第一話
人生をかけて信じる。信じ続けたさきに善悪を超えた何かを感じれるかもしれない。
そんな作品です。
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第一話 苦難・神との出会い
「おぎゃーおぎゃー元気な女の子ですよ、おめでとうございます」というと助産師は震える櫻子の手に我が子を抱かせた。
櫻子は娘を出産した、夫賢太郎は立ち会いにはこなかった、娘の名を万理と名付けた、櫻子18歳の冬であった。
櫻子は賢太郎の実家のある愛知県に住んでいて、櫻子の実家は遠く離れた青森県だったので、まだ若い櫻子は賢太郎の実家に同居していた。
櫻子は賢太郎の両親と暮らすのがとても不安だった中でも姑の栄子はそれは厳しい人だった。かつて日本では亭主関白などと言われる男性がおおかった時代があったがまさに栄子はその時代の女性だからである。
出産して1週間入院をしたのち、櫻子は万理と一緒に賢太郎の実家へと帰った。
「あらーおかえりなさい、よく頑張ったわね」と玄関で待ち構える栄子、普段は厳しい栄子の柔らかい態度に櫻子は驚きながらも、少し安心した表情を浮かべ、「ただいまお母さん」と櫻子は家の中に入った。
家の中には櫻子の為に食事が準備されていた。
「お母さんこれ私の為に作ってくださったんですか?」と櫻子は感激して質問する。
栄子は「そうよ、あなたこれから子育て大変だから今日は労ってあげたくて」と優しい顔をして答えた。そんな栄子の優しさに涙しながら櫻子は用意された食事を食べた。
しかし、ここからが大変である。生まれて一週間の万理がそんな簡単に寝てくれるわけがないからである。櫻子は夜通し歩き続けて万理を寝かしつけなければならない。
それは櫻子の想像を超えていた、出産して1週間まだ体力は戻っていない。櫻子は「あぁー」と叫び、あやしながら歩き続けた。夜中ついに我慢の限界になった櫻子は寝ている賢太郎を起こし「あなた、少しは手伝ってよ」と叩き起こした。
「んぅん…わかったよ」と賢太郎は起きてくれた、賢太郎は物腰が柔らかく優しい男だ。落ち着いた声で「ねんねんころり、ねんねんころり」と唱えはじめた、すると万理も落ち着いて眠りについた。
櫻子も胸を撫で下ろし「あなた、ありがとう。とても助かったわ」と感謝を述べた。賢太郎も「あぁ、大丈夫かい?今日は遅いからもう眠りにつこう」と言い二人は眠りについた。
翌朝、櫻子が起きた時には賢太郎はもう仕事にいっていた。「あの人ちゃんと寝られたのかしら…」寝不足で仕事に行った賢太郎の事が気になりながらも横に眠る万理の穏やかな顔をみて幸せを感じる。
「よく寝れたわ、水でも飲もうかしら」櫻子は布団から出て台所に向かった、するとそこにはまるで握り拳のような形相の栄子がいた。「あなたいつまで寝ているの?今何時だと思ってるの、旦那様のお見送りもせずに」と声を荒げる栄子、その様子にあわてた櫻子は「昨晩万理の寝つきが悪かったもので…」と弁解をする。
それを聞いて呆れた顔をする栄子「あなた、聞いたわよ、結局昨晩は賢太郎が寝かしつけたらしいじゃないの、賢太郎は今日眠たい目をこすりながら仕事に行ったわ。それをあなたはこんな時間に起きてきて…」とこんこんと説教した。
櫻子は「すみませんお母さん」と口では伝えたものの、「じゃあなに?誰にも頼るなってことなの?」と栄子への不信感が募った。
「神様がいるなら私のことを見てくれていないのだろう…」と思う櫻子であった。
栄子の説教はこの日に限ったことではなかった、来る日も来る日も説教はつづいた。食事の味付けから魚の食べ方、笑い方などありとあらゆることに口出ししてきたのである。
そんなある日の朝、「ピンポーン」チャイムがなった。ちょうど誰もいなかったので櫻子が玄関に出た。
「こんにちは、来世パラダイス教会の服部真美と言うものです。」
そこに立っていたのはとても容姿の美しい櫻子と同年代の女性だった、櫻子には真美がとてもキラキラして見えた。
「はい、こんにちは、なんの御用ですか?」櫻子は真美に問いかけた。
「あなたは悩み事がありますか?辛いことはありますか?聖書には神は耐えられない試練は与えないと書かれています。なにか悩み事があったとしてもそれはあなたには耐えれると神は思っておられます。神はあなたを愛しておられます。」とまるで櫻子の心の中を覗き見たかのような真美の言葉に驚く櫻子、「あ、あの神様は試練を乗り越えればなにかしてくれるのでしょうか?幸せになれるのでしょうか?」藁にもすがる気持ちで問いかけた。
すると真美は「ええ、もちろんです。神は教えを忠実に守る者を救われます。あなたが教えを忠実に当てはめて、行動するなら神はあなたを愛し、救ってくださるでしょう」櫻子は涙を流し、「ありがとう、ありがとう」と繰り返し感謝を述べた。
真美は「このような聖書の役立つ情報をまた知りたいと思いませんか?」と櫻子に問いかけた、櫻子は迷わず「はい、ぜひお願いします」といった。
「名前をまだお聞きしてませんでしたね、うかがってもよろしいですか?」と真美、「はい、私は中林櫻子と申します」「櫻子さんですね。良いお名前で、また同じ曜日の同じ時間ならお会いできますか?」と真美が聞くと櫻子は少し考えて、「この時間だと義母がいることがあるんです、なので昼過ぎにしてもらえます?義母が出かけるのでゆっくりお話しできます」と答えてた。
「わかりました。また来週も来ますね」と言うと真美は玄関をそっと閉め、帰っていった。
櫻子は神様なんて信じたことなかったけど本当にいるのか?とは考えたが、なんだか少し気持ちが楽になった。それで十分であった。
この日に真美にあったことは皆には黙っていた…
つづく