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返答に部隊は拒否する

 レイが制圧した兵舎の方に置いてある通信機器を用いて政府軍本部と連絡をするために向かっている。

 その間に次なる作戦会議をしようと俺とフィーレ、それに今は眠っているリーシャの三人は部屋へと向かった。

 部屋に入り、リーシャをベッドに寝かせて覚醒の魔法をかける。


「ん……?」

「起きたか?」

「……私、気を失っていたの?」


 どうやら兵舎の中で気を失ったと勘違いしているようだ。

 精神状態も不安定であったから記憶が曖昧なのかもしれないな。


「ああ、兵舎は完全に制圧した。まだ死体などでひどい状況だが、魔族はいない」

「そうなんだ」


 俺の言葉を聞いてリーシャは納得したかのように頷いた。

 これで話が通じてくれて良かった。

 ほんの少しでも記憶が混じっていれば違和感を覚えるかもしれないのだが、杞憂だったようだな。


「レイは今、政府軍に応援を要請しているところだ」


 すると、リーシャは少し考え込んだ。


「……ほんとに来るの?」

「それは頼んでみないわけにはわからないからな」


 その点は確かに不確定の場所だ。

 もし俺が本部の立場なら応援を送るのが普通であるのだが、どうだろうか。

 本部で何か問題が起きていたのならそう言った判断はしないような気がする。

 ただ、本部の状況を全く知らない俺たちからすれば彼らの事情など知りようがないのも確かだからな。

 そう言った確認のことも含めてレイに連絡を頼んだのもあるのだ。


「エビリスくん、もし政府軍が私たちの応援に来なかった場合どうすればいいのかな?」


 そう、不安そうにリーシャが俺にそう質問してきた。


「俺としてはこのままアルクの暴走を見逃すつもりはない」

「私もエビリスくんと同じ考えだわ」


 すると、横に座っているフィーレも俺の言葉を聞いて小さく頷いた。

 どうやら彼女も俺と同じようにアルクの暴走を許すつもりはないようだ。正義感の強い彼女のなら当然といえるだろう。


「まぁ別に俺としては政府軍の応援がなくとも戦力的には問題ないと思っている。それに対して政府の意向に従う必要もないだろう」


 ただ、俺たちと違って政府軍は人を使う必要がある。

 俺たちは一人でもある程度戦える人たちだが、あの兵士たちは違う。

 大規模な魔法を扱えるわけでも強力な聖剣を扱えるわけでもないからな。

 彼らができることなど限られている。


「ええ、そうよ。私たちにはエビリスくんもいるし、魔力だけであれば人類最高の出力量を持っているレイだっているわ」


 フィーレの言っている事は正しい。

 確かに俺たちが全力を出せば問題なく事態を収拾する自信がある。

 何より、俺が支配の力を再度展開すれば魔王時代の時のように全てをねじ伏せる事だってできない事はない。

 そんなことを話していると部屋の扉が開いた。

 レイが戻ってきたようだ。


「ただいま戻りました」

「どうだった?」


 政府との連絡内容を聞こうとすぐにリーシャが立ち上がってレイに声をかけた。


「はい。ただいま連絡いたしましたところ、政府軍本部の方でも色々と問題が起きているようで、もし良ければこちらの応援に来てくれないかと言われました」

「え? 本部の方で問題?」

「詳しくは教えてくれなかったのですが、どうやら兵舎で起きた惨殺事件が起きたそうです」


 なるほど、やはり兵士の中にニヒルが紛れ込んでいたようだな。

 兵舎の人間があのように一瞬で殺されるなど、普通はないからな。

 それに訓練のない日やどう言った時間帯に人が一番集まるかなども兵士の中に紛れていればすぐにわかるのだからな。

 ただ俺たちのいるこの部屋は全ての兵士に伝わっていたわけではなかったようで、攻撃が行われなかったということだろう。


「ふむ、そちらの状況はどうなっているのかはわからないが、エスタ隊長という人もいるのだろう。わざわざ俺たちがいく必要もない」

「ええ、その通りです。私たちは今アルクの基地と思われる場所に一番近い場所にいます。ここを敵に明け渡してしまえば、ここまでやってきた意味がありません」


 その通りだ。

 何人もの犠牲の上にここを維持しているのだ。

 であれば、俺たちがするべき事はただ一つ。アルクの暴走を阻止することだけだ。


「では、そう言った主旨を本部に伝えてきます」


 そう言って得心した彼女は通信設備のある兵舎へ向かった。


「エビリスくん、私たちだけで大丈夫なの?」


 リーシャはまだ少し不安そうな表情をしていた。

 まぁこれほどの大きな戦いだ。俺たち四人だけでどうにかなる問題ではないと思っているようだ。普通ならそう言った反応をするのが当たり前なのだがな。


「大丈夫だ。俺がいるからな」

「……そういうところ頼もしいわね」


 顔を赤くして俯いた彼女は小声でそう言った。

 その様子を見て咳払いをしたフィーレは俺の方を向いて口を開いた。


「あの、ひとつ聞きたいことがあるのだけれど」

「なんだ?」

「私たちもここで何日も過ごす事はできない。それはわかっていると思うのだけれど、これからどうするのかしら?」


 確かにフィーレのいうようにここで何日も長居する事はできない。

 残されている食料も少ないことから長くても三日が限界だろう。

 それ以上時間をかけるとなれば俺たちの体力がもたないのかもしれない。

 最悪の場合は俺の転送魔法で一気に逃げると言ったこともできるが、それはどうすることもできなくなった場合のみ使うことにしよう。


「ああ、まずは情報を集めることから始めよう」


 そう、戦争で一番大事なのは情報だ。

 情報を制したものが戦争に勝利すると言われるほどに情報というものは重要だ。

 相手がどの位置に陣取っているのか、また戦力はどうなのか、強みとなるものは何なのか。それ以外にも天候や地形なども正確に手に入れる必要がある。


「わかったわ。確かに諜報部隊がいたのだけれど兵舎があの状況だから私たちが全てする必要があるわね」

「その諜報に関しては俺とレイが行うことにする」

「私たちはダメなの?」


 俺がそういうとリーシャはそう言って落ち込んだ。


「リーシャは防衛に関しては凄まじい強さを誇っている。それにリーシャの強さを引き出せるのはフィーレだけだからな。二人がここの防衛にしてくれれば俺としても安心できる」

「なるほどね。エビリスくんのいう通りだわ」


 どうやらフィーレは納得してくれたようだ。

 しかし、リーシャは少しだけむすっとした表情を続けていたが、特に作戦については否定するつもりはないようだ。

 さて、俺たちのするべきことは把握した。

 あとはレイが帰ってきてその作戦を実行するだけとなった。

 政府軍の状況に関しては知る由もないが、何とかうまく解決できることを願うばかりだ。

こんにちは、結坂有です。


夕方ごろにと不定期に投稿してしまっていますが、毎日更新は絶対ですのでよろしくお願いします。


政府軍本部でも何らかの問題が起きているようですね。

ここからは魔王部隊と政府軍とで場面を切り替えながら物語が進んでいきます。

アルクの軍勢に彼らはどう解決に導くのでしょうか。気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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