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第5話 ダークエルフのお姉さん

 褐色の肌をしたエルフの怖いお姉さんが、ボク達の馬車に乗って一緒に村までやって来た。

 このお姉さんは怖い人だ。なんでユヅキはこんな人を自分達の村に入れたんだろう。


 ユヅキと出会う前。獣人達が暮らす住処近くの森で休んでいた時、このお姉さんと同じ種族の人と獣人が大勢でやって来たことがあった。その人達は弓や剣を手に持ち、ボクを取り囲んで魔法攻撃してきた。

 ボク、何も悪いことしていないのに……。


 ボクはその程度で殺されたりしないけど、鱗が何枚か剥がれてしまった。怒ったボクは空に飛んで辺り一帯を焼き尽くしたけど、ボク悪くないよね。お父さんも自分が危ない時は、力を使ってもいいって言ってたもん。


 この怖いお姉さんは、ダークエルフ族と言うらしい。前によく似た白い肌のエルフ族の人達を見かけたことがある。木の上で静かに暮らしていたけど、その人達と同じような臭いだし、どこが違うのかボクには分からない。だけど、このダークエルフの人は怖い人だ。


 そのお姉さんが建物の近くで、2本の剣を振り回すような踊りを踊っている。村の人が近づくと危ないよ。ボクはその上を飛んで。お姉さんが悪い事をしないか見張っていると、ボクを睨みつけてきた。

 獣人が集まっている住処の上を飛んでいる時と同じだ。あんな怖い顔をした人が何人もボクを睨みつけていたのを思い出した。


 するとユヅキが来てくれて、ボクはユヅキの肩に止まる。「こいつ悪い奴だよ。気をつけて」って言ってみたけどユヅキには通じなかった。代わりにボクを落ち着かせるように、優しく頭を撫でてくれた。


「ユヅキ。そのドラゴンと戦ってみたい」

「キイエとか? こいつ、手加減できるかな」

「手加減は無用。あたいはいつも真剣勝負をしている」


 ユヅキがボクを肩から降ろして何か言ってる。


「こいつと戦う? 空、高く飛ぶのダメ。優しく戦う?」


 人族のユヅキが戦えというならボクは全ての力を使って戦うけど、今回は少し違うみたいだ。

 ボクはダークエルフのお姉さんと向き合う。お姉さんがお辞儀したと思ったら、両手の剣でボクに襲い掛かってきた。横に飛んで躱したけど、まだ追いかけてくる。このお姉さん速いな。まあ、カリンのあのスピードには追い付いていないけどね。


「それなら、こっちからも攻撃しようかな」


 急速反転してお姉さんの正面に立つ。両手の剣を振り下ろしてきたけど、その剣を両腕の固い鱗で払い除ける。同時に顔に向けてブレスを吐こうとして止めた。ここでブレス攻撃するとこのお姉さんが丸焦げになっちゃう。


 お姉さんが驚いたように、後ろに飛び退いた。ユヅキの方を見たら、うん、うんと頷いている。なるほど、優しく戦うってこういう事なんだ。


 今度はダークエルフのお姉さんが遠くから炎の魔法を撃ってきた。お返しにボクも同じ大きさのブレスを吐く。横に走りながら魔法を撃ってきてるけど、ユヅキの速い走りと同じぐらいで、カリンの走りに比べると全然遅いから狙いもつけやすいよ。


 低く飛びながら、いくつもの魔法攻撃を躱してお姉さんに近づくと、また剣を振り下ろしてきた。今度は剣を受け止めず、体を回転させて躱して地面に向かってブレスを吐く。

 地面と一緒にお姉さんも吹き飛び、大穴が開いた。


「それまで!」


 ユヅキが何か叫んで、ボクのところまで来て優しく頭を撫でてくれた。ボクも頬ずりをして「上手くできたかな」って尋ねた。


「タティナ。怪我は無いか」

「ああ、大丈夫だ。小さいからと(あなど)っていたようだ。やはりドラゴンはドラゴンだ、キイエは強いな」


 なんだかこのお姉さんにも褒められているみたいだ。戦う前より優しい目になってボクを見つめてくる。


「ユヅキ達とこの村に来て、ほんとに良かった。今までにない経験をさせてもらっている。キイエ、あたいがもう少し強くなったらまた戦ってくれるか」


 ボクは一声鳴いた。



 その後、このタティナというお姉さんは前よりも強くなって、時々カリンやユヅキ達と一緒に戦いの練習をした。魔獣と戦うのとは違ってユヅキ達と息を合わせて戦うのはすごく面白かった。

 しばらくして、お姉さんはこの村から出て行くみたいだ。


「キイエ。ありがとう、元気でな」


 タティナは優しい目でボクを見つめて頭を撫でてくれた。馬車に乗り手を振ってみんなに別れを告げる。タティナは強くなったけど、もう怖い人じゃなかった。あの人との戦いは面白かったのに、これから少し寂しくなるな。



 でもしばらくしたら、タティナはボク達の村に帰ってきてくれた。今度はずっとここにいるみたいだ。

 ユヅキ達もすごく喜んでいる。その数日後、この村にいる人達も一緒にお祝いをする。広場のテーブルに料理やお酒を置いて、みんなで騒いでいた。

 ボクもなんだか嬉しくて、空を飛び回って何度も鳴いた。この村の人達はいい人ばかりだ。ボクはここに居る人達を守ろうと誓った。


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