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第5話 洞窟モンスター、その1

 山に入ってから洞窟までは、そう時間がかからなかった。いや、いくらなんでも簡単に到着しすぎだよこれ。


「あるよね……細かい描写省いちゃったばっかりに、過酷さが減るパターン」


 書きたいシーンのことで頭いっぱいになっちゃって、過程が雑になりすぎちゃった的な……。


「この洞窟から魔力を感じるパン! モンスターがいるパン!」


 ねぇパンスター。ちょっとリアクションが適当すぎない? 


「うーん、一応もう一個の能力使っとこうかな?」


 ふと思う。能力って言うのとスキルって言うの、どっちがそれっぽいのかと。まぁ、どちらもこんなファンタジー世界に日本語と英語(あるはずない言語)なんだけど……普通に通じるのがそもそもおかしいよね。小説読んでる時にそういうところが気になって仕方ない人って、どのくらいいるのだろうか。


「どんなモンスターなんだろ。こんなにイージーに行けるなら、能力紹介の噛ませ役程度かな?」

「モンスターを噛ませ役と言い切るなんて、成長したパンねぇ。出会ったばかりの頃なんてビビってお――――」

「よし、洞窟入るぞ!」

「出会ったばかりの頃――」

「よし、洞窟入るぞ!」


 いいかパンスター、その先は言うな。


「うーん、なかなか暗いね」

「洞窟なんだから、当たり前だのパン」


 前だ「の」ってなんだよ。


「いやヒカリゴケとかないのかなって。ファンタジーっぽいじゃん」

「ファンタジーってなんだパン」

「いや……えっと……」


 この世界、日本語や英語が通じるくせに、時々こうなるから本当にめんどくさい。


灯り(ライト)


 『灯り(ライト)』の掛け声とともに、ポワンと浮かぶ白い光の球。これは小生が努力して身につけた、この世界の一般的な魔法。


主人公に近づく(センターポジション)


 追加でスキル『主人公に近づく(センターポジション)』を使うと、全身に力がみなぎった。これは小生の固有能力。そして、説明するとちょっと長くなる能力だ。一言でいうなら強くなる能力なんだけど…………細かく話を聞いてくれるという親切な御仁は、もうしばらく小生の話にお付き合いただきたい。


 小生のメインの能力『小説家になりたい(アイ・ワナ・ビー)』は、この先の筋書きを予測する魔法である。そしてその予測の一致率が70%を超えると、未来を書き換える時間が与えられるのだ。そして95%を超えた場合『主人公に近づく(センターポジション)』という体力、戦闘力、魔力量の増加、そしてそれらを()()()()()()()()()()が与えられる。まぁ簡単に言うと、未来をしっかり予測できれば、ごきげんなパワーアップタイムがどんどんレベルアップするってわけ。

 とはいえ未来、つまりこの世界を形作る小説の先なんて予測しきれるわけもなく、まだ『主人公に近づく(センターポジション)レベルアップ』を獲得てきたのはわずか三回……。ちなみに、この能力は一回使うと三日くらい使えなくなるんだけど、初獲得の時は一度使うと三週間くらい使えなかったし、強化タイムも五分くらいしかないしと結構使えない能力だったのだ! 二回目もそれがちょっと伸びた程度。使えるレベルになったのは、本当に三回目で――――――――以上、解説終わり!


「ずいぶん早く主人公に近づく(センターポジション)使うパンね」

「多分いきなりボス出てくると思うよ。ずいぶん端折った流れだったし」


 小生の能力の弱点は、人目につくところでは発動できないということ。『灯り(ライト)』のような頭と経験で覚えるものは、いつでも使えるんだけど『小説家になりたい(アイ・ワナ・ビー)』絡みはどうもだめみたい。多分、魔法とスキルは似て非なるものなのだろう。


「あ、誰かいるパン!」

 

 そういえばパンスターは、人目に入んないんだね。能力の一部みたいなものだし、それでいいのかな?

 

「通常戦闘で倒したいところだね。まぁ今、主人公に近づく(センターポジション)の効果一時間くらい続くし、余裕じゃない?」

小説家になりたい(アイ・ワナ・ビー)は使わないパン?」

「一致率低かったら最悪でしょ」


 そう。『小説家になりたい(アイ・ワナ・ビー)』は、予測することで結果の出るスキル。つまり予測が外れれば当然ペナルティがある。なんというか、そんな酷いペナルティではないのだけど、無いにこしたことはないからね。はぁ、なんか小生の能力ってほんと面倒だな……。


「ふん、我の前に現れおったのは誰かと思いきや、ちょっと強化された程度の人間か。まさか貴様、ちょっと強化した程度で我を成敗しに来たとか言うんじゃないだろうな」

「えっ……」


 血のように赤い瞳。頭に二本生えている、羊みたいなうねった角。そして――――露出した肌を埋め尽くす、赤黒い模様。


「ヤバいパン! 模様が超多いパン!」


 う……一応青い地肌は見えてるけど、全身の三分の二くらい赤い模様だね……。一節には、模様が多ければ多いほど力を持った魔族だとか。


「よし、撤退!」

 

 かっこよさなど求めてはいけない、生き残りたいのであれば。


「まぁ待て人間」

「いぎっ」


 嘘、足が…………動かない? まさか今の言葉自体が、魔力を帯びてるっていうの? っていうかさ、なんでこんなラスボス級がいきなり出てくるのさ! 超展開すぎないかなぁ!


「我が質問しているのだぞ? 人間風情がこの我を成敗しに来たのかって我は聞いておる」


 なんかこの魔族さん、喋り方不安定だな。我々言い過ぎでしょ。作者さん、こういう喋り書くの苦手なのかな? っていうか、それどころじゃないですね今。とりあえず、言い訳しよう、そうしよう。


「いえ、病気の子がいて薬草を――――」

「独占する魔族を倒しに来たパン!」


 だああああああああ! 妖精が余計なこと言って避けられなくなるパターン!


「おい人間貴様、妖精持ちとはなかなかやるな? 我の前に現れた妖精持ちの人間ははじめてだぞ?」


 だめだ、喋り方が気になる……。


「妖精には手を出してはいけないパン!」

「ああ、もちろん我はその不文律は知っているぞ。妖精は世界自然の神秘の一端だから、危害を咥えるべからずってやつを我は理解している」


 小生そんなこと初めて聞いたんですけど! うう、絶対この世界の作者、思いつきで設定足してくタイプだよ……。


「我に名前を聞かせろ、愚かなる人間よ」


 うーん、今のところは「名前を」じゃなくて「名を」のほうが引き締まると思うんだけど。


「る、ルーリーです」


 フルネームはやめておこう。アルデンテここに死すとか悲しすぎる…………。うん、のんきに考えてる場合じゃないよ。小生、大ピンチですよ!

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