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少年、罪過を喰む -弐ノ章-  作者: 藤崎湊
FILE1 青の鋼
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摘発捜査報告書




「大変です、ボス! 目黒が逃げました!」

「何だと!?」

「すぐに追え!」


 連行中に躓くふりをして体勢を崩し、捜査官に頭突きをかましそのまま逃走したとの方向を受けた亜紀たちはすぐさま検索に入った。

 万が一自分の身が危うくなったときは、迷うことなく自分の命を優先させるように指示も出す。

 だが組織犯罪は下っ端ばかりを捕まえても、上が見つからなければ鼬ごっこの繰り返し。

 目黒を手に入れておけば、それ以上に大きな組織を摘発する糸口が見つかる可能性も出てくる。それ故、本音を言ってしまえば、命はあって欲しいところなのだが。


「――うっ……」

「蒼くん?」

「どうした?」

「いえ、ちょっと頭が……っ」


 慌ただしい現場の中、蒼斗はキリキリと痛み始めた頭に思わずこめかみを押さえた。

 駆け付けた救急に花園を託し、サイレンを鳴らしながら去って行くのを見送った亜紀たちは蒼斗の異変に表情を曇らせた。

 血の気が瞬く間に失せ、一人で立っていることもできなくなった蒼斗はそのまま後ろに倒れた。


「ちょっと、僕は野郎に寄りかかられて喜ぶ趣味はないんだけど」

「そんなこと言っている場合か! っ、おい蒼斗、しっかりしろ!」

「蒼君、蒼君!? どうしちゃったの!?」

「千葉! 早く!」


 文句を言いつつ蒼斗の身体をしっかり受け止めた瀬戸。

 頭を抱え苦しみもがく姿を見るのは初めてではないが、これほどまでに荒れたものではなかった。――亜紀以外は。

 亜紀はAPOCの総帥としての自分と蒼斗が処刑台で初めて出会った時のことを思いだした。

 当時、治安維持局の特別機動隊の隊長を担っていただけあって一筋縄ではいかないと判断した結果、亜紀は狂魔弾を蒼斗の心臓に向けて発砲した。

 あの時の苦しみは狂魔が受けたようなものではなく、規格外の苦しみ方だったのをよく覚えている。



「っ、ああああぁあぁあああぁぁぁぁああ!!」

「千葉!!」

「今やってる!」


 千葉は白衣の内ポケットから一本の注射器を取り出すと、悲鳴をあげる蒼斗の腕に突き刺した。

 無遠慮な千葉の行動に仰天させた亜紀たちをよそに、麻酔を打ち込まれた蒼斗は次第に呼吸が穏やかになり、開き切った瞳孔は元に戻りつつあった。

 打ったのが鎮静剤だと分かった時、ぐったりとそのまま蒼斗は力尽きたように気絶した。


「一体どうなってんだ……」


 瀬戸の膝元で眠ってしまった蒼斗。

 瀬戸は一度天を仰ぎ盛大に舌打ちをし、「なんで僕が……」と愚痴を漏らしながら蒼斗を担いだ。

 見世物じゃないんだけど。それより早く目黒を探しな。

 ――と、半ば八つ当たりのように蒼斗を運ぶ瀬戸の背を見送り、亜紀は妙な胸騒ぎを感じていた。



 ――あの苦しみ方は、狂魔弾を撃たれ蒼斗が死神として覚醒した時と全く同じだった。あの後、蒼斗の手に死神の印である痣が浮かび上がった。

 つまり……。



「御影は、倒れたんだ……それなのに、こんな……」

「亜紀ちゃん……」


 払拭できないこの不安。

 全て終わったはずなのに、どうして『これから』が始まってしまいそうな悪寒がするのだろう。

 これも、蒼斗と契約した影響なのだろうか?




   ◆




 捜査報告書

 ルデラリス密売におけるドープス摘発について

 

          アポカリプス総帥 東崎亜紀


 見出しの件については下記のとおりであるから報告する。


           記


(一)摘発対象

   被疑者 ドープス及び筆頭目黒龍一郎

(二)摘発押収物件

   ルデラリス一二五キログラム

(三)摘発経緯

   本件は影暦二〇二九年、A地区にてに発生したAPOC総帥東崎亜紀暗殺及び星霜院襲撃事件に付随する事件である。

   本職らは、被疑者が狂魔増殖剤であるルデラリスをオリエンスから密輸する情を入手し、捜査に当たった。

   〇月×日、A地区姫百合埠頭にて取引が行われることを知った本職らは、現場に向かい、ルデラリスの取引現場を現認し、摘発対象と認め強制執行に至った。

(四)摘発結果

   目黒龍一郎(後に被疑者と判明、以下被疑者と呼称)が所有する船のコンテナに積まれていたルデラリス一二五キログラムを押収し、生存していたドープス組織員三名を捕獲。

   また、人質としてされていた星霜院院長花園香織、高須雪兎を保護。

   捜査官負傷者二名、死者〇名。

   被疑者にあっては、捜査官らに暴行を加え現場から逃走。

   現在も未だ捜索中。






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