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scene7 特技

挿絵(By みてみん)


下校時間。


英語のテストなんて出来るはずもなく、隣でポケットに手を突っ込んで歩いているユウは、昨日と同じく100点だったらしい。

全くどういう頭しているのだろうか。


「ふたりとも!ちょっと待って!」


振り向くと、ヤマトが急いで追いかけてきた。


「あれ?ヤマト、部活は?」


「今日は休んだ」


「いいのか?来月、県大会じゃなかったのか?」


「1日ぐらいいいの。先生にも言ってあるし。それより、朝のコンテストの応募用紙書きに行こうぜ!」


何故かヤマトがノリノリ。

明るくて何事も積極的なのが彼のいいところだった。

それに対して、その正反対なのが私のカレだった…。


「またその話か」


すでに面倒くさそうである。

ヤマト、頑張れ!


「とりあえず応募してみようぜ!俺一人だと寂しいしさ。応募しないなら、付き人でいいよ。俺の芸能人デビューにぜひ立ち会ってくれよ」


ヤマトが懇願。

そんなに芸能人になることに夢を持っていたなんて知らなかった。


「付き人って何だよ。お前がそこまで言うなら、俺もやってもいいぜ。ただし、様子みて、おもしろくなさそうなら、すぐ辞めるぞ」


やった!

とりあえず一歩進んだ!


「よし!決まりだな!サオリちゃんも良かったね!」


「ユウもヤマトも絶対受かるよ!」


本当に受かると思う。

ユウは話さなければ、誰にも負けないぐらいイケメンだ。

むしろモデルという職業は、ユウにはうってつけなのかもしれない。


「頑張ろうな!ユウ!」


張り切っているのはヤマトで、ユウは依然あまり乗る気ではないらしい。


「とりあえず応募用紙書かないとな」


「ネットでも受け付けてるって書いてあったよ。また駅前の喫茶店で書こうよ」



店に到着。

マスターがココアとコーヒー2つを運んで来る。

今日はアルバイトが休みらしく、マスターしかいない。


ココアとコーヒーが運ばれてくる間に、応募項目はスラスラと進んだ。

スマホからネットに繋ぎ、項目を一つずつ消し込んでいった。


「特技…?」


「モデルはただ写真取られるだけなのに、特技とか必要なのか?」


「さあ…今後の芸能活動のためだろ」


読者モデルなのだから、その後必ずしも芸能人になれるとは限らないのだけど、盛り上がっているから、横から水を差すのを止める。


「単語の暗記」


「そんなテキトーな感じでいいのか?」


コンテストで、きっとこの特技の披露もあるんじゃないだろうか。


「投票するのは女性だから、女の子がキュンとくるような特技の方がいいんじゃないかな」


「お、サオリちゃん、いいカンしてるね!」


「特にないな」


考える素振りもなく、ユウが答える。

この人、やっぱりやる気ないな…。

それに対してヤマトは、腕を組んで考え込んでいる。


「俺はやっぱりバスケだな!3ポイントシュートが得意って書いておこう」


確かに運動が出来る男子は得点が高い。

バスケだろうと、サッカーだろうと良いと思う。


「ユウは?」


「特にないって」


「特にないって書いたら落選だろ。何かあるだろ。サオリちゃん、考えてあげてよ」


さっきから考えているんだけど、私もユウの特技が分からないでいる。


この人、いつも何に打ち込んでいるんだろう。

ユウのことは好きだけど、実はユウのこと、知らないことの方が多いんじゃないかと、少し不安になった。


「勉強!」


ヤマトが思い出したように言った。

今日も英語100点だったしね。

でも勉強が得意ってハードル上がるね。

東大でも入れる人が言うセリフだよね。


「ユウは落ち着いているから、インテリな感じで攻めた方がいいんじゃないか?」


「それはアリかもね!」


「でも勉強が得意って何かムカつく奴だな」


確かに。

もう少し謙虚な特技の方がウケはいいはず。


「じゃあ百人一首は?」


「なにそれ?お前、そんなの覚えてんのか?」


ヤマトは信じられないというような感じで答えた。

ユウは本が好きで、昔の文学にも精通し、百人一首なんて昔からソラで言える。


…よかった。ユウのこと、知ってることの方が多いみたい!


「花の色は うつりにけりないたづらに わが身よにふる ながめせしまに」


不意にユウがそらんじた。


「何だそれ?」


「小野小町。俺が1番好きな歌」


「いいね!百人一首にしようよ!女子は和歌にあるような微妙な感情ものが好きなんだよ」


盛り上がっていたら、ココアがすっかり冷めてしまった。

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