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かつて最強であった魔王は人間として生きていけるのか  作者: 結坂有
第七章 魔王は普通に生活したい
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平和の裏側

 シエラとしばらく政治的なことを話していると、奥からレイが現れてきた。

 どうやら夕食が完成したようだ。


「エビリスくん、夕食の準備ができました。シエラさんもこちらへ」

「ああ」「うん」


 すると、そこにはやはり味噌を使った料理が食卓に並べられていた。

 香ばしい匂いを放っているのは味噌で作った煮汁で煮詰めた料理で、どうやら味噌煮と呼ぶらしい。

 こちらも味噌を利用しているようだが、レイは味噌が本当に好きなんだな。


「今日も味噌料理ですよ」

「なるほど、今日も楽しめそうだ」


 確かにレイの作る料理は美味しい。

 俺のことも考えて作ってくれているようだしな。そう言った点では彼女を信頼していると言える。

 そして、俺とシエラ、レイとがテーブルに座り食事を始めた。

 味噌煮は程よく甘く味噌の香りも楽しめる料理であった。何よりも素材の味を活かしたものでもあるから俺の好みの味でもある。


 食べながら聞いた話だが、料理としては簡単な部類なのだそうだ。

 一人でも作れると言ってたから今度調べて作ってみたいところだ。

 今日出会ったフィーレを陥れようとしていた学生の他にも、同じような奴がいるということを帰る直前でのオービスの会話で分かった。

 そのことが知れただけでも俺としては十分であった。

 さらに言えば、その学生が今学院を休んで何か活動をしているというところに問題がある。

 貴族学院は一般学院と比べて規則がゆるいとシエラが言っていた。

 貴族は一般人よりも忙しいということは当然のことだ。

 公事であったりと貴族がするべき仕事というものは普通のようにあるのだからな。

 そのことで休むのであればいいのだが、何か裏でよからぬことを考えて欠席していると彼は言っていた。

 力に魅力を感じている貴族であればあるほど、そう言ったものに傾倒してしまうものだ。世の中は俺が思っているよりも平和ではないのかも知れない。


   ◆◆◆


「エビリス・アークフェリア……あの力は一体何なんだ」


 私は自問自答していた。

 今日見た力は以上であった。神の力を凌駕するあの力は危険と言ったものではない。

 あってはいけないもの。神を超える力を持つ者など存在してはいけないのだ。


「神に逆らうとどうなるか、彼に教えなければ……」


 そんなことを考えていると、空間が歪んだ。


「っ!」

「エグザリウス」


 歪みが戻ると同時にある人物が現れた。

 その人物は伝説上の人物で、私の先祖が力を初めて与えた最強の魔術師エーデンだ。

 彼はもともと魔導学者であったが、色々な経緯があって最強となった。


「思っていたよりも普通な見た目をしているのだな」

「ふつう……それよりも力を安定させたい」


 復活して時間が経ったからだろうか。会話が安定している。

 一度目に会ったときはまともな会話などできるような状態ではなかったからな。

 いや、それだけではないか。マリークという人物の一部を吸収したというのも理由の一つなのかも知れない。

 彼の体については彼自身にしかわからない。

 私が推測できるものではないということなのだ。


「膨大過ぎるが故に制御が難しいというのは言ったはずだ。それ以上力を酷使するのは今はやめておいた方がいい」

「復讐する……俺はそう誓ったのだから」

「エビリスに対してどのような因縁があるのかわからないがな。本来の目的を忘れるなよ」


 私は忠告するようにそう言った。

 彼は目の前のことしか見えていない。強力な力を持っているとは言え、理性をほとんど失っている状態だ。

 そんな彼をコントロールするなど容易ではない。

 なら、いっそのこと彼の力を解放する方が良いのではないだろうか。

 彼を縛る枷、それは体が完全に立ち直れていないために起きる力の暴走だ。


「真っ直ぐなその志は認めるが、目的を間違えるな。今は体を完全体にまで戻す期間だということをな」

「……わかっている」

「それなら決定だ。私たちエグザリウス家の召喚できる神の下僕と融合するが良い」


 彼らはもともと神の力に適性があった人を私が無作為に選び、力を与えた奴らだ。

 下僕たちはそれぞれ優秀というわけでもない。それだったら、ここはエーデンの糧となることがどれほど光栄なことか、きっと彼らにもわかることだろう。


「融合……」

「それならあんたの力も思い通りに戻るのではないか」

「なるほど、やってみる価値はある」


 そう言ってエーデンは神の下僕の顔を持ち、体を浮かせた。

 その行為を確認した頃にはすでに下僕は死んでおり、そこから肉体、精神、そして魔力の全てをエーデンに融合させるのであった。

 それにしても、なんて速度なんだ。

 あれほどの速さで融合ができるのであれば、何事も苦労することもないだろう。

 そして、数十分ほどで下僕の体がただの肉塊に変わってしまった。


「あと五体欲しい」

「五体だな。すぐに呼んでやるよ」


 私は魔法でゲートを作り、彼らを呼び込んだ。

 高次元の空間には彼らのような下僕が先祖代々集められて作られた大きな国家となっている。

 私の下僕たちはゲートの中で生活している。


「好きなだけ選べ」

「なら……」


 そう言って彼は選別を始めるのであった。

 なるほど、彼ならきっとできるのかも知れない。

 この世界を真の姿へと変えることへとできるのだろう。

 私がその真の世界の神になるのだ。

 平和というなの支配から私たちを解放するために……

こんにちは、結坂有です。


今回で第七章は終わりとなります。

第八章からは新たな脅威との戦いが主体となってくる予定です。

果たして、魔王と人間はどのようにして危機を乗り越えようというのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。

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