ん、莉乃さん。俺に惚れちゃダメだって。
いろいろあった一日だったな。
「ただいまー」
「おかえりなさい。」
ただいまと言って、愛する娘におかえりと言ってもらえる日々。
嫁がいなくても、彼女がいなくたって、これで良いんだからね。
チェリーは卒業したいとは思ってますが…
そこまで考えると、アップルさんの姿を思い出す。
かっ、可愛かったなぁ!
「どうしたの?おとうさん?いいことあった?」
自然とニヤけていたらしい…
「いや、まぁ、仕事が県庁に移動になってね。」
「えー、出世なんじゃん?」
「まー、そういう訳じゃないんだけどね。」
「おとうさん。お風呂にする?ご飯にする?それとも、あ、た、し?」
莉乃が微笑んで言う。
ん、どこで覚えたんだそんな台詞。
「バカなこと言ってんで、風呂先に入るよ。…で、莉乃って言ったらどうなるん?」
莉乃が赤くなる。
「そりゃー、ねぇ。」
「莉乃には、まだ早い冗談だったね。」
ちゃんと返せなくて、赤くなる位なら言わないの!おじさん、本気になっちゃうよ!
お風呂から上がり、二人で食事する。
「これ美味いな。」
惣菜の一品を食べて言う。
「うん、スーパーで半額になってたから買ってみたの」
「ちゃんと値段みて買うとこ、偉いぞ。莉乃。美味かったし!」
誉めてあげよう。頭をナデナデする。
怒られると、思ったけど。
「エヘヘっ!」
嬉しそう。良かった!
年頃の娘とのやり取りは、手探りなんだよ!
そうだ、あのこと言わないと。
俺が、魔法使いになっちゃったこと。言わないとだな。
「莉乃っ。あのな」
声が小さかったのか
「そうだ、私、今日告白されたんだ!」
「っなんだとっ」
俺の声は、莉乃の声にかき消されたが、それどころじゃない。
反射的に声が出た。
「で、どこのどいつだ!ソイツと付き合うのか?もう、俺のことはいいのか?」
あ、最後要らんこと言っちゃった。
「おとうさん?」
「あ、いや、気にしないで。」
莉乃が俺のこと、本気だったのは、中学入学のころ。
そのせいで最近まで、気まずかったんだよな。
「あー、あの、あれ、もう大丈夫だよ!なんか、風邪みたいなもんだったのかな。」
娘の想いは、戸惑いながらも嬉しかったんだが、そっか、風邪みたいなもんだったのか。
安心しながらも、少し残念だな。
「最近さ、私が困っているところ、助けてくれた人がいてさ!」
あー、そうか、新しい恋してるのか。
あんまり聞きたくないが…
「助けてくれた?優しい人なんだね?」
莉乃の目が輝く
「うん。とっても温かくて、私に力をくれるの。」
力をくれる?
「あ、そうだ。公務員のおとうさんに聞きたかったんだけど。」
お、俺の仕事が、莉乃の恋の役に立つのか?
「この辺で、赤い学生服の学校って知ってる?」
………ん。助けて、力をあげて、赤い学生服?
偶然じゃないだろう。そんな奴、俺しかいないよな。
「いや、無いと思うよ。」
動揺を隠せただろうか?
「んー、そっか、お礼言いたかったんだけどな。」
多分、その人、目の前にいるよ!
…でも、言えない。
せっかく、俺への想いを、風邪みたいなもんって、立ち直ったのに、また俺に惚れちゃったなんて。
うーん、莉乃の恋心。大切にしてやりたいんだけど……
チェリーが俺だと知ったら、どんな思いするんだろう。
結局、その日は、なにも言えなかった。
黙りこくった俺に
「あれー、娘の恋は、やっぱショックだったのかな?」
莉乃にからかわれる。
「まぁ、莉乃の父親だからな!」
こんな軽口が言えるくらいに、今の莉乃との関係は良いと思う。
こんな感じで、楽しく生活していたい。
義姉の娘。血は繋がっていないけど、俺は君の父親なんだよ。
莉乃の恋を応援したい。
いや、このおとうさん。爆発してしまえ。
とか、思っても思わなくても
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ジャンル別で、百位で良いので載ってみたい…
…いや、ひとり言です。気にしないで。