ご
あれ?あれ?何故ここにセバスさん?今さっきお別れしたばかりだと、思ったんだけど。呆けてセバスさんを見ていたら声をかけられた。
「部屋に入っても、宜しいでしょうか?」
「あ!はい!どうぞ」
しなやかな獣のように、セバスさんは部屋にするりと入ってきた、その間ずっと私の顔を見つめながら。
なんだか雰囲気が違って落ち着かない、こんな人だったっけ?さっきから頭の中にクエスチョンマークが飛び交っている。
パタンッ・・・・・・カチャ。
扉が締まり鍵の音がやたら大きく響いた。
「サーシャ?それとも今は何と呼べば?」
あ、やっばり人格が違うって気がついたか。
「セバスさん、さ、サシャ・・紗々と言います」
「紗々」
セバスさんが、私を抱き締めた。
「紗々・・捕まえた」
「んっ!」
背が高いから余計に抱きすくめられる、そこで話し掛けられると耳の後ろに吐息と声がかかり、身体がビクッと反応する。
首から背中、背中から腰にビリっと電気が走るように甘い疼きが駆け抜ける。
抜け出そうにも、抱き締められる力は強くて、甘い空気を誤魔化すように尋ねる。
「せ、セバスさん?どうしてここに?それに私はサーシャじゃないですよ?」
「貴方はサーシャであって紗々です。迎えに来ました」
「え?!アシュタルトの所へ戻るの?」
「まさか・・」
アシュタルトの名前を出した途端、部屋の気温が下がった気がする。底光りする瞳に身動きもでかない。
「私の元へ来て頂けますね?」
「は、はい」
「その前に、紗々の中の心臓を戻しましょう」
セバスさんが、蕩ける笑みで恐ろしい事を言う。また、あの痛みを味わうのかと、ギュッと目をつぶり覚悟すると私の唇にセバスさんの柔らかな唇が重なった。
「ん!んーーー!」
キスされた!パニックになっていると唇が離れて・・。
「あれの心臓を交換するのに、紗々には痛みも与えませんよ」
告げられた瞬間、眠りに落ちた。
目が覚めると見渡す限りの青い花畑、ネモフェラに似た可憐な花の群生が風にそよいでいる。
セバスさんは何処に?確か心臓を交換っていってたはず?。そんな事をぼんやり考えていると、ちょっとした違和感を感じた。
あ、魔力が無くなってる。
魔力を手に入れたのも、無くなるのも早かったな。
ということは、セバスさんはちゃんと私の心臓と悪魔の心臓を交換してくれたのだ。もう、突然に悪魔の代わりに死ぬ事もない。立ち上がり、スカートについた土や花びらを落とす。
ふっと影が出来る。
見上げるとセバスさんが居た。
「おはようございます、紗々」
「おはようございます?セバスさん」
花畑の中、セバスさんは私を抱きしめるとそっと囁く。
「好きです紗々、どうか私の伴侶になって下さい」
「こんな私でよかったら、喜んでお受けします」
セバスさんが微笑んでくれた。