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かつて最強であった魔王は人間として生きていけるのか  作者: 結坂有
第四章 人々は新たな力を得ようとする
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悪魔の復活

 それから夕食を作り終え、三人で食べることにした。

 妖精族である二人もここで夕食を食べることが楽しいようで、最近はこのように小さな机を囲んで食べることにしている。

 当然、この様子をクラスの人たちに見られでもすれば、たちまち妙な噂になるだろうな。


「それで、エーデンのことなんだけど」


 そう言って夕食を箸で突きながら、メライアは口を開いた。


「封印の仕方が少し特殊で、強力な魔導合金の檻を作ってそこで封印していたの。ただ、それが経年劣化で崩れ始めてきている」


 千年ほど経てば魔導合金といえど、劣化はするものだろう。


「なるほど、物質的なことであれば俺でなんとかなりそうだな」


 幸いにも俺は魔導合金を作るのは得意である。かなり魔力を消費するが、エーデンを解放するよりかはマシだろう。


「それでもダメよ。あの合金は勇者の力で作られたものだから」

「つまりは妖精の力ということか」

「うん、だから大魔王様でも作れないよ」


 確かに妖精の力は俺や人間が扱う魔力と全く違う性質をしている。俺らが扱う魔力はあくまで事象改変の能力だ。

 だが、妖精は概念改変の能力を持っている。

 概念改変の力はあらゆる法則に逆らった事象も起こすことが可能だが、それには妖精の命を削ることでもある。


「今度は妖精の力を借りずに戦う方がいいというわけだな」

「そうね。私たちもまだ死ぬわけにはいかないしね」


 大妖精の二人にはこれからも生き続けてほしいからな。俺がなんとかする必要がありそうだ。


「わかった。そうと決まれば夕食の後、早速行動しよう」

「エビリス様……」


 そういうとアイスは心配そうに俺を見つめる。

 メライアはともかくアイスに関してはここから出ることができないからな。


「俺とメライアがいて負けたことがあったか?」

「そう、ですが、少し不安です。エーデンは凄まじい力を持っていますから」

「そのことは承知の上だ。安心しろ、死ぬことはしない」


 俺がそういうとアイスは小さく頷いた。


「大魔王様、この反応は……」

「どうした」


 急にメライアが真剣な顔をする。

 彼女の真剣な顔は何度も見てきたが、おそらく何か危険なことが起きているのだろう。それと同時にアイスも目を閉じて、怯えるように体を丸める。


「この力は危険よ」

「悪いが俺には全くわからない」

「……悪魔が、エーデンが動き出しました」


 そうアイスが恐怖に萎縮しながらも声を絞り出してそう言った。


「ふむ、大妖精を怖がらせるとはなかなかな強者だな。場所はどこだ」

「えっと、ここから三キロ先の……」

「案内しろ」


 そう言って俺はメライアの腕を引っ張り、学生寮を飛び出した。


「え、ちょっと!」


 この時間帯だ。誰も見ていないことは気配で確認済みだ。


   ◆◆◆


 特殊魔導犯収容所にて、俺、魔導特殊部隊隊長エスタ・アンドレイは隊長室にいた。

 俺がいつもしていることはただここで雑誌を見ているだけだ。

 ここに収容されている人物は強力な魔術師であり、危険な存在ではあるが誰も俺に勝てる奴はいない。

 俺は生まれてから負けたことがない。

 別に自分の力を過信しているわけではない。ただ、俺には退屈だったのだ。


「失礼します。エスタ隊長」


 そう言ってノックをしてから入ってきたのは副隊長である。レイ・フィンドレアだ。


「なんだ」

「またそのような雑誌を見ているのですね」


 そう言ってレイは俺の読んでいる雑誌を取り上げる。


「ここの連中は男ばっかりだからな。華が欲しいんだよ」

「だからと言って、堂々とこのような雑誌を読むのはどうかと思います」


 確かに水着の女性が表紙に描かれているためいかにもいかがわしいものであると示しているが、これは男のさがというものだ。こういうものを見てしまうというのは仕方がないのではないだろうか。


「わかったから、返せよ」

「もう持ち込みませんね?」


 そう言ってレイは雑誌を渡してくる。

 その雑誌を俺は大切そうに机の鍵付きの引き出しにしまう。


「そんなところに隠しているのですね。それに一瞬ですが七冊以上はありましたね」


 素早く隠したつもりだが、彼女も相当な魔術師。見破られても仕方ない。


「うるせぇな。それで要件はなんだ」

「こちらです」


 レイが手渡してきた申請書はエーデンの様子を見せて欲しいと言った内容だ。

 まぁ檻の劣化が激しいが、遠くから見る分には問題ない。


「面倒な申請だ」

「全く物好きな教授もいるのですね」

「教授?」

「そこに書いてありますよ」


 もう一度申請書の欄を見る。

 あのリーエルとかいう変人教授か。

 魔術師としては一流なのだが、妙な研究ばかりしているのが気がかりだ。


「まぁ見るぐらいなら問題はないだろう。俺が付き添ってやるよ」

「わかりました」


 その返事を聞くと俺は椅子から立ち上がり、魔導部隊のコートを着て部屋から出る。


 入り口に行くとリーエルが待っていた。


「今日はなんのようで?」

「ああ、ただ観察がしたくてな」

「見るだけならな。こっちだ」


 そう俺は怠そうに歩く。実際だるいのだ。

 このような面倒な仕事を回して欲しくないものだ。俺はずっとあの部屋で雑誌を見ている方が幸せだからな。


「気になってんだが、そのブレスレットはなんだ?」

「これか、生徒がくれたものでな」

「あんたを慕う生徒とかどんな奴だよ」


 どんな面してこいつに慕っているのかわからんが、そいつも相当な変人なのだろうな。

 少し魔力で調べてみても特に妙な力が入っているわけでもなさそうだ。ただのアクセサリーのようだ。


「まぁ危険なものでなければ、持ち込んでいい」

「助かる」


 俺はリーエルのその言葉に引っ掛かりを覚えつつも、エーデンが収容されている場所に案内をするのであった。


「おお、これがエーデンか」

「生命反応はないが、魔力が溢れ続けている。本質的にはまだ生きているんだろうな」

「封印されし高次元の力を持っていると聞く」


 何、この男はその高次元の力を知っているのか。意味のわからん研究をしているのは知っているが、そのことを知っているのは俺だけだ。

 俺の家系だけが知っている情報だ。


「なぜそのことを?」


 知られてどうというわけではないが、先祖が隠し通してきたものだ。きっと何かあるのだろう。


「さてね、巷で流行っている噂だよ」


 そう言ってリーエルは窓にブレスレットをつけている腕を当てた。


「っ!!」


 それと同時に俺のペンダントも反応する。


「これは……」


 強烈な力が檻の中を駆け巡っている。

 この魔導合金はその力に耐えられるよう設計されているのだが、劣化が激しい時にそれをされては壊れてしまう。


「くそっ、下がってろ!」


 俺はリーエルを下がらせて、檻の近くまで行く。

 すると、彼も俺に引っ付くように付いてくる。


「下がれって言ったろ!」

「あぁ、こんな力は初めてだ」


 なんて馬鹿な奴だ。

 そう思った時にはすでに遅かったようだ。

 すでに檻は破壊されており、世界を破滅させるほどの人物が一瞬にしてリーエルの前に立つ。


「馬鹿! 離れろ!」

「これが、これが神の力……」


 何かに取り憑かれているかのようにゆっくりと前に歩き出す。

 そして、一瞬にして体が引きちぎられる。

 そこら中に肉片を撒き散らして、こちらにエーデンがやってくる。


「一流の魔術師を一瞬で倒したのか。少しは楽しめそうだな!」


 久々の強敵だ。勇者と戦った時以来だろうか。

 まぁそんなことはどうでもいい。ちょうど退屈していた頃だ。

 もう一度この国を救うとするか。


「!!」


 エーデンが叫ぶように突進してくる。

 それに対して俺は最大火力の魔術をぶつける。

 強烈な破裂音を轟かせ、地面がひび割れる。


「普通なら死んでいるんだがな……」


 勇者を仕留めた一撃でもエーデンを止めることはできなかった。

 強烈な衝撃を受けたにもかかわらず、直立で立っているだけだ。


「神話級ってそういうことか」


 俺はさらに最大火力の魔術を何度も何度も叩き込む。

 しかし、それでも相手は倒れることはない。それも防御をしている感じでもない。

 なぜ、なぜそれでも立っていられるのだ。

 すると、その攻撃の隙を突いてエーデンは俺の首元につかみかかる。


「なっ!」


 五〇メルほど離れていたのに、一瞬で距離を詰められる。

 エーデンの腕は俺の首を掴んでおり、そこから大量の魔力を注ぎ込まれる。

 先ほどリーエルが引き裂かれたのもこの魔力のせいだろう。

 確かに人間とは思えない強力な力だが、その程度のことで俺を倒すことはできない。


「残念だが、対策済みだ」


 注ぎ込まれた魔力を地面に受け流している。

 これは俺の先祖が考え出した対策の一つだ。

 倒せないと踏んだのか、エーデンは右足で俺を蹴り飛ばす。

 それをなんとか魔力障壁で防いで、俺は体勢を整える。


「仕切り直しってことか」

「……」


 どうやら相手もやる気のようだ。

 俺は今まで扱ってこなかった高度な魔法陣を展開することにしたのであった。

こんにちは、結坂有です。


ついに危険な人物が復活してしまったようです。

そして、最強と言われているエスタ隊長との戦闘はどうなるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。

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