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最深部にて

 基地を制圧して巨大なクレーターの中に進んでいくと、そこは異次元の空間へと変わっていた。


『大魔王様、ここは危険だよ』


 すると、影の中で眠っていたメライアが話しかけてきた。

 確かにこの異次元の空間は危険には間違いない。

 それに妖精の力を借りることは今回もないようだ。


『メライアが怖いというのなら、先に逃げておいてもいい』

『……大魔王様が一人で何をするかわからないからね。私も大妖精としてここにいるよ』


 強がりなのかわからないが、どうやらメライアはこのままついてくるようだ。


『アイスは大丈夫か?』

『はい、エビリス様の行くところに付いていくだけですので』

『そうか』


 アイスも彼女と同じく俺についてくることを選んだようだ。

 まぁアイスに関しては俺の影から出られない以上、仕方のないことだしな。


「何か感じるか?」

「空気が重たいだけで、魔族の気配もないわね」

「私も特にそう言ったことは感じません」


 フィーレもレイも気配を感じないそうだ。

 確かに俺も気配を感じることはない。

 ただ、予感はしている。この先にいる何者かについて、俺は恐怖に似た何かを感じているのかもしれない。

 それからしばらく奥へと進んでいくと、そこには滅紫の空間が広がっていた。

 そして、その奥には見知った人物が立っていた。


「アルク、ここにいたのね」


 そう、そこに立っていたのはアルクであった。

 彼の奥には得体の知れない肉の塊が寝転がっている。


「まさか、ここまでくるとはな。だが、もう遅い」

「何を言っているの?」

「我が先祖にこの魂を融合する。そうすれば、先祖は完全なものになるのだ」


 まさかあの奥にいる肉塊はやつなのか?

 俺はそんな違和感を原動力にフィーレを腕で避けた。


「っ! エビリスくん?」

「ノーレン・エグザリウス……なのか」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」


 俺の知らない言語で肉塊は喋り始める。

 しかし、ニヒルが用いている言語とは少し違うものであった。


「何を言っているのかは知らないが、お前が諸悪の根源だったとはな」

「■■■■■■■■■■」


 あの奥の知らない魔法陣でニヒルという存在を生み出しているのだろう。

 特殊な力で形成されたあの魔法陣はノーレンが開発したもののようだ。

 あの時、勇者を匿ってあげたことは正解だったな。


「エビリス、お前は一体?」

「アルクには用はない。用があるのはその肉の塊だ」


 すると、肉塊がゆっくりと(うごめ)き触手がアルクへと絡まり始める。


「なっ、ご先祖様?」

「■■■■■■■」

「……お望みどおり、この魂をお使いください」


 触手によって肉塊の中へとアルクは吸収されていく。

 肉塊が一体何を言っているのかはわからないが、アルクの言葉から推察するに魂幹融合を行おうとしているのだろう。

 阻止したいとは言え、彼らの周りには特殊な瘴気が漂っているため時間的に不可能だ。


「フィーレ、勇者の力は使うな」

「え?」

「レイ、魔力の制御を怠るな」

「わかりました」


 俺は二人にそう命じて、少しずつ前へ進んでいく。


「それにしてもここまでして、自分の世界を作りたいと思っていたとはな」

「■■■■■■■■■■」


 いまだに何を言っているのかはわからない。

 だが、ノーレンの言いたいことだ。

 俺にはわかる。


「欲望……お前はそれに飲み込まれた愚かな人間だ」


 俺は歪な魔法陣を最大数で展開する。


「エビリスくん! 一体何をしてるの?」

「ここまでの力は使ったことがないがな。この空間なら問題ないだろう」


 俺はフィーレとレイに防御用の特殊な魔法障壁を展開させ、その歪な魔法陣を全て発動させた。

 雷鳴と地響きが同時に起きたかのような轟音が鳴り響き、空気が震えて肺が潰されそうな衝撃波が何度も何度も異空間を轟かせた。


「……ここまでしてまだ原型が残っているとはな」


 それらの強力な魔法を直撃したにも関わらず、肉塊と化してしまったノーレンはまだ蠢いている。

 それにしてもまだ何者かの気配がする。


「エビリス!」


 俺の名を読んだのはシエラであった。


「シエラ?」


 まさか、本部にいたのではないのか。

 だが、彼女がここにいるのは確かだ。おそらく、襲撃があったと同時にこちらに駆けつけてきたのだろうか。


「それだけだと不十分よ。私の魂を使って」

「……魂幹魔法か」

「ええ」

「魔法師として生きていくことはできないかもしれない。それでもいいのか」

「いいわ。もともと私の代でエグザリウスを終わらせたかったの。だから、私は全ての根源である先祖、ノーレンに会いたかった」


 確かこの前にあったとき、シエラは先祖に会いたいと言っていたな。

 彼と協力して何かをしたいということではないのか。

 彼女自身もノーレンについてはよく思っていないのだろう。そして、自分の魂から溢れ出ている魔力を利用して彼を倒して欲しいと言っている。


「■■■■■■」

「シエラ、お前の魂を借りるぞ」

「いつでもっ」


 彼女が目を閉じると、俺は彼女の魂に魔力を繋いだ。


「くっ!」

「全身の力がなくなるような感覚だろう。だが、もう少し耐えてくれ」

「わかってるわ」


 ここまでしてノーレンを倒したいとはな。

 子孫に殺意を抱かれるとは、やはりノーレンは野望に満ち溢れた愚かな人間だったのだろうな。

 しかし、ニヒルの存在を生み出す謎の魔法陣はかなり興味深い。

 一体どのような研究をすればあのようなものが作り出せるのか、不思議でならない。


「シエラがそこまで力を貸してくれるのなら、俺も支配の力を開放するとしようか」

「エビリス様、それはダメです!」

「俺を信じろ」


 すると、時間の流れがゆっくりとなる。

 強烈な魔力が周囲の時間という概念に影響をもたらしているのだ。

 それほどに膨大で強い魔力は俺も実戦で一度も使ったことがなかったな。


「ノーレン、覚悟しろ」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「悪いが、言葉を聞く気にはなれん」


 そして、光が明滅し無音の世界が広がった。

こんにちは、結坂有です。

夜遅くに更新となりました。


まさか、今の時代まで生きていたノーレンですが、一体どうなったのでしょうか。

そしてシエラはどうやら彼のことを悪だと思っていたようです。

果たして、魔王の全力を引き出した結果はいかに……


次回で、この章は終わりとなります。

さらに次の章でこの作品は完結です。エビリスの未来はどうなるのでしょうか。

それでは次回もお楽しみに。



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