魔法少女ピーチ。瀬戸桃子。
ピーマンが倒されて1年半。
今私は、莉乃お姉さまの跡を継いで、Aランク魔法少女ピーチとして、この県全域を守っています。
高校は、もちろん桜花高校へ進学。
待ちに待った莉乃お姉さまとの学生生活。
魔法少女は引退なさったけど、力を使い果たしたからで、卒業って訳じゃない。処女のままのはず。
私のだってワンチャンあると思う。まずは、あの忌々しいサクランボ野郎を始末しなければ……
あのサクランボ野郎!カッコいいことは、カッコいいんだけど、お姉さまを取るなんて許さない。親は、大人しく娘が大人になるのを歯ぎしりしながらみてろってんだ!
……。
ごめんなさい。ほんとはこんなキャラじゃ無いんです。
莉乃お姉さまの可憐な妹ってキャラなんです。
でも、あのサクランボ野郎が絡むと……
こうでもしないと、私自身がサクランボに惚れてしまう。恐るべしサクランボ!
私は、莉乃お姉さま一筋なんです!
とはいえ、サクランボ野郎も力を失って、魔法使いチェリーには、なれないみたい。まぁ、ヤツも卒業した訳じゃないはず。って安心してたんだけど。
この前、莉乃お姉さまに遊びに連れていってもらった。二人でデートって、めっちゃ嬉しかったのに、あのサクランボが付いてきて。デートに親同伴ってどうなのよ!
…やっぱ、カッコいいな。大人の男って感じで…
違っ、ぶるブルブルっ。
しっかりしなさい桃子!
私は、莉乃お姉さま一筋。あの援護魔法、もう一回かけて欲しいな!なんて思わないんだからね!
「桃子ちゃんって、ちっちゃくて可愛いよね。」
莉乃お姉さまとサクランボ野郎の会話。私は買い物でアクセサリーを選んでるけど、耳はダンボになって、お姉さまの一字一句を聞き漏らさないようにしてる。
「そうだね。こんな妹欲しかった?」
「うん。でも、私には、おとうさんいるから良いけどね。」
はい。イチャイチャしないの。
でも、ちっちゃいっは余計だけど、可愛いって言ってくれた。これやっぱワンチャンあるよね。
お姉さまを見る。この頃の成長が著しい。美人になって、助けてもらったときの魔法少女ペアーの姿に近づいている。
出るとこでて、へこむとこ細くて!
私は、まだ幼児体型。こんなのが良いって言う人もいるけど、お姉さまみたく熟していきたいな。
桃は、未熟だと硬いから……
柔らかくなって、サクランボぉ、じゃなくてお姉さまに食べていただきたいわ!
部活は、もちろん超常現象研究会。
と思ってたんだけど、今年から出来た水泳部との兼部になった。
顧問になる比留間先生の奥様に誘われて……
魔法少女の先輩で、色々世話になった五花先輩なので、断れなかったな…
でも、着替えに乱入してくる五花先輩の立派なものを拝むのも、まぁ、良しとするの。
超常現象研究会は、魔法少女の特訓もするので、基本的には、こちらの部室に入り浸ってる。
目的は、お姉さまとイチャイチャするためなんだけど。
「莉乃先輩は、進路はどうするんですか?」
大学行くなら今から勉強しないとだし、隣の県庁なら、対策しないと。一緒のところへ行きたいし。
「あ、言ってなかったかな?」
何をですか?
「はいっ。進学ですか?」
「ううん。お嫁さんになるの」
……………
えっ?えっ?えー?
聞き間違いかな?
「あの、どういう…」
「お嫁さんにしてくれるって言ってくれてたんだけどね。二十歳まで待って、私の気持ちが変わらなければって言われたけど。」
「はぁ」
私が落ち込んでいるのに気付いてくれない。サクランボが絡むとこの人は……
「私の気持ちは変わらないから、高校卒業したらってことにしてもらった。」
「えぇ。」
「まぁ、ずっと一緒に住んでるし、結婚してるようなもんなんだけど、ちゃんとするまで手をだしてくれないのよね。」
と言うことは、まだ?
「私は良いんだけどって、ももちゃん何言わせるの!」
あー、お姉さまの顔がほおけてる。
くそっ。でも、まだなら、まだ間に合う。
あのサクランボ消してやる。
とか思ってたんだけど、ある日の帰り道。
「あ、ももこちゃん。今帰りか?」
あ、サクランボ野郎!
「はいっ。お疲れ様です。」
やっぱ、間近に見るとカッコいい。
う、違う。コイツは、消すんだった。
「莉乃は?」
「もう少し残るようです…」
「そっか、あ、じゃあ今日は、メシ作らんとだな」
「お料理出来るんですね?」
美味しいお弁当。知ってるけど…
「うん。うまいかはわからんけど。ウチで食べてく?」
え、良いの?
私は、親がいない。高校から施設を出て一人暮らししてる。魔法少女の報酬は、一人暮らしをするには十分だし。
「良いんですか?」
「うん。一人暮らしって、莉乃から聞いてるよ。買い物しないとだけどね。」
帰り道に、スーパーによって買い物した。
「莉乃がこれ好きなんだよなー。」
とか
「莉乃に野菜食わさんと…これも買うか!」
とか。
サクランボの頭のなかは、お姉さまで一杯のよう。
なんだ、私と一緒じゃん。
「あ、ももこちゃんも、何か食べたいものあったら言ってね!」
やっと、私に聞いてくれた。
新築の家に着くと、ちょうどお姉さまの帰宅と同時だった。ピーマン撃破の報酬で家が建ったんだって。
「ももちゃんが帰って、寂しいから私もすぐ切り上げたよ。」
えー、じゃあ待ってたのに…
で、3人でご飯作って、3人で食べて。
2人がイチャつきだすのは、まぁしょうがないとして。
会話も弾み、時間もすぐに過ぎた。
くそっ、めっちゃ楽しいじゃん。
アイツは敵のはず。でも、認めるしかないか。
あの優しさと心地よい雰囲気に……
そろそろ帰らないと…
この暖かい雰囲気から、一人の寂しい部屋に…
仕方ないか。
仕方ないけど、涙が溢れてくる。
「ももちゃん?どうしたの?」
「いえ、なんでも……」
帰りたくないけど、ワガママ言って困らせたらダメだ
って、思うと涙が止まらない。
「ももちゃん?ごめんね。何か気にさわった?」
やさしいお姉さま。
「いえ、違うくて、楽しくて…」
「ももちゃん。今日、泊まろうか。一緒に寝よう。」
え、良いの?お姉さまに、抱きつきながら寝れる!
「ありがとうございます。」
って言葉は、鳴き声で、うまく言えなかった。
「ももこちゃん。俺はね、君のサポートも仕事なんだけど。」
サクランボ野郎っ。今からは、お姉さまとの時間だよ。ジャマだよ!
「君が、一人暮らしなのは、心配なんだ。」
私が泣いているのを良いことに、サクランボが続ける。
「莉乃とも話したんだけど、君さえ良かったら、ウチの子にならないか?…と言う提案なんだけど、少し考えてほしい。」
え?サクランボの娘に?お姉さまの本当の妹になれる!
何より、もう一人のアパートに帰らなくても良いの?
「考える必要ないです!よろしくお願いします!」
こうして私は、千葉桃子になりました。
お姉さまの妹で、1年後には娘になっちゃうのかな?
両親が亡くなってから、辛かったけど、
お姉さまと、サクランボじゃなくて、あの、その、あー、お、おとうさんに会えて、幸せが戻ってきた気がします。
娘が増えました。
ももちゃんとは、本当の父娘のように、反発もして、本当の父娘になっていきます。
ももちゃんの結婚式は号泣だな。




