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最強の魔導具

 上方から迫ってくる魔力波発生装置と呼ばれるものは目のようなものを光らせており、威圧的な風貌をしている。

 しかし、ここにある魔力の量はそこまで多くはないだろう。

 道を開いたことにより谷風が流れ、空気中の魔力波は分散したはずだ。


「エビリスくん!」


 リーシャがそういうと同時に俺は純魔力による魔法障壁を展開した。

 あの魔導具がどう言った力を持っているのかわからないが、魔力を吸収する魔導具とのことだ。

 それなら周囲の魔力がなくなれば問題なく扱えると言ったところだ。


 ズンッ!


 そんな強烈な音が響き渡り俺の魔力障壁にヒビが入る。


「何っ!」


 崖上方からそう言った言葉が漏れた。

 どうやら脅威であった魔導具は全力を出しきれずに魔力波を展開してしまったようだ。

 あの資料に書かれていたことは本当だったようで、ここ一帯の魔力が薄まったことで十分な出力を得ることができなかったのだろう。


「フィーレ、頼めるか」

「ええ、もちろんよ」


 魔力波の衝撃が収まり、純魔力の障壁を解くとフィーレが跳躍した。

 その一飛びで崖を凄まじい勢いで駆け登っていく。


「リーシャ、お前は援護できる場所に移動してくれ」

「うん、わかったわ」


 今まで一緒に同行していたリーシャはすぐに後方の茂みへと隠れた。

 ついでに俺はそこに索敵用の結界も張り巡らせることで、彼女に危害を与える奴が近付いた時にすぐ援護に向かえるようにした。

 そして、俺はフィーレを追いかけるようにして浮遊魔法で崖の上へと向かっていく。


 崖の上ではすでに戦闘が起きており、フィーレは貴族学院の生徒と対峙していた。


「フィーレ、一対一では負けなしかも知れねぇけど俺らはチームだぞ」

「それがどうしたのかしら」

「っ! 余裕ぶるのもいい加減にしろよ! お前らやるぞ」


 すると、フィーレを囲むようにして貴族学院の生徒が広がる。

 それと同時にとある魔法も展開しようとしていた。

 ふむ、彼女に全て任せるのもいいが、もしものことがあるからな。

 少しは手を加えてやるのがいいかも知れない……いや、やめておくか。

 俺は腕を伸ばすのをやめた。

 いくつか理由はあったのだが、一つはフィーレがすでに動き出していたからだ。


「嘘だろ!」


 貴族学院の生徒が声を上げる頃にはすでに彼女が眼前の前に迫っていた。

 魔法を展開する間もなく、一人目が戦闘不能になる。

 生徒の一人が腕を切り落とされていたのだ。


「せいっ!」


 そして、続けて左側の生徒へと走り出し、斬り込んだ。

 腕を集中的に狙った正確な一撃だ。

 なるほど、彼女の戦い方は魔法が展開される前に決着をつけるということか。

 俺がなんの援護もしなくともフィーレは普通の魔術師相手には負けないようだ。

 さて、俺は俺の仕事をするとしようか。

 まずはあの魔力波発生装置だな。

 特殊な魔石で防御されているようだが、俺にとってはないに等しい。

 一体どのような魔導回路が組み込まれているのか気になるところだが、存在しているだけで普通の人にとっては脅威だからな。

 俺は支配の力を使い、その魔導具を一瞬にして砂と化した。


「……伝説の、魔導具がこんなことに」

「伝説か、負の遺産でしかないだろう」


 すると、男は血走った目で俺を見つめた。

 狂信的な生徒の一人だろうか。

 まぁ一人程度など、気にすることもないか。


「第二の計画に移行する!」


 俺がそいつを消し飛ばそうとすると、男はそう叫んだ。

 その声に共鳴するかのように地面が振動を始める。


「これは……」


 妙に懐かしい感じがするが、まさかアレを使うつもりなのだろうか。


「この俺がただで死ぬと思うなよ!」


 最終手段である計画をどうやら実行したらしいな。

 これを使うとは自分も死ぬことを覚悟しているかのような奴だ。

 だが、そう簡単に死なせると思うなよ。

 地面から黒い触手のようなものが発生する。当然俺の足元にもフィーレや貴族学院の生徒までもそれに足と取られてしまう。


「な、何なのこの気持ち悪いものは……」

「フィーレ、剣でそれを斬るなよ。その触手は剣に絡み付いて離れないからな」

「どうすればいいのかしら」

「しばらく耐えていろ」

「ええ? きゃいやっ」


 触手がフィーレの体を弄るように纏わり付く。


「ちょっと、これは……どこ触ってるの?」


 ふむ、長いことは猶予はないな。


「エビリスくん、見ないで」


 彼女は顔を真っ赤にして恥ずかしさに満ち溢れた表情をした。


「すまないな」


 触手に拘束されているのは彼女だけではない。他の生徒たちも同じく触手によって身動きができないようだ。

 すると、先ほどの狂信的な男が叫ぶ。


「これが、これが全てを飲み込む悪魔の魔法……さぁ喜べ!」

「「おおー」」


 どうやら狂信的なのはここにいる生徒全員なのかも知れないな。

 それにしてもこの魔法の中心を探る必要があるな。

 この触手のようなものは魔力を吸い取る魔法で、時間がかかればかかるほど強力になっていくものだ。

 魔力のないものが強力な魔力を手に入れる方法として編み出されたものなのだが、元からそれなりに強力な魔力を持っている魔術師が使えば、それはただの虐殺魔法と変わる。

 自爆覚悟ならこれぐらいするのだろうな。

 全ての魔力が吸収され尽くされるまでこの触手は動き続ける。


「リーシャ、俺に向かって魔弾を撃ち込めるか?」

『え?』

「全力のものを頼む」

『そ、そんなの無理だよ』

「お願いだ。そうしなければここにいるみんなが死ぬことになる」


 しばらく沈黙が続くとリーシャは決心がついたのか「わかった」とだけ返事をした。

 バキィン!っと金属音の混じった強烈な銃声とともに一つの弾丸がこちらに向かって放たれた。

 俺は目を閉じ、一つのことに集中する。

 俺の足に纏わりついた触手に魔力を与え、その中心部へと繋いだ。

 そして、手を突き出してある魔法陣を展開する。

 それは物質を魔力に変換する魔法だ。

 崖下から放たれた銃弾の弾道は複雑なカーブを描いて俺の方へと向かってくる。

 その最強の誘導性を持った魔弾はたとえ魔力に変換されたとしてもその性質を保ったままだ。


 ピィキュン!


 そんな可愛らしく糸の切れるような音がすると同時に触手の勢いがおさまった。


「な、何が起きた?」

「地下深くに造られた魔法陣は地上から破壊することができなくてな。魔力に変換した魔弾で破壊した」

「そ、そんなことができるわけ……」

「人類最高の魔導具、舐めてもらっては困る」


 リーシャの持っている魔導具は人類の技術を結集させたものだ。

 そんなものがこんな古めかしい術を破るなど簡単なことだ。


「くっ……」


 時間をかけたおかげで貴族学院の生徒の多くは疲れ果てており、気絶していた。

 フィーレに関しては魔力を吸い取られていたものの、もともと魔力など使わなくとも勇者の力があるために影響はほとんどなかった。

 しかし、ドロドロの触手にまとわりつかれたことと、それを俺に見られたことで今は顔を真っ赤にして俺を見つめている。


「あの……」


 すると、彼女は俺に向かって声をかけてきた。


「記憶を消す魔法ってあるのかしら」

「……あるにはあるが、自分に対しては無理だ」

「不便ね」


 そう言ってフィーレはジト目で俺を見つめてきたのであった。

 自分に向けてその魔法を使うことは特性上無理だ。


「まぁ忘れるように努力はしよう」


 俺がそういうと彼女はふんっと顔を逸らしたのであった。

 こうして俺たちはなんとか山岳地帯の基地を無力化することに成功したのであった。

 さて、これからは尋問の時間に入るわけだが、それには少し準備をする必要があるだろう。

こんにちは、結坂有です。


山岳地帯の戦いを終えた三人は隠れ家や基地で捉えた人たちをどう尋問するのでしょうか。

そして、フィーレの恥ずかしい姿は忘れることができるのでしょうか。

これからの二人の関係がどうなるのかも気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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