見えない場所での罠
日が出て辺りも明るくなり始めた。
朝の事件から俺たちは一旦寮に戻ることにした。
エリーナの部屋で俺とミリア先生とで話をしている。
「これは以前話していたオカルト的な話をしていたという先生が関わっているのか?」
「えっと、それが……」
「私が話すわ」
ミリア先生が少しいうのを渋っていると、エリーナが口を開いた。
「エリーナ、エビリスくんはまだ生徒だよ?」
「生徒でもこの学院の関係者だからね」
「でもっ」
「いいのよ。教頭先生が妙なことを始めているの。朝に白いものを校庭に埋めてたりとか、学院の地下に頻繁に出入りしていたりしている。それに、この前リーエル教授の代わりに入ってきた教授も研究室に閉じこもったままなのよ」
なるほどな。道理で彼の話題がないわけか。
校庭に埋めていたのは骨や儀式のための素材だったのだろう。ただ気になるのが地下室に出入りしているところだ。
何らかの実験か大規模な魔法の準備なのかはわからないが、危険なことを企んでいるのは確かだろう。
「裏で危険な実験でもしているのかもしれないな」
「うん。その通りね」
エリーナがそう言うとしばらく考えてからミリア先生が口を開いた。
「でもエビリスくんは関わらないで?」
「生徒に危害が加わることがあれば俺も動く」
「……」
俺の言葉に彼女は口を閉ざした。
内心俺を止めたいと思っているのだろうが、強制することもできないから言いたくても言えないと言ったところか。
「それで、エリーナは何か調べていたりするのか?」
「色々と調べたけど、よくわからない魔法陣ばかりだったから」
「俺がいけば少しはわかるかもな」
そう言うとミリア先生が立ち上がって、俺の方を向いた。
「ダメよ。危険過ぎるわ」
「だが、そうする以外はないだろう」
「確かにそうだけど……」
すると、エリーナが手を叩いた。
「じゃ、三人でいきましょう」
「三人?」
「それなら問題ないでしょ?」
まぁそこまで心配するのなら同行してもらった方が安心するかもしれないからな。
兎にも角にも、教頭が何をしているのかを確認しなければ話は進まないのは確かだ。早く行動を起こしていたとて問題はないだろう。
いや、すでに手遅れなのかもしれないがな。
「……わかった。今からなら朝の授業に間に合うわ。いきましょう」
「ふふっ」
そうミリア先生がいうとエリーナが小さく笑った。
「何?」
「決めたらすぐに行動するところ。エビリスくんと同じ」
「同じって、当たり前でしょ。生徒を危険に巻き込むなんてどうかしてるわ」
「その言葉、教頭が聞いたら卒倒するわよ」
ミリア先生に好意を抱いているのはわかっているからな。
好きな相手からここまで言われたら倒れてしまうだろう。
「どういうこと?」
「気にしないで、いきましょ」
そう言ってエリーナは立ち上がった。
それから学院へと向かい、問題の地下室へと入っていく。
「普段、生徒は入らないところだからね」
「そうだな。ここは倉庫として使われているのか?」
「うん。授業で使うものの備蓄が大半だけどね」
確かに魔導具が多く保管されているな。
それらを抜けてさらに奥へと進んでいく。
すると、そこには見慣れない魔法陣がいくつも張り巡らされていた。
「昨日より多いわね……」
「教頭先生は学院の地下で何をしようとしてるのかしら」
二人はこれらの魔法陣を見て驚いている。
これほどの魔法陣の数は見たことがない。だが、魔王時代の頃と比べれば数やその精度はかなり低いがな。
「天候操作、地盤崩壊に空間転移か」
「エビリスくん、これがわかるの?」
「……かなり古い魔法だがな」
「なんでも知っているのね」
「だってエビリスくんは魔族の森にいたのよ? 魔法とかお手の物よね」
そうミリア先生は解釈しているようだが、エリーナに関しては俺のことをある程度知っているからな。
まぁ彼女にも後々教える必要があるだろう。
「とりあえず、あっては困るものだらけだからな。壊しておく」
「大丈夫? 罠とか仕掛けてないかしら」
「確かに仕掛けてあるようだが、何も問題はない」
そう言って俺は右手を払うように振るうと全ての魔法陣が一瞬にして破壊された。
連鎖反応などを引き起こす前に全てを破壊してしまえば、どのような罠だろうと意味はない。
「相変わらず、エビリスくんの陣形破壊はすごいね」
「そこまでではない」
この規模の数千倍の魔法陣だろうと破壊できるのだからな。
それにこの程度の数であれば、人間でも一瞬で破壊できるだろう。
「……っ!」
すると、後ろからある気配を感じた。
「ここで何をしているのですか?」
どうやら教頭がこの地下室に入ってきたようだ。
出会いたくない時に来てしまった。
「嫌なタイミングね」
小声でエリーナが俺に伝える。
確かにその通りだ。
「教頭先生、ここでの魔法陣のことは見ました。一体何をしようとしていたのですか?」
「それはミリア先生には関係のないことです」
「全て攻撃系統の魔法でしたよね。それも軍用の、生徒たちが安全に過ごしている学院の地下で何を企んでいるのですか」
「……」
ミリア先生が教頭にそう追及してすると、彼は黙り込んでしまった。
確かに言い逃れはできないだろう。何かを企んでいることは明白なのだからな。
「以前、お話しした我々の思想には参加しないのですね」
「当然です。教頭先生たちの考えているやり方はこの国を滅ぼしてしまいます」
「そうですか。それなら我々も力尽くで従わせるしかありませんね」
すると、教頭の背後から人間でも魔族でもない魔造生命体が飛び出してきた。
こんにちは、結坂有です。
教頭が企んでいることは何やらきな臭さを感じますね。
それなりに勢力を伸ばしていることから、なかなかしぶとそうです。
それでは次回もお楽しみに。
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