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第2話 人族との出会い

「あれは何かな?」


 森の端に見慣れない木の塔が建っている。言葉をしゃべるという種族の住処は石造りの建物が多くて、丸い敷地にゴチャゴチャと集まっているはずだけど……。でも自然にできた樹木とは違うしな~。たぶん言葉をしゃべる種族が作った物だよね。


 周りには木の家が1つあるだけで、誰も居ない。でも止まり木にはちょうどいい大きさだ。この塔で少し翼を休めて、鱗をキレイにしていると。


 ――パキン


 近くの森の方で、変な音がした。枝の折れる音? よく見ると獣人達が4人、木の陰に隠れている。


「んんっ? あれは人族! 人族の人じゃないの!!」


 見た瞬間に分かった。黒い瞳に黒い髪。会えば分かると言ったお父さんの言葉は本当だった。その目に吸い寄せられるようにボクは飛んだ。


 すると、獣人の女の人が森から出てきて、弓で攻撃してきた。そんなのボクには効かないよ。

 今度は反対側から炎の魔法攻撃だ。当たって少しグラついた。


「痛いじゃないか」


 威嚇のためのブレスをその女の人に吐く。


「邪魔をしないでよ。ボクはあの人族の人に会いたいだけなんだよ~」


 人族の男の人。今まで大陸を飛んで回ったけど会えなかった人。ずっとずっと探していた人にやっと会えたんだ。

 ボクはその人の肩に止まり頬ずりをする。体の下には小さなドワーフの女の子を抱きかかえてかばっていた。この人族の人は優しいんだね。

 しばらくして他の人達も集まって来て、何か話をしている。やっぱりお話ができる種族なんだ。


「あっ、こいつ。さっき邪魔した奴だ」


 濃い紺色のローブを着た、虎みたいな獣人。こいつは嫌いだけど、人族の男の人はボクを優しく撫でてくれる。家の中では、おやつもくれた。やっぱり、この男の人は優しい人だ。


 4人で何かを話しているけど、これがこの国の言葉なのかな。ボクの事をキイエと呼んでいるようだ。それがボクの名前? ドラゴン同士でいる時には名前が無かった。無くても分かり合えた。


 ボクの初めての名前……キイエか。くすぐったいような感じだけど、みんなが名前を呼んでくれるのは、なんだか嬉しいよ。

 夜になってみんなは木の家の中で眠る。ボクはその屋根の上にいよう。ここなら森から魔獣が出てきてもすぐ分かるものね。獣人達はすぐに死ぬ、人族も同じだと思う。ここの人達をボクが守らないと。


 翌日のお昼には、馬車という物に初めて乗った。4本足の動物に引かれて木の箱が走っているけど、すごく遅い。でもいいや、この人族の人と一緒にいられるなら。

 話を聞いていると、この人族の男の人はユヅキと言う名前のようだ。


「ユヅキ、ユヅキ」と呼んでみたけど、分かってくれなかった。ボクはまだ小さいから、この国の言葉が喋れないんだ。

 しばらくすると、色んな種族が一緒に住んでいる住処が遠くに見えてきた。ボクを箱の中に入れて「シ~」と口に指を立てている。


「ボク、知ってるよ。あの獣人達の住処の近くで鳴いたらダメなんだ」


 あの場所で、大きな声や音を立てると攻撃される。

 静かにして飛んでいるだけなら、何もしてこないからボクの声に驚いたのかな。臆病な人達だな。

 箱の中に入って静かにしていると、どこかに運ばれている感じだ。


「キイエ、すまなかったな。出ておいで」


 ユヅキに声を掛けられて出たそこは、石の家の中だった。ユヅキと出会った森の近くにあった木の家とは違って、色々な物が置いてある。

 これが人族の住処……家なのかな。


 空からみたゴチャゴチャした建物。ここはその中なんだね。初めて見る珍しい物ばかりだ。2階もあるぞ!

 部屋の中を飛んで、2階に行くと同じような木の扉が4つあった。扉を押したり引いたりしたけど動かない。

 人は色んな道具を作って生活していると聞いたことがある。これもその一つなんだろうな。


 食事は1階でみんな集まって食べている。ユヅキの隣に座っていると、狼族の女の人がお肉をくれた。食事の後はその女の人と一緒に水浴びをする。いやこれは温かい水だ。こんなの初めてだけど気持ちいいよ。

 ボクを大きな胸で抱いて洗ってくれたのは、確かアイシャと言う名前の人だ。この人からは、甘くいい香りがするよ。故郷のお母さんを思い出した。


 数日後。獣人の集まる住処……町と言うらしいけど、その外の岩場でボクと遊んでくれるみたいだ。

 ボクを空に放り投げて空中でお肉を食べたり、肩から肩へ飛んでおやつを食べたりする。あの虎の魔術師と魔法対決もした。岩壁に向かってドッゴ~ン、ドッゴ~ンって大きな音のする魔法を撃つ。

 すると槍を持った人がやって来た。


「こら~、またお前らか~! おおっ、何だそいつは、ドラゴンじゃないか!」


 そうだ、町だと大きな音を出すとこんな人が出てくるんだった。

 この虎の女の人、そのことを知らずに魔法を撃ってたのか。おバカさんなんだな。


 街中では、夜に家の外で見張りをしなくてもいいらしい。小さなドワーフの女の子がボクと一緒にベッドで寝てくれる。狼の女の人とは違うけど、なんだかいい匂いがして落ち着いて眠れそうだ。

 この子は小さいから寂しいのかもしれないな。一緒に寝ると安心するものね。いいよ。ボクと一緒に仲良く眠ろう。


 ユヅキ達といると、すごく楽しい事ばかりだ。やっぱり山を越えて出てきて良かったよ。いつまでも一緒にいようね。


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