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魔王は特性を知る

 基地の襲撃を終え、俺たちは司令塔に拘束されていたクリシアナを保護した。

 クリシアナは肩口で揃えられた緑の髪は艶やかで美しく、黒縁のメガネは顔をさらに小さく見せている。

 そんな彼女は今俺たちが寝泊まりしている部屋にいる。

 普通なら軍の施設に送られるところなのだが、フィーレやレイが申告して一時間ほど話時間を作ってくれたのだ。

 ソファでゆっくりくつろいでいる彼女にフィーレが訪ねた。


「聞きたいことがいくつかあるのだけれど、どうしてあそこにいたの?」

「えっと、友達が神の力を信じていて、それで気が付いたらあんな場所にいたって感じかな」


 そう言って過去を思い出しながら、彼女はそう語った。

 確かに貴族学院の中ではそう言ったオカルト的なことを信じている人がいると言っていたな。

 それもかなり多くの人がそれに参加していることもオービスの話からも伺えた。


「なるほどね。あなた、友達想いだからね」

「困ってるところ見たら協力したくなるタイプだから……」


 そう言った性格を逆手にとって引き込まれたのだろうな。

 しかし、それにしてもなぜ彼女が選ばれたかわからない。

 彼女のような能力の人はもっと他にもいるはずだ。


「そう言った一面を利用されたのだろうな」

「みたいだね。クリシアナは優しいもんね」


 すると、リーシャは魔導具の手入れをしながらそう言った。


「優しくないよ?」

「あなたは優しいのよ。もう一つあるんだけどアルクについて知ってることある?」

「アルク? あの人も神の力を信じてる人だったね。なんか勧誘とかいっぱいしてたイメージがある」


 どうやらアルクは貴族学院の中ではそう言ったことをしていたのか。

 迷惑なやつだ。

 何を信じるのもその人の勝手だが、他人に押し付けるのはいけないだろう。


「その人とは話したことあるの?」

「えっと、ここに連れてこられたときに何度か話したぐらいでそこまでかな」


 クリシアナがそういうとフィーレは軽く頷いた。

 確かにアルクはここにはあまり来ていないのだろうな。それはあの基地の状態からして明らかだ。


「俺からも聞きたいことがあるんだがいいか?」

「えっと、エビリスだっけ?」

「ああ」

「進級試験で活躍してた人だよね」


 その通りではあるのだが、俺としては本当はそこまで活躍しているところを見られて欲しくなかったのだがな。

 何やらモニターと呼ばれるところで見られていたようだ。

 あれで日常が少し変わったとも言えるのだがな。

 まぁそんなことはどうでもいい。今聞きたいことは彼女がアルクの軍勢になぜ使われたかだ。


「クリシアナは魔力透過性が高かったりするのか?」

「え? うん、私の家系は魔力の透過性は高いよ」


 道理で選ばれるわけか。

 魔力透過性と呼ばれるのは体の構造が他の人と少し違うということだ。

 それが高いとあらゆる魔力を体内を通してあらゆる魔法や魔導具に転用することができる。逆に低いと魔導具などが扱えなかったりする。

 だから人間の中でも魔導具をうまく扱える人とそうでない人がいる。

 ただ、今の時代では人工的に調整された魔席を用いることであらゆる魔導具でもある程度は扱えるように進化しているからな。

 今となっては魔力透過性などを考える人などいないのだろう。


「エビリスくん、それが高いと何かあるの?」

「ああ、魔力透過性が高いとなれば大型の魔導具に組み込むことで魔力効率を高め、強力な効果を発揮することができる」


 クリシアナの能力を確かめるために、実験としてあのような情報を収集する魔導具に取り付けられていたはずだ。

 事実、それはかなりの効果を示していた。


「私って、そんなにすごい能力を持ってたの?」

「そうだな。魔力透過性が高いと失う魔力も多くなる。自分は魔法に向いていないと思っていたことはないか?」

「あ、うん。そうだけど……」


 魔力が体を通り抜けていくのだからな。

 普通の人よりも体のいろんな場所から魔力が放出され、同じ魔力量だとしても威力が数段下がってしまうことだろう。


「まぁ気にすることはない。魔力制御をもう少し高めればすぐにその性質にもなれてくるはずだ」

「それ、本当? 先生からはずっと魔力量が足りないから威力が少ないんだって言われてたのに」


 一見すれば魔力量が少ないから威力が足りないように見える。

 しかし、その原因を知ろうとしないから間違った指摘になってしまうのだ。根本的な問題を解決できていないのだからな。


「だが、なかなか上達しなかったのだろう?」

「うん。私って才能ないのかなって思ってた。それでリーシャに相談したことあったよね?」

「あ、そうそう。魔力量あげたいなぁって言ってた」


 リーシャはそう言って思い出したかのように頭を上げた。

 効果力を誇る彼女の魔力はニヒルの力もあるのだが、やはり王族であった人の血筋だ。ニヒルとしての力がなくともかなり強力な魔力であるのだからな。

 にしてもクリシアナは貴族学院では結構知り合いが多いのかもしれない。

 こうして聞いているだけで彼女はリーシャと関わりがあったり、友達深く交流しているように見える。


「それで納得できた」

「……魔導具って例えばどんなものを扱うつもりだったのかしら」

「おそらくだが人間を媒体にした大型な魔導具でも使うつもりだったのだろうな」


 大量破壊が可能な大型な魔導具とは昔もあった。

 三人近くの人間を魔導具の中に入れて巨大な爆発を引き起こすと言った恐ろしい魔導具も存在したぐらいだ。

 彼女のような人材を使うのはおそらくそう言ったものを扱うためなのだろう。


「そんなもの使ったら国際的にどうなのよ?」

「……大問題になるわね。ただでさえここまで大きな問題になってるのだから」


 エルラトラム国内でどうにかなっている状況だが、これ以上ことが大きくなれば世界的にも大問題になるのは避けられない。

 そのためにも一刻も早く事態を収拾しなければ行けない。


「エビリス様、そろそろ時間です」


 すると、時計を見ながらレイがそう言った。

 ある程度聞きたいことは聞けたからな。だが、もう一つ聞きたいことがあった。


「最後に一ついいか?」

「何?」

「神の力というものは信じているのか」


 俺がそう聞くとクリシアナは首を振ってそれを否定した。

 そして、彼女は持論だけどと前置きを言って話し始める。


「確かに強い力って存在すると思う。でもそれって神の力なんてものじゃなくてもっと別のものだと思うんだ。フィーレだって勇者の力を授かっているわけだけど、欠点もあるでしょ? だからそんな都合のいい力なんて存在してないと思うの」


 ふむ、全くその通りだ。


「そうか。それが聞けてよかった」

「うん、じゃまたね」


 そう言ってクリシアナはレイと一緒に軍の医療施設へと向かっていった。

 身体的に問題はなさそうだが、一応検査を含めてそう言ったところに行った方がよさそうだろうな。


「大丈夫かしら」


 すると、彼女の背中を見てそうフィーレが呟いた。


「どういうことだ?」

「……なんでもないわ」


 何かを言いかけていたが、それを抑えて彼女はそう言った。

 フィーレも何かを感じたのだろうな。

 俺もクリシアナに対してなんらかの違和感を覚えたのは確かだからな。

こんにちは、結坂有です。


投稿が大変遅くなりました!

申し訳ございません。


クリシアナがどうして魔導具に取り付けられていたのか、そして彼女は一体何者なのかがわかりましたね。

どうやら彼女は魔力を通しやすい体質のようで、色々と苦労していた学生だったそうです。

そして、アルクは彼女のような人を使って何を企んでいるのでしょうか。気になるところですね。


それでは次回もお楽しみに。



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