scene3 下校
「ユウ、一緒に帰ろーよ!」
「ああ。」
帰りもいつも同じ。
たまにヤマトが混じる。
部活はユウも私も特にやっていない。
ヤマトはバスケ部。見た目通りの運動野郎。
ユウは正反対で、どちらかというと文芸部っぽいけれど、運動は出来る。
「ねぇ、図書館で何読んでたの?」
野球部がノックで練習している横を、並んで歩く。
ユウの鞄はいつも何も入っていないようで、薄くて軽そうだ。
「何でもいいだろ」
いつもちょっと照れて隠す。
タイトルを言われたところで、どーせ分からないけれど。
また哲学書とか小難しい本でしょ。
全校生徒のうち、おそらくユウしか読んでいないであろう、哲学の本棚や、文学の本棚が彼の主なテリトリーだ。
「サオリ、英単語出来たのか?」
「出来るわけないでしょ!点数聞かないでね!」
「30点だろ。自分で言ってたじゃん。みんな点数悪かったからたぶん明日もやるんじゃないか?抜き打ちテスト」
「えー!覚えるの面倒くさいなぁ」
「一緒にやってあげるよ。あんなの覚えるだけだから」
「じゃあ駅前の喫茶店いこうよ!」
ちょっと嬉しい。
英単語覚えるの面倒くさいけど、ユウと一緒なら少しは覚えられるかも。
駅前の喫茶店まであと10分ぐらい。
確かあそこのココアは美味しかったはず。
お礼にユウに教えてあげよっと。