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*トキ*  作者: あーりん
3/3

目を覚ませば

「うーん・・・」

私は知らない家のベットで寝ていた。

シングルベット。

マクラのにおいは男の人のシャンプーのにおい。

そうだ、私は倒れて・・・

ガバッっと大げさに起きた私に先生は驚いた。

「綾咲、起きたのか」

ここは先生の部屋らしい。

小さな部屋は先生にぴったりのシンプルな男の部屋だった。

先生の隣にはマコちゃん。

「おねいちゃん、おはよう・・・!」

元気いっぱいのマコちゃんの顔。

手にはにんじん。


え・・・・?

霊って物をもてるの・・・?

透けているんじゃないの?

「綾咲、さっきお前と一緒にいつも居る明野とか来てたけど」

「チトセが・・・?先生!私って何日あのマンションから出てこなかったんですか?」

「1週間・・・。あのマンションは時間が過ぎるのが遅いんだ・・・」

私があのマンションに入ったのはたったの10分程度。

それが外だと1週間。

私はまた頭がクラッっとなってベットに倒れこんだ。

「明野とか心配してた・・・。このことあんまり人に話すなよ」

「はい・・・」

私はなんだか意味がわからなくなって、もう一度あのマンションに入ることを決意した。

「先生、私、もう一度あのマンションに入っていろいろ確かめてきます。」

「危ないからもうやめろ。お前兄弟に心配されてるんだぞ?ほら」

先生の手の中には1枚のボロボロになったチラシ。



【探しています 15歳の女の子で背は約157cmで小柄な女の子です。見つけた方は××−××××まで....................】



手書きのチラシ。そこには写真が張ってあった。

「コレ、私・・・・・」

1週間も何の連絡もしないでお姉ちゃんたちは誘拐されたかなんかかと思っていただろう・・・・

「すぐ・・・・戻ります」

「駄目だ、お前の言ったすぐでもあのマンションへ入れば倍の時間なんだぞ」

「だって私・・・・・」

マコちゃんのお母さんやお父さんをお骨にしてお墓の中に入れてあげたい。

あのままだとミイラになって・・・・

「綾咲・・・わかった。じゃあ、俺もついていく。いざとなったら2人で逃げればいいから・・・」

「ありがとう、先生」

先生は一瞬赤くなった。

「可愛い生徒のためだもんな・・・」

私と先生は大きなリュックを持って自殺マンションに向かった。

大きなリュックの中には食料が入っている。

「よし、行くか綾咲」

「うん・・・」

私たちはおそるおそる自殺マンションに入っていった。

「綾咲、言いたいことがある」

「なんですか、先生」

「マコのことなんだけど、アレは俺の本当の妹なんだ。」

「え・・・・?ってことは、死んでいたお母さんやお父さんも先生の・・・?」


私は急に先生の自己紹介の時を思い出した。

『妹萌え』あの妹はマコちゃんだったのか・・・

「俺も最初はこのマンションに住んでいたんだけど、外に出るたび体が重いのに気がついて、一人で違うところに住むことにしたんだ」

「そう・・・・だったんですか」

先生の大切な人は皆消えちゃっている・・・・

私だったら絶対に絶えられない。

私の家のお母さんとお父さんは早くに死んじゃったけど

お姉ちゃんやお兄ちゃんやルナちゃんがいるから私は今の生活でも十分楽しかった。

まあ、お母さんやお父さんが働いていない分生活はちょっと苦しいけど・・・

「ちょっと、何で泣いているの?」

先生の言葉でハッっと気がついた。

私は先生の話で涙が出ていた。

「やだ・・・・泣いちゃってました!気にしないで先生」

「どうした・・・?綾咲」

「気にしないで下さい。目にゴミが入っちゃって目が痛いだけです」

「そうか・・・ここらへん掃除してないからホコリだらけだもんな」

私と先生の足は204号室に向かっていた。

「父さんたちを外へ連れて行こうと思って・・・」

「私も手伝います!」

「他のこのマンションで餓死した人たちもこのマンションから出そう」

「おねーちゃん・・・私も手伝う〜・・・」

「マコちゃん!」

私と先生とマコちゃんはせっせと中にいる死んでいる人たちを外に出していた。

「綾咲、そろそろ飯食べないと死ぬから、食べようぜ」

「はい」

とは言っても私は全然お腹がすいていなかった。

たったさっき先生におかゆを作ってもらって食べたばっかりだから・・・

「食べないと死ぬぞ」

私は我慢して頑張って口の中にご飯をほおばった。

「よし、そろそろ仕上げしよう」

私と先生は1部屋ずつ入っていった。

そして玄関でお参り。

そうすればこのマンションは霊が上へ行って取り壊し工事ができるそう。

私と先生は全部の部屋を参ってようやく外に出ようとした。

私はふと廊下の窓の外をみる。

ホコリで汚い窓を私は着ていた服の袖で拭いた。

「先生・・・・見て、外」

雲の流れがとても速かった。

「・・・・・・・・・早く出よう」

先生は私の手を引き外に出た。

外にはチトセたちがいた。

やっぱり私と先生は疲れきって地べたに倒れこんだ。

「大丈夫?カヤ!先生!」

「駄目だ、返事しない・・・こんなに痩せて・・・・」

「そりゃあ、1ヶ月も自殺マンションに入っていたからな・・・・」

1ヶ月・・・・・・・・

「ご・・・・めん心配かけて・・・」

このまま私も先生も死ぬのだろうか・・・

私は途中で意識をなくした。



私は目を覚ました。

そこは病院だった。

隣のベットには本を読んでいる先生。

「おはよう、綾咲」

私は先生も私も生きていたことに私は感動して涙が出た。

「おいおい、泣くなって」

「だって、先生も私も生きていたことがすっごい嬉しくて・・・」

「明野たちが死んだ人たちをお骨にして墓の中入れてくれたって」

「本当!?じゃあ、これでもうあのマンションは取り壊し工事できるんだね!」

「あぁ・・・・」

あ、そうか

あのマンションが無くなったら先生はもうマコちゃんとは会えないってこと?

そうすると・・・先生の大切な人はいなくなるってこと・・・

私はまた涙がでてきた。

「おいおいおいおい、なんで泣く」

「だって・・・先生大切な人いなくなっちゃうじゃん・・・!」

「あー、そりゃあまあそうだな。でもこのキッカケで新しい彼女作って妹萌えも辞められるかな」

「そういえば、先生何歳?」

「先生に向かってタメ口か。俺、まだ26だけど」

「ふうん・・・・・・」

「付き合う年齢制限?」

「ち・・・違う!」

約10歳の歳の差。私は別に歳の差は気にしないけどー・・・・

って何考えているんだ・・・・・

私の好きな人・・・好きな人・・・・・・そう、ヒロ!

でもなんだか先生とヒロを比べると私はどうしてか先生の方が良いような気がしてきた。

生徒と先生の恋。

これも良いかもしれないけど、もしバレたりしたら先生は・・・・

「お前、俺のこと好きだろ?」

「え・・・・ななななななななんでですか!」

「あきらかに動揺してる。図星だな」

やっぱ私先生のこと・・・・・・

駄目よカヤ!先生と付き合ったりしたら先生教師辞めさせられちゃう・・・

「カヤ、俺より料理得意だったら付き合ってあげても良いけど?」

ちょ・・・・・ムカツクー!!!!

あきらかに俺様気分・・・・

しかも下の名前で呼び捨て・・・・・

「やめとく!」

「ちぇっ、つまんねー」


ガラッ


戸を大きく開ける音が室内に響いた。

「カヤあああああああ!!!!!」

「チトセえええええええええええええ!!!!」

私に思いっきり抱きついてきたチトセの顔は今にも泣きそうな顔だった。

「このまま目覚まさないで死んじゃうかと思ったよお!」

「心配かけてごめんね?でももう大丈夫だから」

「よかったー!」

チトセの後ろにはリカとヒロとイオリの姿。

「カヤ、大丈夫だったか!?」

「カヤぁ、先生になんにもされてないー!?」

ちょ、リカうける

「ん、私が先生より料理上手だったら付き合ってあげても良いよって言われた」

「ままままままままままままじ!!!!!」

「ちょっとォ、先生、新鮮なカヤに手ェつけないでもらえますぅう〜?」

「そうそう、カヤはヒロのものだよねェ〜?」

「ちょ、まじでてめえらハズいって!」

「うん、俺より料理上手だったら付き合ってあげても良いけどって言ったよ」

「多分カヤは先生の思っている以上に手料理上手だよねえ」

「そうそう、前オムライス作ってもらったあ」

そ・・・そんなに上手ってわけじゃあないけど

まあ、一応毎日夕ご飯作っているけど・・・

「へー、じゃあ付き合ってあげてもいいよ」

「というより先生。先生がカヤを好きなんじゃないんですか?」

「うん、好きだよ」

「教師が問題発言したああああああああああ!!」

ちょっと、騒ぎすぎ・・・・

先生本当に私のことを・・・・・・

「先生、カヤはやりません。俺んのです」

「おおおお、ヒロやるうううううううううう!!!!!」

「へー、かっこいいな、小坂。俺もそんなこと言ってやれば今頃結婚してたかもな」

「え?先生なんかあったの?」

「気にするな。もうすぐ6時だぞ、早く帰らんと親心配するぞ」

「えぇ〜、門限なんか決まってないしィ〜」

とか言いつつ皆はそそくさと帰っていった。

「先生・・・私のこと好きなの?」

「うん、好きだけど。」

「本当の本当?」

「・・・・・・うーん、生徒としてだけど」

「あっそう・・・」

先生の私を好きというのは生徒としての好きだったのか・・・・


しばらくして、私と先生は退院した。

学校にもちゃんと行っている。

「おはよー、チトセ!」

「おはよ!カヤ!」

「ビックニュース!ビックニュース!」

「ん?どうしたの?イオリ、リカ」

イオリとリカが私たちの前にどかッっと座った。

「前の担任が帰ってくるってよ!」

「え!まじ!」

え?前の担任が帰ってくるということは・・・・・・・

竜山・・・・先生は?

どうするんだろう


ガラッ


「えー、皆、席につけぇ〜」

教頭先生の後ろには前の担任

「前の先生が戻ってきたので、竜山先生は教師をやめることになりました」

「皆、久しぶり」

「えええええええええええ!イケメン先生はぁああああ!?」

た・・・・竜山先生が教師辞めた・・・・?

私はいても立ってもいられなくなって教室を飛び出た。

「カヤ!」

私が向かった先は自殺マンション。

「先生!先生ー!」

自殺マンションの前には沢山の荷物を持った先生の姿。

先生は私の声に気づき、振り向いた。

「綾咲!」

「先生!」

私は先生に突撃した。

先生は思わずひっくりかえった。

「いたたたたた。ごめん、先生、大丈夫!?」

「あ・・・あぁ。いきなり来て突撃とは・・・予想外」

「先生、その荷物どうしたの?」

「あぁ、俺の役目も終わったし、また旅に出ようと思ってな」

「なんで!?ずっとここらへんに居たらいいじゃない!マコちゃんだって・・あっ」

私はマコちゃんのことを思い出した。

「先生、マコちゃんどうしたの!?」

「上」

先生は上を指差した。

私は上を見る。

一筋の光が上に上っていくのが見えた。

「もしかして、あの光はマコちゃん!?」

「あぁ、マコも上行ったし、俺はもうここに長くとどまる理由もないし」

「駄目!私が・・・・私がココに居て欲しいの!」

「綾咲・・・でも、俺もう・・・・・・」

私の目には大粒の涙が今にも溢れ出しそうなくらいにたまっていた。

「また、会えるから」

「先生!私先生のこと好き!先生より料理上手だったら付き合ってくれる約束でしょう!?」

「ごめん」

私は涙をこらえたけど拭いても拭いても涙はたまっていくだけだった。

「そんなに泣くなよ・・・・」

「だ・・・・・・・だって・・・・・」

「自分で言った言葉に最後まで責任もてなくてごめんな、かならず、また、会えるから。」

そう言って先生は駅の方へ向かっていきました。



先生は私のことを生徒として好きとしか思っていなかったのかもしれないけど

私は知らない間に先生のやさしさを好きだったんだ















先生がこの学校を出て行って1年が過ぎた。

先生からはなんの連絡もない。


あれから私はヒロと付き合い


自殺マンションは無事怪我人が無く取り壊し工事は成功に終わった。



今、あの土地は空き地になっているけど





私にはそこにマコちゃんと先生の笑っている姿が見えるような気がした。

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