この前はすまなかった。宗教は辞めたんだ、疑問に思うことができて客観的に宗教をみたら、矛盾があることに気付いたんだ。また友人として仲良くしてくれないか」という連絡があった。
その友人とはまた以前のように仲良く出来ている。
櫻子も自ら気付き以前のように戻れるに違いないと賢太郎は考えていた。
1週間後、櫻子は奉仕に参加した。
「はじめまして、櫻子です。この子は娘の万理です。」櫻子
「櫻子はとても熱心に勉強しているのよ。」真美
「そうなんですか。よろしくお願いします。」女性信者A
「お会いできてうれしく思います。櫻子さんのようにお話を聞いて勉強してくださる人がいると勇気をもらえます。」女性信者B
「娘さんは何ヶ月?」女性信者A
「2ヶ月と少しよ」櫻子
「こんな小さいのに奉仕にこれるなんて幸せね」女性信者A
「ご主人さんは学んでくれそう?やっぱり家族でパラダイスに行きたいでしょ?」女性信者B
「夫は反対もしてないし賛成もしてないわ」櫻子
「そうなのね、じゃあ学んでくれる可能性はあるね。私なんて活動に参加することを反対されて結局離婚したわ」女性信者B
「そ、そうなんですね…」櫻子
「夫より神のが大事だから、神を一番にするよう学んでいるから覚悟があることだったけどそうしたわ」女性信者B
「わぁー立派ね、すごい覚悟だわ」真美と女性信者Aが声を揃えて言った。
その日の帰り櫻子は真美に「やっぱり夫にも勉強してもらわないとダメなのかしら?」と聞いた。
「無理にとは言わないわ、ただ櫻子は夫を愛してる?」真美
「愛しているわ」櫻子
「愛する夫が教えを知らずにハルマゲドンで滅ぼされたら辛くない?」真美
「それは辛いわ」櫻子
「今櫻子の夫を救えるのは櫻子だけよ」真美
「そうね、一度話してみる。」櫻子
こうして奉仕を楽しんだ櫻子は万理と一緒に家に帰った。
つづく