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魔王は想定外の合流に驚く

 呪術の罠に一時は足止めを受けた政府軍であったが、今は何事もなく目的地へと到着した。

 目的である敵の基地から少し離れた場所に陣営を作り、すぐに攻撃を仕掛ける準備に取り掛かっている。

 こうして改めて人間の戦い方を見てみるとやはり戦略的である。

 魔族のように俺が突撃して、残りの人間を本隊が掃討するというやり方ではない。

 しっかりとそれぞれの部隊に役割があるようだ。

 当然俺たちにも役割が与えられたのだが、自由行動でも構わないと言われた。

 本来であれば俺たち魔王の部隊はなかったのだからな。当然いてもいなくても問題ないそうだ。


「それにしても私たちの立場って複雑よね」

「そうだな。しっかりと動く必要があるが、そこまで重要視されていないようにも思える」

「そうそう、でも仕方ないよね。だって急遽作られた部隊だし」


 確かにリーシャの言う通りである。

 この部隊は急遽招集され、作られた即席の部隊だ。

 何か必要なことがあって結成したわけではないのだ。政府軍からすればシエラが強いと言っていたから、と言う認識に違いない。


「俺たちは俺たちのやり方で作戦を立てるとしようか」

「ええ、そうしましょう」


 俺たち三人は特別に用意してくれた個室で作戦会議をすることにした。

 まだ作戦開始時間まで時間があるからな。

 この余った時間を有効活用しなければいけないのだ。

 個室に入るとすぐにリーシャは椅子へと座った。


「疲れたぁ」

「疲れるようなことしたか?」

「うーん、兵士たちの間を抜けるの気疲れしちゃうよ」


 どうやら厳つい兵士たちの間を歩いてきたのが辛かったのだろう。

 軍に何度か入ったことがあると聞いていたから、てっきり慣れているものだと思っていたのだがな。


「私もそこまで慣れないわね。むさくるしいのはあまり好きではないから」


 ふむ、確かに男である俺ですら圧を感じるぐらいだ。女性であれば尚更と言ったところだろう。


「それにしてもこう言った場所には慣れていないのか?」

「そうね。私たちが配属していたのはエスタ隊長の部隊だったからね。特殊魔導部隊は女性が多いのよ」

「だから、男性が多くいる政府軍とはあまり関わりがなかったんだよ」


 なるほど、それで将軍に対しても話し慣れているようではなかったのだな。

 それにしても特殊魔導部隊には女性が多いのか。

 魔王時代に人間の魔術師は多く見てきたのだが、女性はほとんどいなかった記憶がある。

 今はそうではないのかもしれないな。

 いや、いたがこうして軍に入ることなどできなかったのか……

 いずれにしても人間のことはまだ知らないことが多い。


「それで、どんな作戦にするの?」

「ああ、簡単なことだ。俺が突撃して前線を崩壊させる」

「……頭の悪そうな作戦だけど、あなたならできるのでしょうね」

「これが一番安全だろう」


 俺がそんなことをフィーレに向かって言うとこの個室の扉が開いた。


「エビリス様、ここにいたのですね」

「っ! レイ?」


 扉を開けたのは全く予想だにしていなかったレイであった。


「……どうしてここにいる?」

「色々事情があります。会いたかったですよ。エビリス様」

「寮の守りは大丈夫なのか?」

「はい。教師陣もかなり力が入っていますから大丈夫ですよ」


 確かに教師たちは強力な魔術師である。

 だが、レイほどの力があるかといえばそれは違う。

 とは言っても今学院が攻撃されることなどないのは確かだからな。ここに彼女がきたとしてもそこまで問題はないのかもしれない。


「それならいいんだが……大丈夫か?」


 レイの魔力が以前よりもかなり消費されている。

 全力の魔力球を一発放ったとしても衰えを知らない彼女であるが、どうしたのだろうか。


「人魔融合を行った相手がいて、少し手間取ってしまっただけです」

「なるほど、色々あったと言うのはそう言うことだったのだな」


 すると、レイは人差し指を立てて俺の方へ顔を突き出した。


「ところで、エビリス様。自分だけ突撃するのはいくらなんでも危険です。ここはやはり慎重に攻撃を仕掛けるべきではありませんか?」

「いきなりここに来て何を言っているのかしら」


 俺から主導権を奪ったレイに対してフィーレはそう言った。


「そうよ。作戦に関しては私たちがよく知ってるのよ」


 特殊魔導部隊と一緒だったことから、三人は知り合いなのだろう。


「私とエビリス様は一緒の部屋で暮らしていました。当然、私の方が彼のことをよく知っているのです」


 レイは彼女たちに面と向かってそう言った。


「っ! ふ、二人でなんてことを……」

「別にやましいことなどしていないからな」


 俺がそう弁明の一つを言ってみるが、フィーレとリーシャは疑いの目を俺に向けてくる。

 そんな視線に口を閉じた瞬間、外で大きな爆発音が鳴り響いた。


「敵襲!」


 外の兵士たちが大声を上げて、一気に警戒態勢に入る。

 どうやらこの爆発は陣営の見張りをしていた兵士が戦っていると言うことだろう。

 魔力は這わせて様子を見てみるが、まだ負傷者は少ない。

 今のうちに俺たちが行動すれば死者は出ることはない。


「レイ、魔力球は出せるか?」

「はい。いけます」

「そうか、リーシャは魔力視で対象を確認しろ。そしてフィーレはレイの護衛を頼む」

「わかった!」「ええ」


 そう言うとリーシャはすぐに大きな銃型の魔導具を取り出して戦闘態勢に入り、フィーレは聖剣を引き抜きレイの横に付いた。


「早速向かうとしようか」


 そして、俺たちは個室の扉を開き爆発の起きた場所へと向かった。


 敵襲のあった場所ではすでに何人かの兵士たちが戦闘を開始している。

 相手はどうやらニヒルに侵された魔族のようだ。

 確かに厄介な相手だが、魔法を使ってこない分こちらが優勢と言える。


「レイ、魔力球を展開し魔族の列に風穴を開けろ」

「はいっ」


 俺が合図を出すとレイはあの巨大な魔力球を展開した。

 その魔力球は人型の魔族を飲み込み、一瞬にして消滅させていく。

 すると、列に大きな穴が空きそこを俺が突撃する。


「フィーレは兵士たちの加勢を頼む」

「わかったわ」


 俺はそう言って魔族の列へと突撃した。


「”群なす者に純然たる破滅をもたらせ”」


 俺の言葉と共に支配の力で魔族の列を光に包み込んだ。

 そして、地面が響くほどの轟音とともに彼らを消滅させたのであった。

 それと同時に森も消えてしまったのだが、まぁ問題はないだろう。

 あとは混戦状態となっている場所が問題だ。

 しかし、俺が加勢するまでもなくフィーレとレイ、そしてリーシャの狙撃のおかげもあってすぐに魔族は対処されたのであった。

 もちろん、ニヒルによって操られている彼らは被害者なのだ。

 俺は支配の力をもう一度展開し、その魂を救済することにした。


「エビリスくん、大丈夫だった?」

「あの程度の群れなどエビリス様が負けるわけがありません」

「まぁそう言うことだ。一瞬で方を付けた」


 すると、フィーレはジト目で俺の方を見つめる。


「……もう、エビリスくん一人でいいと思うのだけど」

「俺が得意としているのは超大規模魔法だ。あのような混戦状態ではどうすることもできない」

「だから私たちを兵士の加勢に向かわせたのね」


 とは言っても混戦状態であっても支配の力は敵だけを排除することができるのだがな。

 そうして、俺たちは防衛に成功したのであった。

 死者はなく、負傷者も数人程度とこちらの損害は皆無と言っていいだろう。

こんにちは、結坂有です。


本日二本目の投稿となります。

そして、夜になってしまって申し訳ございませんでした。


アルクの基地の一つに攻撃を仕掛けようとしていた政府軍ですが、先制攻撃を受けてしまいました。

そこでエビリス率いる魔王部隊が活躍したことでそこまで大きな被害を出さずに防衛を成功させました。

そして、これからその基地に総攻撃をかけるようです。さて、戦いはどうなるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



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