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かつて最強であった魔王は人間として生きていけるのか  作者: 結坂有
第七章 魔王は普通に生活したい
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魔王を知る者

 魔王の力を手にしている俺が唯一恐れること、それはこの居場所がなくなることだ。

 俺は自分の居場所を手に入れるために魔王の力を手にした。

 居場所が欲しい理由については完全に忘れてしまっているが、どちらにしろ孤独になることが今も嫌なのは変わりない。

 だから、俺が魔王であることを人間に知られてはいけない。


「エビリスくん、昼食はどうしましょう」

「ああ、買っていなかったな」


 アルクを撃退した俺たちは一般学院の寮へと向かっていた。

 その道中でレイが話しかけてきた。

 学校を休んでいるから当然、昼食など買ってなどいない。


「私の部屋に食料はいくつかあるよ」


 すると、シエラがそう話しかけてきた。


「なるほど、使っていいのなら今から行くとするか」

「うん。しばらくは貴族学院の寮に戻れないわけだし、腐らしたらもったいないからね」


 この様子ではシエラもここに居座るつもりらしいな。

 まぁその点に関しては特に気にしてなどいない。俺としては毎日が少し騒がしくなる程度だからな。

 しかし、気になると言えばアイスとメライアだ。

 ここ最近はずっと俺の影の中で潜んでいるからな。彼女たちがどう思っているかなどあらかた予想が付いてしまう。


「では行くとするか」

「わかりました」


 話を聞いていたレイもどうやらそれでいいらしい。


 一般学院から貴族学院の寮へと進路を変え、たどり着いたシエラの部屋はいかにも女の子らしかった。


「シエラさんの部屋は可愛らしいですね」

「言わないでよ。これでも少し恥ずかしいんだから」


 レイの言葉にムッとしたシエラは足早にリビングへと向かっていった。

 玄関にいるだけでわかるこのピンクの物体たちは動物をモチーフにしたマスコットのようだ。

 この時代の文化にはまだ知れていないことが多いのだが、思い返せば図書館などにもこのようなものがあったような気がする。


「だいたいこれで全部かな」


 そんな人形を見ていると、シエラが大きな袋を持ってこちらに来た。


「重そうだな。よく買い溜めるのか」

「うん……毎日買いに行くの面倒だから一度にいっぱい買っちゃうタイプなの」


 その方が効率的なのだろう。

 冷蔵庫などと言う便利なものがあるわけだからな。有効活用するに越したことはない。 俺が毎日のように商店街に行っているのには別の理由がある。

 当日にしか販売されない珍しい食材などもあったりするからな。俺はそれが目当てなのもある。

 ただ、目を逸らしながら続けたシエラはどこか様子がおかしかった。

 その重そうな荷物を俺が持ち、部屋を出ると階段から誰かが戻ってくる気配がした。


「エビリスくん……」


 階段を登ってきたのはどうやらフィーレのようだ。


「フィーレか。今日は学院ではないのか」

「少し用事があって……」


 すると、彼女は俺の後ろに隠れるように立っていたシエラに視線を向ける。


「そう言うエビリスくんはその魔王崇拝者と何をしているの」


 今まで以上に鋭い目を俺に向けてきた。

 彼女が言った魔王崇拝者というのはよくわからない。


「すまないが、魔王崇拝者が何なのかわからない」

「魔王崇拝者というのは太古の昔に存在していたと思われる最強の魔術師、魔族を治める王と言われている魔王の復活を願う人たちのことです」


 俺がフィーレにそう質問すると、変わりにレイが答えた。

 なるほど、俺の話は伝説上の何者かという形で片付けられているのか。ただそれが誰なのかというのはわからないと言ったところだろう。


「エグザリウス、エビリスくんに魔王崇拝の仲間に加えようと……」

「私は魔王崇拝者ではないよ」


 フィーレの言葉を遮るようにシエラは反論した。


「どうかしら。あなたは特に警戒しなければいけない存在。もし魔族を使って反逆行為をした場合、私は容赦しないわ」

「本当の魔王崇拝者は兄のアルクなの。彼が一番危険よ」


 確かに今朝のあの様子では異常だった。しかし、彼は魔王とは程遠いものを信仰しているようだがな。


「アルクよりもあなたの方が危険だと思っている。いつも部屋に閉じこもって何をしているのよ」

「それは……」


 人には言いにくいことをしているというのだろう。

 やはりシエラも俺の何かを狙っているということなのか。


「エーデンの逃走、あれにあなたが関わっているという情報があるの」

「……」


 シエラは黙り込む。


「リーエル教授がエーデンを調べようとした。彼の好奇心を刺激したのはあなたなのでしょう」

「あれはただ資料を提供しただけ、ただそれだけよ」

「リーエル教授の研究室には『新たな魔術の幕開け』と題された本が見つかった。本当にそれを渡しただけなのかしら」


 さらにフィーレが鋭い視線をシエラに浴びせる。

 本当に彼の研究に協力しただけであれば、何も問題はない。生徒として、一人の人間として助け合うのは当然のことだろう。

 それが結果として悪だったとしても、協力した人は何も知らなかったわけだ。


「協力だけなら問題はなかろう」

「エビリスくんは関係ないわ。私はシエラと話してるの」


 いつもとは違った彼女を見るのも初めてだ。


「渡したのは本当だよ。それ以上の思惑があったわけでもない……」

「そうなのだとして、千年以上前の貴重な本を簡単に渡すものかしら」


 すると、先ほどから様子を見ていたレイが俺の前に立ち口を開いた。


「フィーレ、さっきから聞いていますけど、少し問い詰めすぎではないでしょうか」

「そんなことないわ。あなた特殊魔導部隊も関係ないことではないでしょう」

「どちらにしても、シエラさんも私も今は一人の学院生です」


 レイもフィーレに負けないぐらいの強い視線を送る。

 彼女のそう言った一面は初めて見るな。


「……そうね。立ち話が過ぎたわ」


 そう言ってフィーレは俺の横を通り過ぎた直後、立ち止まって声をかけてくる。


「エビリスくん、私は覚悟を決めたわ」

「なんの覚悟だ」

「状況によっては同じ仲間でも刃を向けなければいけない、そう言ったことよ」

「そうか。いい心がけだ」


 するとフィーレは自分の部屋へと向かっていった。


「はぅ〜」


 彼女がいなくなるとシエラは緊張が解けたのか、俺の背中にもたれかかった。


「シエラさん、大丈夫ですか」

「ちょっと休憩させて」


 あの心を突き刺すような鋭い視線は彼女にとってはかなり辛かっただろう。

 横にいてる俺ですら発言と止められるほどだ。

 それにしても魔王崇拝者か。

 もしそのような人が本当にいるのであれば、どのようなことを知っているのか気になるところだな。

 レイの話を聞いているとやはり危険なことをしている集団のようだが、学院の近くでそう言った話は聞かない。

 ということはこことは違う場所で活動しているのだろうな。

 魔族に対して強い敵意を持っているフィーレからすれば彼らたちは反逆者と同じようだからな。

 これからもフィーレや魔王崇拝者に注意を向ける必要があるな。

 勇者の力を持っている彼女にニヒルの手が回れば、それこそ危険な状況になる。

 あまり考えたくないが、ノーレンの考えていたことが実現してしまうかも知れないからな。

こんにちは、結坂有です。


魔王崇拝者というワードが出てきましたね。

彼らの信じている魔王とは本当にエビリスなのでしょうか。

そして、フィーレの考えていることも気になるところです。


それでは次回もお楽しみに。


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今回は一般学院の中から自分が好きなキャラです。投票してくれると嬉しいです!

Twitter→@YuisakaYu

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