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scene19 コンテスト⑤ ネット投票

挿絵(By みてみん)


コンテストが終わり、会場に集まっていた人達は解散していた。


私とアキちゃんとヤマトは、ユウとリュウジを待つため、しばらく会場に残っていた。


ネットを確認すると、すでにコンテストの動画が配信されており、ネット投票も始まっていた!


「ここに載るだけでもちょっと有名人だな」


ヤマトが羨ましそうに動画を見ていた。


モデルというよりも、有名人になりたいなら、きっと他にも方法があるよ、ヤマト。



私達以外の入場者は、誰もいなくなり、とうとう3人だけになったが、会場のスタッフは片づけに忙しく、私達に誰も帰りを促す人はいなかった。


「私達もそろそろ出ようよ。近くのスタバでユウくん達を待っていようよ」


真面目な性格のアキちゃんは、私達が残っていては、スタッフの人達に迷惑がかかると思い、退場を提案した。


「そうだね!ユウにLINEしても返って来ないし、たぶん打合せか何かしてるんだね!」


会場を後にした私達は、近くのスタバに入った。

時計は16:00をまわっていた。


「バック転なんて、よくやるよな」


ヤマトはコンテストの動画を見ながら言った。


そこにはユウのバック転が映っていた。


「ヤマトくんも何か秘策を考えてたの?」


大好きなレモンティーを飲みながら聞くアキちゃん。

お行儀の良いアキちゃんが、ストローを口にくわえながら話す姿は、初めて見た。


「ウォーキングに必死で、そんなことまで考えてなかったよ」


ヤマトらしい回答。

でもウォーキングは1番練習していただけに、1番上手かった気がする。

素人目線だけれど。


「リュウジに負けたのが1番悔しいな!」


心底悔しそうに言うヤマト。

でも素直に負けを認めているのが偉い。


「投票差は分からないけれど、ヤマトくんも絶対いい線いってたよ!」


「そうそう、ウォーキングも1番上手かったと思うよ!」


確かにいい線はいっていた…はず。

敢えて言うなら、あの輪廻─ロンド─のメンバーの直後の出番だったのが、ヤマトの不運だった。



ネット投票の投票期間は、明日の24:00まで。


途中経過は非公開で、最終結果だけが、その翌日に開示される。


会場に来ていない人達の票は、コンテストのHPで、編集された動画を見て投票する。


やるべきことは全てやった。

あとは、結果を待つだけ。



「どこにいるの?」



やっとユウからLINEが来た!

ユウをスタバに呼び出し、すぐに合流した。

リュウジはそこにはいなかった。


「おつかれさま!とりあえずこれ飲んでよ」


ユウの到着に併せて、ユウの好きなブラックコーヒーを頼んでおいた。


「…ありがとう」


「ユウ!どうだった!?あの後」


コーヒーを飲み終わらない内に、ヤマトは話の横槍を入れた。


「ああ…トニー事務所に所属することになった」


「なにっ!?ホントかユウ!!やったな!!」


ヤマトは自分の事のように喜んだ。

事務所に所属ということは、モデルになれたってことでいいのかな…?


「まずは期間限定で。1年契約で、結果が出なければ更新しないそうだ」


「すごいね!ユウ!まだコンテストの結果が出てないけど」


「決勝に出たメンバーは、みんなモデルにスカウトされてたよ。リュウジも同じ。コンテストはそれが目的だったのかもね」


「これからが楽しみだな!」


「とにかく、おめでとう!」


「…ありがとう」


ユウはいつも通り表情がなかったけれど、きっと嬉しいに違いない。


コンテストの結果なんて、もうどうでもよくなってきた。



*******



ユウがコーヒーを飲み終わり、外を見ると、日も大分落ちかけていた。


「じゃあ気をつけて帰ってね!アキちゃんも今日はありがとう!」


「私も楽しかったよ!ユウくん、頑張ってね!ヤマトくんもまだまだチャンスきっとあるよ!」


「ああ、すぐユウに追いついてやるよ!モデルの仕事決まったらすぐ連絡しろよな!」


濃い長い1日が終わり、それぞれ帰路に着いた。

ヤマトとアキちゃんと別れて、ユウと2人だけになった。


「マネージャーの人とか決まったの?」


何かを考えている様子のユウの横顔に、何を考えているのか当てたくなった。


きっとこの先のモデルのことに違いないが、まるで違うことを考えているのかもしれない。


「ああ、岐部さんって言って、遠藤マサトのマネージャーだよ」


「あの人!」


「そう、あの人。リュウジも同じで、コンテストに出たメンバーはみんな岐部さんじゃないかな」


「あの人マネージャーだったんだね!もしかしてやっぱり、あの人がユウの事推してくれたのかな?」


「さあ、どうかな。あの日の事は、一言も出なかったけど」


「まあ、みんなの前では言えないよね」


「来週の火曜日に、早速事務所で打合せがあるんだ」


「火曜日!?コンテストの結果が出る当日じゃん!早いね!じゃあホントにコンテストは関係ないんだね」


「そうだね。あれは単なるイベントだな」


涼しい顔で言うユウ。


なんだか、ユウが少しずつ遠い存在になっていきそうで、怖くなってきた。


ユウならきっとモデルで成功して、有名な芸能人になって、忙しくなって私なんかとはもう会ってくれなくなっていくのかな。


芸能界なんて、私なんかよりキレイで可愛い子なんて、いっぱいいるし…。



「…どうした?」


急に黙った私を、のぞき込んでユウが聞いた。


「わっ!なに?何でもないよ」



でもユウが目指す夢に、私は応援したい。

頑張るユウを、応援したい。


でも、出来れば、私の傍にいてほしいな…。


今、ユウは私の事も、考えていてくれていたのだろうか…。

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