待っててもらえる気持ち。
「あっ」
莉乃の声。
…あ、柔らかい。
「あ、ごめん。」
太ももを直にさわってしまっていた。スカートは、そこまで短い訳じゃないけど、少しめくれて直にさわってしまった。やっぱ、感触が違う。
…わざとじゃないんだけどね。
……誓うよ。
「あ、チェリーさん。服の上からより力の感じ、良いですよ」
ん、そうなのか?
「でも、なんか痴漢みたい。ダメですよ。やっぱり…」
やさしく手を掴まれる。手を繋いで援護魔法をかける。
「いや、痴漢って…」
大人な姿になってるとはいえ、娘に痴漢しちゃダメ。ゼッタイ。
蒼井さんに触らせてもらえるかなぁ?
彼女なんだし、良いよね?
うーん。でも、40になっての初めてできた彼女…
どうして良いか、わからんよ。
「どうしたの?考え事ですか?」
莉乃から話しかけられる…
見ると、敵は既に倒してしまった模様。
強くなったね。ペアーさん!
「あ、いや、よくやったね。」
「いえ、チェリーさんのお陰です。」
恋する乙女の眼差し……
大好きな娘、いや、大好きだった義姉ちゃんそっくりの顔で…
あ、これは、ペアーに変身しているからか……
でも、嬉しくないはずがない…
「強くなったね!これからも、よろしくね。」
つい、頭を撫でてしまう。
「エヘヘ、ありがとうございます。」
ま、義姉ちゃんにとっては、俺はただの弟だったわけで……
莉乃からしたら、ただのおとうさんなわけで……
ん、莉乃は、俺の事、男として好きだったよなぁ。
で、ペアーは、チェリーに恋している。
目の前にいる人に、なんか妄想しちゃうのは、童貞あるあるだな。
「じゃあ、またね。」
蒼井さんを待たせている。俺には、待っててくれるかわいい彼女がいる。
「はいっ。ではまた。」
莉乃の笑顔がまぶしい…
急いで遊園地に戻ってきた。
いや、もっと急げよな、いらん妄想なぞしとらんでね。
けど、まぁ、大事な娘なんだしね。
良いじゃん。
「あれー、お姉さん。まだ一人じゃん。一緒に遊ぼうよ!」
「置いてきぼり?酷い彼氏だね。俺らだったら、そんなことしないよ!」
蒼井さんが、チャラそうな男3人に囲まれてる…
胸がドキドキする。急がないと…
「いえ、戻ってきますので…」
「そんなこと言ったってもう2時間くらいいない?」
「お姉さん。美人さんだから、見てたよー。」
「いいから行こーよ!」
男の一人が蒼井さんの腕を取る。
「ちょ、やめてください。」
蒼井さん。今行きます。
「そこまでだ。蒼井さん嫌がってるだろ!」
「なんだ、お前!」
「俺は、」
「おとーさんですか?」
「おっさんは引っ込んでろよ!」
「エイスケさんは、私の彼氏です!いきましょ!」
蒼井さんに手を引かれてこの場を立ち去る。
「マジか?おっさんじゃん。」
「保護者かと思った!」
「…白けたな、帰るべ!町でナンパしよーぜ」
「おー、そうだな」
散々好き勝手言いやがって。まぁ、帰ってくれたから良いか。
「ごめん。待たせた。」
「いえ、お疲れさま。」
こうやって、労ってもらう日々になるのだろうか。
どこか無理をしているように感じるのは、男に絡まれていたせいか。
それとも、待ってるの辛かった?
うまく聞けないや。
太ももに目をやると、…遊園地だからか、ジェットコースター乗ったりするから?ズボン履いてる。
これだと、生で触れないな。
ぢゃねえ。蒼井さんに寂しい思いをさせてしまったかどうか。
「あれ、乗りましょう。」
「あれ?観覧車か。良いね。」
観覧車の中、ガタンと音がする。…上手く会話できない。
蒼井さんは、なにか思い詰めてる?
「蒼井さん!俺…」
何を言えばいいんだろう。
もうすぐ頂上だ。
「エイスケさん。この観覧車にはじめて乗ったカップルが頂上でキスしたら…」
ん、キス?
「永遠に繋がれるんだって!」
え、え、なんの話?
蒼井さんが、隣に座ってきた。
少し揺れる。ちょっと怖い。
じゃなくて、蒼井さんが上目遣いで見てくる。
可愛すぎる!ドキドキしちゃうよ。
でも、これって、これって。
ん、どうするの?心の準備…
いや、いくの。でも、どうやる?
とかいってる内に、観覧車は頂上を過ぎ下り始める。
蒼井さんが向かいにスッと移動して
「意気地無し…」
って呟いた気がした。
「いや、ごめん。俺、ほんとに…」
経験無くって…とは声にならない。
「いえ、わかってます。」
「ちゃんとデキル男になりたいんだけどね。なれてないから…」
「いえ、あの、違ってて、たぶん…」
ん、蒼井さん。何が言いたいの?
ここまで読んで頂きありがとうございます。




