scene4 チラシ募集
「30個覚えたら終わりだな」
「えー!そんなにやるの?絶対むり!」
「ちゃんとやっていれば覚えるよ」
ユウはノートと教科書を取り出して、覚え始めた。
喫茶店は、小洒落た洋画の飾ってある、少し古びた建物だった。
この辺りでは、喫茶店といえばここであり、私達はよくここを利用する。
「あ、待って!まず喫茶店に入ったんだから注文しないとね!私ココアにしよっと。ここのココアおいしいよ」
「じゃあアメリカンコーヒー」
忘れてた。
ユウはコーヒーが好きなんだった。
高校生のくせに生意気だな。
でもちょっとコーヒーが画になってしまうのが悔しい。
注文した後、コーヒーとココアが出てきて、1時間ぐらいが経った。
やっぱり無理だ…
全然おもしろくない…
教科書越しにユウを見ると、ユウは携帯をいじっていた。
「あー!サボってる!」
「俺はもう覚えたからいいの。早く覚えないとココア冷めるよ」
「分かった!でもとりあえずちょっと休憩ね」
出入口付近にあった雑誌を持ってくる。
雑誌なんて普段お金無くて買わないから、こういうときに一気に読んでしまう。
ペラペラとめくっていると、男性読者モデル募集という記事が目に入った。
読者モデルって、シロウトの読者が雑誌のモデルとして出る、副業みたいな職業のことだ。
シロウトでも、一応はモデルなんだから、それなりに外見が良くないとなれない。
「何見てんだ?」
ユウが私の本を指で押さえて、チラリと覗く。
「読者モデル?」
「そう。ユウなら出来るんじゃない?まあまあイケメンだし、背も高いし」
まあまあっていうのは、嘘。本当はすごくイケメンだけど、そんなことは言えない。
「そんなのやって何になるんだ?興味ないね」
「んー、アルバイトみたいなもんじゃない?でもそこから芸能人デビューとか出来ちゃうかもよ?」
「芸能人なんて、ますます興味ないね」
全く浮き世離れしている人だこと。
一度はみんな、有名人には憧れるでしょ。
「高校生でもなれるって書いてあるよ」
チラリとユウを見た。
ユウはもう自分のケータイをいじっていた。