限界突破(オーバーリミット)
ぐっ。
身体中が痛い。吹き飛ばされたのか?
起き上がり、回りを見渡す。莉乃が立っている。
他のコ達は?
起き上がるものの動けないみたいだ。俺と同じようなものか?
「リノぉ!ダメだよ。その力は!」
ナシオ君が叫んでる。
何をしようとしている?
莉乃の姿がひかりだす。
眩しいくらいの神々しい光。
莉乃がこっちを向いて、微笑む。
「ありがとう」
って言ったように思った。
覚悟を決めた顔。
ダメだよ。莉乃!
君には、ダメなら真っ先に逃げてほしい。
俺を犠牲にしても……
そうか、莉乃も同じ気持ちなのか?
自分を犠牲にするつもりか?
なら、俺ができることは一つだけ。
ありったけの魔力を莉乃にとばす。
いつもやる援護魔法の攻撃力重視ではなく莉乃を守る力を…
この選択が正しいかわからないけど、俺は莉乃に傷ついてほしくない!
俺の願いはむなしく、莉乃の攻撃がピーマンに向かう。
「これは?ちょっとヤバイか。」
ピーマンが呟くと同時に、爆発音がして、辺りが煙に包まれる。
煙の内側から風が巻き起こり、視界が開ける。
ピーマンが生きている?
お、動ける。少し回復してきたか?
倒れそうな莉乃を支えに行く。
「大丈夫か?」
「うん、おとうさんのおかげ。援護魔法でギリギリ…」
「しゃべらんでいい。」
援護魔法で回復を、…く、魔力が切れてきたか?
「危なかったですね。やられる所でした。」
ピーマンは、かなりのダメージを受けているものの、無事のようだ。
「く、ダメージ受けてるだろ!退いた方がいいんじゃないか?……」
ダメ元で提案する。
「状況を見ましょうか?確かに僕は、ダメージを受けてますが、あなた達は、もっと皆満身創痍ですね!」
悔しいが言われる通りだな。
「では、とりあえずの脅威になりそうなペアーから」
ピーマンから感じる魔力が強くなる。でも、
「莉乃は、俺が守る。」
魔力は残ってないけど、限界突破は、さっき莉乃が見せてくれた。
「エイスケさん。だめです。魔法使いの力が戻らなくなる!」
サクラさんが何か言ってる。
「お、おとうさん、だ、ダメぇ、逃げて…」
莉乃が、俺を突飛ばして逃がそうとしている。
力を入れ直して、莉乃を抱え直す!
「梨乃。力を与えるから、お前が逃げるんだ!」
限界突破だ。すべての力を込める。
おおおおぉぉ。俺の体が光だす。
何か体から抜けていく感じ!キツぃ。
莉乃は、こんなのに耐えていたのか?
じゃあ、おとうさんが耐えられないなんて、カッコ悪いよな。
「これは、いけませんね。」
ピーマンから衝撃波が来る。あぁ、間に合わなかったか。
このまま莉乃と最期を迎えるのか。
死ぬ間際、走馬灯のように人生を振り替えると言う。
楽しかった。莉乃と二人の10数年。
って、もっとちゃんと思い出したいんだけどな。
なんて、思う間もなく。
覚悟を決める。
莉乃と一緒なのがせめてもの……
「おねえさま!」
白い小さな人影が視界に杯ってきた。
桃の魔法少女、ピーチちゃんが、ピーマンとの間に入り攻撃を受け止めてくれ……
あぁ、受け止められない。ピーチちゃんが吹き飛ばされていく。
莉乃の後輩で、莉乃のこと慕ってくれている桃子ちゃん。まだDランクなのに、そんな攻撃をまともに食らったらただじゃすまない。
「ま、間に合いました。ぅ。」
吹き飛ばされたピーチちゃんが気を失う。
「ももこちゃん!!」
限界突破の援護魔法が掛かった、莉乃が復活する。
でも、俺は限界を越えた。立ってられない。倒れ込む。
「お、おとうさんも!」
莉乃が俺を支えて、座らせてくれた。
だから、この姿の時は、チェリーさんだよ。見た目の年齢変わらんのだし……
「待っててね。ちょっとアイツたおしてくる。」
莉乃の袖を掴む。
「に、げ、て、く、」
言葉にならない俺の手を優しくほどき、莉乃が微笑む。
「おとうさんだけなら、逃げてるかもだけどね。ももこちゃんも助けないと」
莉乃がいたずらな笑顔を見せる。
まぁ、逃げてはくれんか。でも結局、俺を置いていけないくせに。精一杯の照れ隠しかな?
優しい人間に育ててしまった。
もう少し自分勝手に成長してくれても良かった。
愛する人には、どんなことになっても生きていてほしい!
「えへへっ。いつものお返し。」
莉乃に頭を撫でられた。ん、悪くない。
「これは……まずいかも。僕も本気で!」
ピーマンが呟くと、ピーマンからも魔力の塊が。
「莉乃!」
「莉乃ちゃん!」
ベリー姉妹が立ち上がっている。
「私たちも…」
パッションフルーツにパイナップル達、この地域の魔法少女達が集まってくれた。
「私達だって、魔力上がっているはず。」
いつも物陰でこそこそしてた妖精達がピーマンに向かっていく。
莉乃の体が金色に光だす。
ナシオ君がそれに気付いた。
「リノ!それ以上は、ダメだ。魔法少女の力を失って…それに、それだけじゃ済まなくなる!」
莉乃が微笑んで
「いいの。皆が助かるなら。おとうさんのちからもある。さっき限界突破したときに、その先にあるもの感じたから…」
魔法少女達の一斉攻撃がピーマンを包む。
威力は充分だろ!
これで倒せたら、莉乃が無理しないで済む。
何とか………
でも、
ピーマンから、魔力が発散されて、
その場にいた魔法少女、妖精達を吹き飛ばした。
「もう、怒った。とどめをさしに行く!」
ピーマンの口調は変わり、怒気を含んだ魔力になっている。
これは、ヤバイかも。いままで奇跡的に犠牲者はいないけど。これからは、抵抗できずに、蹂躙されてしまう。
「終わりにします。」
金色の梨の魔法少女になった梨乃が言うと、莉乃から高濃度の魔力を含んだナシ汁?が出てピーマンに向かう。
「くぅ!こんなはずではー。」
ナシ汁?は、ピーマンに直撃。
俺の限界突破分、そして莉乃が限界突破を越える力を引き出した。この攻撃は、Sランクを越えたはず。
「ぐあああぁぁぁー」
ピーマンは、莉乃の攻撃を受けてあっけなく四散した。
ベジタリア星の地球侵攻司令官。
10年以上も、魔法少女達を苦しめてきたピーマン大帝を、魔法少女ペアーが撃破した瞬間だった。
俺が覚えているのは、ここまで。
力を使い果たして、崩れ落ちる莉乃に、俺のすべてをかけて、魔力を飛ばして助けようとして……
意識を手放した。
ピーマンを撃破!
もう少し続きます。お付き合いください。




