---Prologue---
---あなたは、こう思ったことはないだろうか・・・
「はぁ、今日も残業残業。会社様さまだわちくせう」
いつものことだけれども、私は独りごちる。
途中で最寄りのスーパーに寄る。晩御飯を調達しなければならない。
・・・生きるために。
「とは言ってもなぁ。なににしよう」
緑色のかごを片手に、惣菜コーナーから回ることにした。夜も遅いせいか数も少なく、目に留まるようなものもないのだが。
惣菜には見切りをつけ、作る方向に意識を向ける。手軽に鍋、もしくは魚あたりが候補かな、と思いはしたもののやはり手が動くようなものはそこにはなかった。
ここまで興味がないのも久しぶりである。しょうがない、ブロックでいっか。
---世界なんて、くだらない。
「ただいま~っていっても誰もいないし」
1Kの狭い部屋。おふろこそ専有区域にあるもののとても浸かれるような代物ではなかった。
ただ安いだけ、寝るためだけの部屋でしか、私にはない。
そのままかばんを放り投げ、布団---正確にはまくらに倒れ込む。
「つかれた、ね」
すこし目を瞑り、今日あったことを思い出した。
---周りはみんな敵だらけ
「ああ大変大変だー」
リーダのくせに振らないで抱え込んで何を言ってるんだか。責任者に割り振れと言われてようやくタスクを振り始めるのが業務時間終了間近。そのうえ
「何をやっているんだおまえはっ!」
課長の怒号が飛ぶ。
「もうしわけっ ありませんでしたぁっ!」
関わった案件が大赤字だとの叱責だ。
案件自体を取ってきたわけでもなく、リーダでもない私が、営業やリーダの代わりに叱責を受けるのはただ私が女だからでしかない。
・・・元にその二人となりでニヤニヤしてるし。たかだか末端のヒラ一人が頭下げて何になるのやら。
「もういい、君には退職してもらう」
・・・もういい、構わない、願ったり叶ったりだ。
「承知しました、この後社長に挨拶に伺います」
「必要ない、このまま出ていきたまえ!」
・・・めんどうくさい。
---関わりなんていらない
ひとしきり泣いた後に顔を上げた。
「・・・さびしい、ね」
ただひとつ、頭の方で転がっていたねこさんぬいぐるみを抱えこむ。
生きることだけなら問題ない、まだ貯金は残ってる。
けれど、私はだれかに必要にされているのかな・・・?
これは、一人の女性の物語。
ここからはじまる、異色の世界の話である...
なんとなく、初めてみます。