自殺マンション
今日から新学期。
私たちの学校では新学期に必ず席替えをしていた。
「ねぇ、カヤ!聞いた?先生のこと!」
朝いちに話し掛けてきたこの子は、私の親友のチトセ。
「え?なに?」
先生のこと・・・?
私にはさっぱりわからなかった。
「先生、あの自殺マンションで飛び降り自殺したらしいよ〜」
自殺マンションとは今では立ち入り禁止になっている場所。
取り壊し工事は何回も失敗。
必ず取り壊し工事には死者がでていた。
入ったら出られない。霊に殺されるなど噂では聞いていた。
「え、じゃあ先生は来ないの?」
「新しいイケメンの先生が来るらしいよぉ〜☆楽しみだねィ!」
新しい先生・・・。
新しい先生も気になるけど、先生が本当に自殺したのかも気になった。
ガラッ
思いっきりドアをあけた音が教室に響いた。
皆はいっせいに静かになった。
「注目〜!」
教頭先生の後ろには若いイケメンの先生がいた。
クラスの女子はキャァキャァ騒ぎ出す。
「君達の新しい担任の先生だ」
新しい先生は黒板にすらすらと自分の名前を書いていった。
「えーっと、事情があって今日からここのクラスの担任になりました、竜山秋司です。よろしく」
「じゃあ、竜山先生、後はよろしく頼みますぞ」
教頭先生が教室を出ても女子が騒いでるのはおさまらなかった。
「はいはぁい♪先生!質問ですッ!」
このクラスの女子リーダーと呼んでいる子が手をあげた。
「先生は、好きな人とかいるんですか〜?」
「うーん・・・・・ずっと前には付き合ってた人もいたかな」
あら、まだ独身・・・・・・・
「えっ、じゃあ、私の彼氏になってくださいッ☆」
皆がドッと笑い出す。
私も思わず笑ってしまった。
「ははっ。うーん・・・・べつにいいけど俺はやめといたほうがいいよ?」
「えっなんでですかァ?」
「妹萌え」
皆がさらに笑い出した。
「先生〜、もうひとつ質問で〜すッ!」
「ん?」
「先生の住んでいるところはどこですかァ〜?」
先生が困った顔をした。
皆いっせいにまた静かになった。
沈黙状態が続く・・・・・・
「小中川のあたりかな・・・・」
小中川で思い出すのは自殺マンション。
「え〜?じゃあ先生自殺マンション住んでるんスか〜?」
「ははは・・・・・」
休み時間になった。
「チトセ〜、リカ〜、カヤ〜ちょっと話したいことあるんだけど」
私たちを呼び出したのはヒロとイオリだった。
私たち5人はいつも一緒のメンバー。
カラオケ行くにも遊びに行くにもいつもこの5人だった。
私たちはヒロたちについていき、向かっていたのは屋上だった。
「なんかさー、新しい担任おかしくねえか?」
「あー!わかるわかる!どこに住んでいるかって聞いてなんか一瞬黙ったし!」
「あいつ自殺マンションに住んでるんじゃねえ?って俺思ったわけよ」
でも自殺マンションは立ち入り禁止になっている。
「探ってみねえ?あいつの謎!」
「面白そう!私賛成!」
皆賛成してるのに私だけ賛成とは言えなかった。
霊とか怖いし・・・・
自殺マンションに近づくのもなんだかブキミでしょうがない。
「なに〜?カヤちゅゎん怖いんでちゅかァ〜?」
チトセが私をからかう。
「こ・・・・怖くなんかないよ!なんか危険っぽくて・・・・」
本当は怖くて怖くてしかたがないんだけど・・・・ネ。
「大丈夫だって、カヤ。もしなんかあったら俺が守ってやるから!」
「・・・・・・・・・」
「おーおぉー。アツアツだねィ」
「違う!」
ヒロは私に一目ぼれしたらしくて、結構前に告白された。
でもそのとき私はヒロとか男の子には全然興味が無くって、
ヒロの告白は断ってしまった。
今思えばすごいもったいないことしたなぁ〜。って思う。
「よぉーしッ!じゃあ今日の夜の9時くらいに俺の家集合な!」
「おぉ〜!」
下校の時間
「なんかヒロすっごい燃えてたよねェ。カヤ、そろそろヒロの気持ち受け止めてやったら?」
「でもでもでも、告白してこないからべつにいいし」
「あんたそんなこと思ってたの!ヒロのこと好きなら自分からアタックしなよ!」
「そーそ!いつまでも友達気分でいたらヒロ他の子好きになって逃げちゃうよ!」
でも・・・・・それができないんだよォ
私すごい内気だから自分から告白とか絶対無理・・・・・。
もう、どうしたらいいんだろう
「じゃっ、今日の9時にヒロん家でね〜!またね!リカ、カヤ!」
「またねー、チトセ、カヤ!」
私の家は徒歩で約30分。
毎日歩いて登下校。
こうゆうとき自転車通学っていいなァって思う。
「よォ!カヤ!後ろ乗っていくか?」
ゲッ今一番会いたくない人No,1のヒロ!
「あ・・・・ありがとう・・・・・」
私はヒロの自転車の後ろにまたがった。
「お前、そんな乗り方してるとパンツ見える」
「!」
パッ・・・・・パンツ・・・・・・・・・・・・・・・
「やややややややっぱ乗らない!じゃあね!」
「ええええ!ごめんごめんごめんごめん!悪気無かったんだけど・・・・。早く乗れ早く早く!」
私は今度はまたがらないで横向きに座った。
「しっかりつかまってろー」
私を乗せた自転車はぶんぶんとばしていった。
私はドライアイだから目が乾いて目をつぶっていた。
「あ・・・・・・・・・」
「ん?ど・・・うしたの」
「今、担任いた・・・・・車に乗って・・・・助手席に首から下の無い女の子見えたんだけど・・・」
「や・・・・やめてよ♪そんなことやって怖がらせようとしてるんでしょ?」
私は寒気がして自転車を飛び降りた。
「ちょ、カヤ危ないって!」
「今日・・・私行かない・・・・・」
「え、なんで急に・・・怖くなったのか?」
私はヒロを無視して走った。
ヒロが見えなくなるまで走ろうとした。
だけどあっちは自転車。
当然追いかけてくれば私はつかまるだろう・・・
曲がり角になった。私は後ろを振り向いた。
「あれ・・・・・ヒロ・・・・・・?」
さっきまで居たヒロの姿が見えなかった。
帰ったのかな・・・・・・
私は曲がり角を曲がろうと前を見た。
「ヒィッ・・・・!!」
前には髪の毛が長い小さな女の子が居た。
そんなに驚くほど気味が悪くもないのに何故か悲鳴がでた。
「おねいちゃん・・・・友達になろォ・・・・」
「き・・・きゃあああ!!!!!!」
小さな女の子は私を手をとった。
「ねえ・・・おねいちゃん、いいよね?」
女の子の手はとても冷たかった。
ひんやりして・・・もう死んでいるかのよう。
逆らったらどんなことされるのかわからない。
私は素直に女の子の言うことを聞いた。
多分幽霊だとおもう、この子は・・・。
「うん、いいよ・・・」
私は頑張って怖さを吹っ飛ばしてこの一言をいった。
「わぁ、ありがとう・・・私、友達ってはじめて・・・」
だんだん私の体温と同じくらいの体温になってきた女の子はにっこり笑って見せた。
幽霊じゃなかったらいいのに・・・
「私の家に来る?おねいちゃんは特別ね」
「う・・ん」
私の足は微妙にガクガク震えていた。
家・・・この子の家はどこだろう・・・成仏・・・させないと
女の子についていって、ついた場所は・・・
「自殺マンション・・・・」
やっぱりこの子はとっくに死んでいるんだ・・・
「あなた・・・死んでいるんでしょう?」
私はたったさっきまでこの子と喋っていたせいか、普通に喋ることができた。
でも体は嘘をつかない。私の膝はガクガク震えている。
「おねいちゃんとは友達になれると思っていた・・・。そう、私はとっくの昔に死んでいるの。10年前にここでね。だけどおにーさんが私を助けてくれた・・・私に夢をくれたの!友達が欲しいっていったらね・・・」
おにーさん・・・?
この子が言うおにーさんって誰?
この子は多分成仏しそこねたんだ・・・。
「おッ?綾咲、こんなところでなにしているんだ?」
「おにーさん!」
振り向いた先には竜山先生の姿が。
「お・・・お前もしかしてマコが見えるのか・・・?」
「マコって誰ですか」
「私の名前。おにーさんにつけてもらったの」
「コイツ、死んだせいで名前もなにもわからなくなったから俺がつけてやったんだ」
「先生・・・あんた何者」
「・・・・・・」
先生は黙った。
マコちゃんを助けてあげたのが先生とか・・・
先生がココらへんの近くに住んでいることとか
先生の謎が沢山。
「ま・・・まぁ、綾咲はもうじき暗くなってくるから帰りな」
「いやだ。先生が何者か教えてくれるまで帰らない!」
「綾咲・・・俺を困らせないでくれよ・・・」
「・・・・だったら正直に話してよ」
私は心の中では先生にこんな言葉言っていいのかってビクビクしながら話していた。
「ついてくればわかる、ついてこい」
先生とマコちゃんが向かったところは自殺マンションの入り口。
もうずっと掃除をしていないようにホコリだらけだった。
「・・・・204号室、見てきてごらん」
私は先生に進められてマコちゃんと一緒に204号室に向かった。
「ここら辺だと思うんだけどなぁ」
あった、204号室
表札があった。
【竜山宗次郎・有紀子・真紀子】
三人の名前。
最後の真紀子に気がついた。
「もしかして・・・マコちゃん?」
「そう、真紀子は私の本当の名前みたい」
私はそっとドアをあけようとした。
「あけてもいーよ、おねいちゃん、友達だから・・・・だけど、覚悟はしてね」
私はおそるおそるドアを開く。
中にはマコちゃんのお母さんらしき人が・・・・
もう軽くミイラ化していた。
「ヒイッ!」
「もっとおくの部屋をみてごらん・・・」
暗い部屋の中を私はおそるおそる進んでいく。
足になんか当たった。
下を見てみると人の顔だった。
「キャアア!」
「これ、私のお父さん・・・飢え死にね」
こんな残酷な光景を平気に見ているマコちゃんが不思議だった。
「最後に・・・そこの子供部屋を見て」
子供部屋には死んだマコちゃんの姿が・・・
「私たちをお骨にしてお墓の中に埋めて欲しいの・・・おねいちゃん・・・」
悲しそうなマコちゃんの顔。
私はどうしても断れなくて黙ったままでいた。
「そろそろ出ないとおねいちゃんの体がもたないよ、一緒にでよう」
え?私の体がもたない・・・?
私にはさっぱり意味がわからなかった。
私とマコちゃんはもと来た道を戻っていった。
自殺マンションの前には先生の姿。
「ずいぶん遅かったね・・・やっぱりトキを操るところだ・・・」
私は先生の言った言葉の意味がわからなかった。
自殺マンションから1歩出た瞬間私は力がフッっと抜けたみたいに倒れこんだ。
「綾咲、お前、外の時間で言うと1週間もこのマンションに入っていたんだぞ・・・」
「え・・・・・?」
息絶えそうな自分の声。
自分の手を見るとカサカサで死んでいるかのような自分の手
「とりあえず、俺の部屋に来い・・・親には後で電話しとく」
私は意味がわからないまま眠りについてしまった。




