おはよう珀夜ちゃん♪ 今日の
「おはよ~~~珀夜ちゃん♪ 今日の調子はどうかしら?」
玄関を出て早々、せっつぇr「せっちゃん、て呼んでね♪」・・・せっちゃんに捕まった。
後に聞いた話ではなんでも同じアパートの別の階に住んでいるそうです。こんなキレイなかわいい方が、こんな場所で大丈夫なのかな?
「おはようございます、せっちゃん。良くもなく、悪くもなく、ですね」
正直に言うと、心がものすごく重い。とんでもなく、重い。たかだか一般人の私があんな大それた力を得てしまったのですから。
とはいえ昨日、せっちゃんと別れてからはその力は一度も発動したふうには見えません。
「それはよかったです~♪」
「・・・聞きたいことが、あります」
意識して使えない危険な力であるならば、それをなんとか制御しなければならない。制御できない力は本当に危険なものであることを私は知っています。なんとなく雰囲気を感じだのか、せっちゃんも真面目になっているよう。
「内容はわかりますが、なんでしょう?」
「渡界の力、でしたか。あれを制御する方法を教えて下さい」
であれば何を利用してでも、何とかしなければ。おとうさんおかあさんの場所もなくなると仄めかされた以上は。
「もちろんですよ~♪」
そんな黒い心にも、せっちゃんはキレイな笑顔を向けてくれた。
「・・・というわけなんです」
「は、はぁ・・・」
とはいえだいぶ楽になったのは確かです。何しろ制御の方法がせっちゃん曰く
「要は、珀夜ちゃんの心の持ちよう。この世界は嫌だだとか、あの世界に行きたいだとか。そういった心に色々なものが反応します」
というものすごくシンプルに分かりやすい内容だったのです。
「もう少し詳しくいうと、横2m、縦3mぐらいの輪っかが特に反応しやすいみたいですね~。
玄関のドアのサイズとかぴったりじゃないですか?」
思い返せば確かに、玄関に手をかけた当時はこの世に、というか日本に辟易としていたところでした。その心に反応した?
「さらに、異世界のものは殆どの場合別世界に持っていけないみたいです~」
このほとんど、の中身が厄介でした。
後日わかったことですが、来ている洋服、大丈夫。スマホ、電気がないからだめで仮に持って行けても使えない。本、ダメ。エンピツ・ノートといった筆記用具、高度なものや電子品でなければ大丈夫。かなり曖昧ですが、着の身着のままと考えたほうが良さそう。
当然ですが分かっている範囲での異世界先から持ち帰れるものもあんまりありませんでした。土とか木とか。税関で止めるぐらいのものですから世界になると当たり前に止めるのでしょう。きっと。知らないけれど。
「それならこういう遊び場があるんだ、って思えばいいのですよ~♪」
せっちゃんの軽い声。たしかに空き時間なんてたっぷりあることですし、楽しまないのは損かもしれません。
「ちなみにですが、渡界の力は生死に影響を与えません。渡界先のルールによって、その生死が決まること。忘れないでくださいね~♪」
「は、はぁ・・・」
この天使、最後の最後になんて爆弾を放り込むの!?
†
そうともなればやることは唯一つ。
今の世界にあまり未練はない以上、どこでもいいから世界を渡ってみることです。
「とはいえ、いきなりわけのわからない場所に行くよりは」
前回?落ちた?あの世界が良さそうです。結局どこまで落ちたのかはわからないままですが、ここにこうしている以上そう酷いことにはならないのでしょう。たぶん。きっと。ええ、おそらく。
「お願い。聞こえているなら、前のあの世界につなげてくれる?」
端から見れば変な人だと思います。ドアにお願いする人なんてそうそういないですから。けれど私がまず第一歩を、私が踏み出すのだという意識を持っていることが今は大事なのです。
ごくり、と唾液を飲み込み、ドアに手をかけます。
「よろしく、ね?」
ふと脳裏に浮かんだ男の子が、微笑んでいてくれた気がしました。
ーーーガチャリ
「ふあぁぁぁ!!??」
やはり目の前に浮かんだのは森と砂漠と、よく見るとあれは沼? が広がる土地。環境が全く異なる空間が隣接してしまう異質な世界でした。
それでも、何も知らないことはとても・・・おもしろい?
うん、きっとおもしろいのでしょう。忘れて久しい感覚でちょっとくすぐったいのですが。
「とはいえ、ココに来て何をすれば・・・うん?」
ココに来て何をすればいいのか、なぜか分かります。分かるのですが今の私にはちんぷんかんぷん。"知っている"だけの状態ってこういうことを言うのでしょうね。
ともなれば、やってみるしかないか。
「輪っか状に繋がっていればいいってせっちゃんは言っていたけれど、玄関のドアである必要ないのは良かったのかな」
それでも慣れたドアが壊れるところはあまり想像したくは有りません。すぐさま拠点か砦、最低でも家もしくは壁を作成するべきでしょう。
「そうともなればまずは・・・」
樹を刈るところから、スタートね。素手でいけるかな・・・
・・・
・・・・・・
なだらかな丘の上。遠くには砂漠と森。へんなところ。
丘の上で作業をするは神凪 珀夜という一人の女性。
数奇な運命により出会えたはせっつぇるという不思議な天使。
この後彼女たちがどうなっていくのか。それはこの後の話で明かされることだろう。
2020/01/26 公開部分間違えてました・・・
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